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「察してもらう」のを辞めると楽になる

 どうしてわかってくれないの! と、思ってしまうことがある。
 心や体がしんどい時に小粋なジョークをかまされたりなんかした日には本当にイライラするし、余計に具合が悪くなる。
 私も大人なんだから、と自分に言い聞かせてその時は我慢するものの、溜まりに溜まった鬱憤はある日一気に爆発する。
 泣きながらキレ散らかすけれど、相手はキョトン顔だ。何をそんなに怒っているのか、と、感情剥き出しの私に目を瞬かせ、首を傾げる。
 そんな態度に私は更に怒りを募らせ、わめく。それはもう泣きわめく。


 これがいわゆる「無駄な時間」である。


 まず、これが無駄だと気づくまでにめちゃくちゃ時間がかかった。これまでに何度も唐突な爆発を繰り返してきた。
 しかし一度気がつけば鬱憤を貯め続け怒り心頭でまくし立てるまでのこの時間、何も進展がないのは明白だ。むしろ喧嘩するエネルギーを無為に消費した上で、お互いが嫌な気持ちになるだけである。
 損得だけで物事を考える人は苦手なのだけれど、さすがにこれを繰り返すのはあまりに大損。人生限りあるのだから、できるだけポジティブな時間の使い方をしていきたい。

 ……でも、どうしてもイライラするし、どうしても溜め込んでしまう。気の置けない関係であればあるほど悶々とする。

 どうにかしなければと考えていたところ、名も知らぬ綺麗なお姉さんのYouTube shortsに出会った。
 彼女については本当に何も知らないし、正直動画を見たのもかなり前なので容貌すら思い出せない。この記事を書くにあたって何度も探したが、元動画にたどり着くことは出来なかった。
 故に紹介できなくて申し訳ないのだが、私の長年の悩みに一発で答えをくれた彼女の意見を要約するとこうだった。


 相手がたとえ家族であれ、親友であれ、恋人であれ、自分とは考え方も生き方も違う別の人間なのだから、何も言わずに自分のことをわかってもらおうだなんて思ってはいけない。


 真理だと思った。
 確かに、私だって相手が何も言わなければ目に見えない頭痛や目眩のような不調に気づいてあげることは出来ないし、視界に入らないところにゴミが落ちていたって拾いに行けるわけもない。
 そんな中で、「私は頭が痛くてしんどいのにどうしてゴミのひとつも拾ってくれないの?!」なんて、いきなり相手にブチ切れられたらどう思うだろう。理不尽には感じないだろうか。
 そういうことを私は他者に強いていたのだと気づいては申し訳ない気持ちになったし、「なんだ、口に出せばいいのか」と、拍子抜けもした。

 以来、私は夫を始めとする親しい仲の相手に対して、調子が悪い時には悪い、なにかして欲しい時にはして欲しい、と口に出すようにしている。もちろん、一方的に要求するのではなく相手にも要望を言葉にしてもらって、だ。
 溜め込まないようにしたがために、我儘な人間になっては本末転倒である。先に触れた損得で言えば私は得をするかもしれないが、大事な人が損を被ってしまうので。

 彼女が動画を消してしまったのか、私がただあの動画に辿り着けないだけなのかは分からないけれど、簡単なことに気づけないでいた私を救ってくれたあのYouTuberさんには本当に感謝している。
 これまで無駄にしてきた分を取り返せるくらい、今そばに居てくれる人たちとはきちんとコミュニケーションを取っていきたい。

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