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流星に祈る感想文供養。

今回私は、「流星に祈る」という本を読みました。これはゲームを始め様々な展開をしているアイドリッシュセブンというコンテンツの、オリジナルストーリーを書き下ろしたものです。アイドリッシュセブンというコンテンツのメインストーリーはとにかく面白いです。
また、多くのユーザーはメンタル育成ゲーム、という言葉を用いてアイドリッシュセブンを語ります。アイドルゲームといえないほど重いストーリーをしているからです。この書き下ろしもなかなか胃が痛む内容でした。「流星に祈る」は4つのお話から構成されています。今回はその中の一つ、「流星に祈る」について感想を書いていきます。


「流星に祈る」は七瀬陸と和泉一織の関係を少し円滑にする働きをしているお話だと思いました。和泉一織は七瀬陸に惚れている人物で、アイドルです。ですが、アイドルでありながらその世話焼きな気質はIDOLiSH7のマネージャーであると言えるほど、マネージャー業も行える人物です。

アイドリッシュセブンの歴史は長く、8月20日で8周年となります。和泉一織という人物は、7年かけてようやく七瀬陸の隣に、アイドルとして立てるようになりました。
その理由は「流星に祈る」の本文に書かれています。「ステージ上の陸の気持ちは分からない。だけど、流れ星を期待して待つ気持ちは一織にも分かる。」という文です。この男、アイドルでありながらステージ上に立っているアイドルの気持ちがわからないと言っているのです。驚きです。

でもこれが七瀬陸というアイドルに惚れて、マネージャー気質を持ったアイドルだと提示されれば、わかりましたと受け入れるのは容易いことです。しかし和泉一織という人間はクールキャラであり、決して熱血タイプではありません。「流星に祈る」の最初の方でも、淡白な性格故に、七瀬陸に自分の気持ちをちゃんと伝えられていません。感情をあらわにすることができないのです。そして七瀬陸と和泉一織はすれ違います。


そうして物語は和泉一織の葛藤へとスポットライトが当てられます。和泉一織は兄に「余計なことを言うな」と言われてしまいます。この言葉で和泉一織は悩みます。自分が七瀬陸の負担になっているのではないか、と。そして「自分が望みすぎていたせいではないか」と言います。この望みすぎ、は七瀬陸に惚れているために期待しすぎているのではないか?と解釈しています。

ここはアイドリッシュセブンらしいさが全面に出ている部分だと思っています。自分の期待で七瀬陸を苦しめていると考える表現は、アイドルコンテンツではなかなか見受けられません。ファンの感情がアイドルを苦しめると考えるのはアイドリッシュセブンならではの表現です。そしてここの部分で悩んでいるからメインストーリーで和泉一織は七瀬陸に対して望みすぎず、七瀬陸へのプレッシャーの分散をしっかり考えるようになったのだと思います。


少し時を戻します。七瀬陸への葛藤についての場面です。このコンテンツ、苦しんでいない人など、どこにもいません。七瀬陸には生き別れの兄、九条天がいます。この二人の関係は実に複雑ですが陸目線で説明します。七瀬陸は九条天に期待されていないから捨てられたと思っており、そのために自身に失望しています。そして今、九条天はトップアイドルへと上り詰めています。その事実がさらに七瀬陸を傷つけます。七瀬陸は自分に期待してくれる人を探しており、その人が居場所になることを望んでいるのです。


物語は収束へと向かいます。色々あって、七瀬陸と和泉一織は体育館倉庫に閉じ込められます。定番です。七瀬陸は実は喘息を持っています。当然埃っぽい場所。発作が起きます。吸引機で対処しますが七瀬陸はぐったりしたままです。

ここで和泉一織は決心します。「あなたの歌を聞かせたいんです。聞かせてください。流れ星、降らせるんでしょう」と言います。この言葉を言った瞬間、七瀬陸にとって和泉一織が自分に期待してくれる人間となり、兄に切り捨てられるかもしれないという恐怖から解放してくれた人へと変化します。

またこうやって受け入れてくれたことで、和泉一織も自信がつきます。七瀬陸に期待していいのだと。この人は期待してなんぼであると。和泉一織にとって七瀬陸の不安事はそこまで重要ではないのだろう、と勝手に思っています。でもだからこそ純粋に七瀬陸の歌声に惚れて、もっと聴くことを願える。そして七瀬陸も同様に一織が自分に対してどう思っているかはさほど関係ない。でも彼が自分に望みを伝えてくれることが嬉しいから歌う。そうやって彼らの関係性はできあがっているのだと考えます。



お互いがお互いの求めているものを叶えてくれる存在。これが彼らの関係であり同時にファンとアイドルの関係だといえます。どちらかが裏切ったら0になってしまう関係に私は「萌え」ました。




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