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初秋だけど汗ばむ電車内で思うこと

外回りの山手線に乗り込む昼下がり…前にいた中年男のシャツから
生乾きのような不快な臭いが漂ってきた

車内の中程まで移動して
つり革に指をかけると
スマホの画面から時折目をあげてチラッと男の様子を伺ってみる

脂ぎった額の汗を拭うハンカチはシワクチャ…いつ洗ったのだろう

なんだか背中がむず痒くなって思わず目を背けた

肩を二、三度前後に回し
深呼吸して気持ちを切り替える

これから会う「オトコ」の姿を思い浮かべながらスマホのメールに目を落とす

ガッシリした体躯の50代
精悍な容姿はかつてのラガーマンを想像させる

薄手のジャケットは
クールビズ推奨の社内でも
風格のある上質の素材

平日の午後に時間が取れたから
ゆったりとした時間が取れると言うメールをもらったのは
一昨日のこと

この既婚男性と会うのは
今日で5回目…

深い関係になって3度目の逢瀬

妻とはもう何年も
そんな関係がない、と言っていたっけ

私のことは「話題も感性も肉体も、全てとても相性のいい相手」と評価しているらしい

ま、50過ぎた女に
可愛いとか美しいとかいう美辞麗句を使うのは白々しいから
当たり障りのない褒め言葉は
素直に嬉しい

ふと顔を上げると
さっきの中年男はまだ汗を拭いている

その左手薬指には指輪があった

私が会う元ラガーマンの薬指にもいぶし銀のような指輪が光っている

そして

彼のハンカチには
いつも丁寧にアイロンがかかっていた


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