自分の”手柄”にしたい社長の心理~蛇足の言葉が生みだすトップの無能"観"~

自分がとってきた仕事を上司に報告したら、全体会議で上司が「くだんの大型案件の受注に成功しました!」と、まるで自分の手柄のように発表し、上役から褒められている姿に歯がゆい思いをしたことがある人は一定数いるのではないかと思います。

私も漏れなく、なんなら毎日といっていいくらい同じ経験をしています。

そして、その相手は社長です。

私の仕事はバックオフィスです。

つまり、経理や法務、システム管理といった仕事になります。

日々の会計処理から始まって法改正への対応、社内サーバのメンテナンスやインフラなどのハードの管理まで、カバーする領域は多岐にわたります。

そんななかで、例えば私が社員の営業成績を評価するために新しい分析指標を作ったとします。

これを見た社長は「ふんふん、これいいね。使おう」と言い出し、全体会議のなかで、

「今回からこういう資料を作ることにしました。みなさんの営業成績を評価する際にこれまで問題だったポイントをカバーできる資料です。みなさんの今後の参考になるよう、私が〇〇さんに作らせました

と、自分が私に指示して作らせたことになっています。


経営トップがなぜこれをやってはいけないのか、わかるでしょうか?

社員がやったことをさも自分がやったことのように誇示するのは、社長自身に「自分には専門能力がない」ということを暴露していることに他ならないからです。

タイトルにあえて無能”観”と書きました。

社長自身が「自分が無能だ」と感じるということではありません。

客観的に見て「この人、無能だな」と観察されてしまう。ということです。


もちろん、社長だからってスーパーマンになれというわけではありません。

人間ですから、できないことだってあって当然です。

そういう弱さをもった人間性をあえて”魅せる”ことが、トップの器量ではないのかと思うのです。


多くの社長は「自分がトップだからなめられてはいけない!」と気を張っているかもしれません。しかし、なめられないように「わかったフリ」を続けたり「自分がやった」感を出し続けていると、優秀な社員はすぐに

「はいはい、なんでもわかってんでしょ?じゃ、もう辞めます。」

といなくなってしまいます。結果、どうでもいい社員しか残りません。

「社長はこういうところが弱いから、うちらがしっかりやらないと。」

と社員から思われるほうが、社長だって心強いし、得でしょう?

この”得”が”徳”なのです。


これを読んだ社長さん、あなたに”徳”はありますか?

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