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【レース回顧Vol.38】第65回大阪杯

結局昼過ぎからまとまった量の雨が降ってきて、レース直前で「重」の発表。この影響は大きく、コントレイル、グランアレグリア、サリオスの三強はどれも連対することができなかった。コントレイルが最後に意地を見せてグランアレグリアを交わしたが、3着が精一杯。モズベッロにやすやすと交わされた辺り、コントレイルも「その時その条件に最も合致」していなかったと言わざるを得ない。

このレースは勝ったレイパパレが興味深い挙動をしていたので、パトロールビデオを交えながら細かく振り返っていくことにする。

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レイパパレがゲートをこするように出て出負け。内でサリオスとアーデントリーが好スタート。コントレイル、グランアレグリアは普通のスタート。

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今回の予想にあたってカギになったのはコントレイルとレイパパレの並びだったのかもしれない。レイパパレは出負けをリカバーして、コントレイルの前を横切る形で内に切り込んでいった。更に外からハッピーグリンとグランアレグリアも詰めてきて、コントレイルはあっという間に前が壁になってしまった。

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レイパパレはハッピーグリンを牽制しながら、最内でポジションを確立しつつあったサリオスの前に立つべく内に寄せていった。グランアレグリアもフリーの位置取りから位置を取りに行った。

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1コーナー直前で最内を取り切り、サリオスの自由を束縛。全く無駄がない。コントレイルは完全に位置を取り損ね、中団に取り残されてしまった。

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かくしてレイパパレ先頭で1コーナーをカーブ。水煙と跳ね返った土が舞い上がる。後ろから追い上げるのは相当厳しそう。これはコントレイル飛んだか?マズいなぁ…。

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レイパパレは緩めず快調に飛ばし、隊列は縦長。サリオスは内で3番手、グランアレグリアは5番手の外。コントレイルは包まれずに済んだものの、先頭まで10馬身以上も離されたところを走っていた。

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コントレイルは時折脚を取られながらの追走。かなり走りにくそう。未だに中団後方寄り、この時点ではぶっ飛びも覚悟した。

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しかし3コーナー過ぎで促すとぐんぐん上がっていき、あっという間にグランアレグリアの側までやってきた。そこでピタッと止まってガチ勝負を申し込み。おおー!これは名勝負の予感!

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4コーナー出口付近。レイパパレ(黄)が最内を立ち回り、サリオスもインベタで2番手キープ。その外からグランアレグリアとコントレイル(緑)が併せ馬で襲い掛かる。その直後にはモズベッロ(青)の姿が確認できる。

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今回のハイライトはもう一つ、最後の直線でレイパパレが採ったコース取り。4コーナーでは確かに最内にいたのに、直線に向いてから一目散に外に振り出していった。逃げ馬でラチを捨てるとかアリかよ!サリオスをフリーにしてでも、馬場の良いところを選んだということに他ならない。

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川田騎手はこれでもかという位に右鞭を入れ、レイパパレをどんどん外へ誘導。4コーナーで最内にいた逃げ馬が直線でこんなに外を走るとか前代未聞ではないだろうか。コントレイルも馬場の良い外に出した分、グランアレグリアに先着したという見方もできる。モズベッロは更に外を通っていた。

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ゴールのシーン。これだけを見るとレイパパレが大外から突き抜けたように見えるが、実は影を踏まさぬ逃走劇。序盤の先行争いと最後の直線の大外狙い。レイパパレが勝つべくして勝ったレースだった。馬券は外したがいいものを見せてもらった。川田騎手、お見事でした。

展開面を整理すると、典型的な逃げ馬不在、先行馬の数も少なくスローは免れない状況。前走仕掛けたハッピーグリンが行かなければレイパパレが先手を打ちそう。サリオスが内から2番手。馬場悪化が見込まれるため、なるべく前にいたほうが良さそう。

ビンゴ。前にいたほうがいい、と言いながらレイパパレは4番手評価に留まった。サリオスの内ピタ先行のほうに重きを置いたが、川田騎手のしたたかさにやられてしまった。コントレイルは序盤で後ろに置かれたのが最後まで尾を引いた。ただ1,000M通過は59秒8と馬場を考えればハイペース。ラスト1ハロンは13秒1を要し、レイパパレも最後は脚が上がっていた。

1着△レイパパレは出負けをすかさずリカバーし、コントレイルを後方に閉じ込めた上で最内を取り切ってハナ、最後の直線で大外に持ち出す「禁じ手」で見事に逃げ切った。422kgの小柄な馬体でレースを引っ張って押し切るとは思いもよらなかった。6戦全勝でニューヒロイン誕生。牝馬の時代はどこまで続くのか。

2着-モズベッロは今回も行きっぷりが悪く後方からの競馬になりながら、4コーナーの追い上げはスムーズ。追い鞭を入れながらコントレイルの背後を取って直線へ。手応えは正直一杯一杯だったが、バテずに頑張ってコントレイルらに先着。重馬場の宝塚記念3着の脚力は健在だった。

3着◎コントレイルは序盤で位置を取り損ねて後方からの競馬になり、3コーナーで余計な脚を使わされる羽目に。ゴール前でグランアレグリアを捻じ伏せたが、レイパパレは遥か前にいて完敗。この馬場であの位置から競馬になったのは褒めたい。やはり良馬場でのパフォーマンスを見たかった。

4着▲グランアレグリアは外から位置を主張してきて5番手。今回の馬場では少なくともこの位置にいないと厳しかった。綺麗に折り合って、4コーナーも持ったまま。コントレイルとガチの追い比べで一旦は前に出たが、ゴール手前で捕まってしまった。スピードが全く活かせない馬場で、地力だけで4着に持ってきた。1着は無いとみたのは正解。馬券対象外も想定内。

5着○サリオスは内枠から好スタートを切りながら1コーナーでレイパパレに蓋をされて3番手。4コーナーで追っ付け始め、直線でガラ空きの内を通ってスパートしたが伸び悩んだ。バテたというよりも馬場が重過ぎて進んで行かなかった感じ。通ったコースの差は少なからずあると思う。

7着☆アーデントリーはサリオスと共に好スタートから前を窺うもサリオスに先に内に入られ、その後も外から寄せられて中団の内。そのまま内でジッとして直線内突きを図るも全く伸びなかった。この馬なりには頑張ったが、やはり相手が強過ぎた。

9着☆アドマイヤビルゴは大外から出たなりの位置で中団の外。4コーナーは馬群の中で泥を被りながらの追い上げで既に手応えが怪しく、直線は外に進路を見出すも一杯になって終了。日経新春杯以上に重たい馬場ではどうしようもない。雨の降り出しは遅いと思って押さえたが見当違いだった。

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