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【文字起こし】そこあに増刊号Vol.46「終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ」特集(2019年6月20日配信)

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「終末なにしてますか?異伝リーリァ・アスプレイ』

そこあに増刊号Vol.46【2019年6月20日配信】

■ゲスト:著者 枯野瑛さん・編集 木田さん
■出演:那瀬ひとみ・小宮亜紀

昨年6月『終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ』刊行のタイミングに配信しました、そこあに増刊号「終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ」発売記念特集 vol.46の文字起こしです。
新刊『終末なにしてますか?異伝 リーリァ・アスプレイ#02』のおともに、そして作品考察にぜひお役立てください!
これ以外も過去の配信分の文字起こしプロジェクトが進行中です。応援よろしくお願いいたします。

【異伝シリーズの趣旨や概要について】

那瀬:まずはこの『異伝 リーリァ・アスプレイ』について。現在シリーズとしましては、『終末なにしてますか?もう一度だけ会えますか?』通称すかもかシリーズが刊行しています。こちらの前作、というか、シリーズの発端ですね、『終末なにしてますか?忙しいですか?救ってもらっていいですか?』シリーズが全5巻で発売になっております。こちらに出てきたキャラクター“リーリァ・アスプレイ”にスポットを当てた異伝、という言い方でよろしいですか?

枯野:そうですね。『すかもか』後半シリーズのほうには、今のところは繋がっていないかのようなかたちで展開しています。

那瀬:外伝ともまた違う、“異伝”っていう言い方にしたのはなんでなのかな? というところからちょっと聞いてみたいんですけど。

枯野:まぁ、独立した作品ですよ、と。もしこれが続けられたならば独立したシリーズですよ、という扱いにしたい、というのがまずあります。外伝としてしまうと、どうしてもおまけ的な立ち位置になってしまい、本編を全部読んでいるのが当然・前提というかたちになってしまうかなと。まぁこのあたりはほとんどイメージの問題なんですけれども、異伝として「本編と対等の立場のもう一つの物語だよ」という立ち位置を持ってもらいました。

那瀬:個人的にはシリーズがここまで続いてきて、私はですけど、このシリーズの主役は浮遊大陸群(レグル・エレ)、それこそ“舞台”という言い方をよくしますけど、浮遊大陸群の物語なんだなっていう消化の仕方をしていたんですよ。なのでこんな、ちょっとまた別の世界も描けるなんて、このシリーズの拡大性がすごいなっていうふうに思っちゃいまして。

枯野:この舞台ならではの物語、ということを意識して浮遊大陸群の物語は紡がれているので、まぁそういう意味でもそこに従属しないもう一本の物語、かつての地上の物語という意味で異伝になった、と。先ほどの話と繋がります。

那瀬:てことは数字は書いていないけれど、異伝を続ける可能性が……

枯野:こうやってほのめかしておいて、そのうち既成事実にしたいなぐらいのなにかです。

那瀬:なるほど(笑)。

枯野:応援よろしくお願いします。

那瀬:まぁリーリァ・アスプレイのところの名前が変わるのか、それとも『異伝リーリァ・アスプレイ2』になるのかとかまだまだわからないですが。

枯野:どちらでもいけるようにしています。

那瀬:わぁ、すごい、ずるい(笑)。


【もはや恒例?資料集を求める声!】

那瀬:別のものとはいえ、たとえばモウルネンの話題が出てきたりであったり。

枯野:はい、しれっと出ました。

那瀬:ねぇ! そうなんですよ。しれっと出すぎて、読み返したときに「どこだったっけ?」ってすごい探してしまって。簡単に言うと、モウルネンの適合条件が……!

枯野:しかも2回出てるんですよ。

那瀬:明かされましたね。極位古聖剣って、五振りあるだけですよね?

枯野:はい。

那瀬:まだ名前が出てないのもあります? 名前だけは出てるんでしたっけ?

枯野:名前……今回そろったかな。

那瀬:なるほど。わたしもけっこう拾いきれないところが出てきてしまうんですよね……。『すかもか』のあとがきのほうに聖剣シリーズみたいなのを書かれておりましたけれども、そこにもまだ網羅されてない、名前だけ出てる剣もいくつか作品の中にあったりもするので。

枯野:ありますね。

那瀬:ホントに、誰かデータ集を作ってくれって思っちゃいますね!

枯野:いや~欲しいですね。

那瀬:そういう本が出ればいいなって話を、前回もしていたんじゃないかなって気も……(笑)。誰か公式の方……それは望みとして読者としてもあるし作者としてもあるという。今回は担当編集の木田さんも隣に居ていただいておりますので、チラチラとそんな話もちょっとしつつ(笑)。

枯野:チラチラと!


【異伝の主人公候補はリーリァのほかにも2人いた?】

那瀬:どうですか? 異伝を書いてみた感想というわけではないですけれども、書き終えてどんな思うところがあるか、なぜこの話を書こうかなと思ったのかもちょっと聞いてみてもいいですか?

枯野:そうですね。まずなぜ書こうとしたのかの話なんですけれども、理由たくさんあります。全部話そうとすると絶対に朝になる、ということで一番単純に説明しやすい所から言ってしまうと、『すかもか』がだいぶ続いてしまった、と。続いてしまったことっていうか、続いたこと自体はすごく嬉しいことなんです、もちろん。なんですが、ここから読み始めるというのにちょっとハードルが高くなってしまった。そして『すかすか』を改めて読み始めてくださった方々がいる中で、「さて読み終わった、次に何を読もう?」と思ったときに、目の前に既に7冊、これからまだ続くという大ボリュームの作品がそびえていると、これで読み始められる人ってのは、当然けっこういらっしゃって嬉しい限りなんですが、足が止まってしまう人もいるだろうと。もっと軽く『すかすか』を読み終わったあとの余韻を受け止められる受け皿があった方がいいんじゃないか、選択肢は複数あった方がいいんじゃないか、という理由で、なにか一つすかすかから繋がるもうひとつの物語が欲しいなと思ったのがありました。このアイデアから、主人公を3人、物語を3つ作りまして。その中からリーリァが選ばれたんですけれども。あとの候補はナイグラートさんの若いころ、及び全く関係のない新キャラのおっさん。この3つの物語を担当の木田さんに送って、即OKが戻ってきたのがリーリァでした。

那瀬:うーん、ナイグラートはともかくおっさんは…(笑)。「おっさん!」と、そこだけ聞いちゃうと思ってしまうんですが。

枯野:いやぁ、この話もけっこう気合入ってたんですけどねぇ~。

那瀬:枯野さんが書くおっさんキャラって、グリックなりけっこう味のあるキャラクターなのですごい興味はあるんですけれど、木田さんの選択は正しいなっという感じもしますね(笑)。


【大人たちが魅力的。新キャラクターについて】

那瀬:最初の『すかすか』1巻でのヴィレムが、たしか16歳でしたっけ? 『すかすか』の一番最初にアルマリアとしゃべっていたとき……だから今回のリーリァのお話って、その2年前という言い方でいいのかな、と。

枯野:そうですね。

那瀬:と思っていたので、このタイミングも、なぜ(異伝の時系列を)このタイミングにしたんだろうなっていうふうにはちょっと思って。13歳の主人公ってのは、どうなんですかね、最近のライトノベル的にはメジャーな年齢層なんですかね? 入りとしては、けっこう低年齢な気もしちゃったから。

枯野:第二の人生で13歳ぐらいはけっこうメジャーなんですけれども、そのまんま13歳はそこそこ少ないかなとは思います。

那瀬:だから、今回は周りの大人キャラクターがすごく魅力的だなというのも思っていて。

枯野:せっかく子どもなので、子ども扱いしてくれる人は絶対に必要だな、ってことでシリルさんに出場ねがいました。

那瀬:前巻(『すかもか』7巻)のパニバルにも、素敵な大人が周りについてるよねみたいなお話にも通じるなとすごく思っていて。いや、シリル本当いいキャラクターだし、やっぱりリーリァが、枯野先生もおっしゃってましたけど、まっすぐ育つためにはいい大人が周りにいるっていうのを体現するような。

枯野:そうですね、まっすぐ育ちませんでしたけど。ひねくれましたけど。

那瀬:最初に扉絵から見るタイプなので、なんだこの性格の悪そうなお姉さんは! って思って……からの、だったので大変熱いキャラクターですね。おいしい、ズルいやつ、という。

枯野:フェオドールのときにも一度やりましたけれども、悪い顔ができるいい人、大好きなんです。

那瀬:なるほど。趣味が現れてるし、すごくueさんの描く表情がまた素敵だなって。

枯野:素敵なんですよ。

那瀬:思いましたね。シリルともう一人、大人というか、どちらかというとライバルみたいな。

枯野:そうですね。

那瀬:アデライード。この子もまた美少女が! 描かれていますよね!

枯野:そうですね。まっとうに『すかすか』『すかもか』シリーズ通して一切出てこなかった16~18歳の年頃のいわゆるJK世代の女の子がようやく登場したかと思ったらここです。

那瀬:アデライードって、こうケンケン言ってくるいいメカニックで。「まったくしょうがないんだから」って言いながら、良い設備を整えてくれるメカニックの立場というか。

枯野:そうですね

那瀬:彼女もすごいいいキャラしてましたけれど、すごいもったいな~い! というか!

枯野:はい。

那瀬:だってこの子、聖剣の整備しにもっと出てきてよ! ってすごく思いました。アデライードはどういうふうに生まれたんですか?

枯野:だいぶ昔からこの立ち位置に一人居るだろう、ということは決まっていて。必要な要素があまりにてんこ盛りになって生まれかけてたキャラクターではあったんです。で、今回話をするにあたって、リーリァの周りにいる人物として、大人を置いた。同年代の子供も置いた。先輩に当たるくらいの年齢の人物がいないなぁ、と。勇者パーティの出会いに関してはもうちょっと先のことになるという時系列が定まった後だったので、そうなると、ここにそもそも必要だったキャラクターをポンと置こう。ということで気が付いたらそこに居たタイプのキャラクターがアデライードになります。なので、けっこう見えないところで『すかすか』本編とリンクが張られてるキャラクターではあります。

那瀬:この裏にアデライードがいたんじゃないか、っていうような推測ができるという。

枯野:まぁ、エピローグでちょろっと出てきている、ヴィレムの帝都の工房から見るとデタラメだっていう調整技術なんかはこのアデライードが後ろでなんやかんややってたんだ、というようなのがチラチラと。

那瀬:なんかいいですよね。ヴィレムにとってもちょっと姉御ぐらいの年齢感かなっと思っているし、キャラクター的にもすごくいいキャラクター。可愛いし、ちょっとこう天才っていうところでリーリァの似た者としてもポジションが置かれているのかなっていうのが。共感してもらえるキャラクターにもなりうる、友達にもなりうる素敵なキャラクターだなっと思うので。

枯野:そうですね。

那瀬:是非また出てきてほしいなと思う一人でした。

枯野:いやぁ、出せたらいいですね。

那瀬:あとはちょっと個人的には、ヨーズアというキャラクターもとっても気になりました。こういう言い方はなんですが、世界の滅びに関わらない……関わらないというとあれですけれど、ちょっと私的なところで哀愁に満ちているおじさんだなぁっていうふうにすごく思って。なんか、“愛憎”という言葉が合う人だなぁというか。

枯野:そうですねぇ。大人のあまりに歴史と事情を抱えすぎて、様々な立場を使い分けるうちに自分自身でも迷走を始めてしまった。気づいても止まれない、みたいな所が凝縮されてしまったので、だいぶ複雑な立場になってしまったと思います。

那瀬:ヨーズアって、真界再想聖歌隊(トゥルーワールド)とどういう関わりがあったのかなというのがすごく……あまり明文化はされていないなっていうところで気になったりしたんですけれど。

枯野:そうですね。幹部クラスです。

那瀬:お、それは教えていただけちゃうんですね。

枯野:隠すこともないなっていうことで。とても偉い立場で権力・財力・その他もろもろ……まぁ財力に関しては自前のものでなんとでもしてたみたいですけれども。破滅に関してもかなり深いところまで知ることが出来た。だから、強行手段に走ってしまった。まぁ、そのくらいの立ち位置です。

那瀬:そんな人が、けっこう理由としては「アデライードを愛したかったんだよ」みたいなことを言うというのが、すごい……なんでしょうね、世界の背景には、やっぱり人間の感情があるんだなってすごく感じてしまって切なかった……これはネタバレになりますかね、さすがに?(笑)

枯野:どうなんでしょう、この辺は読んだあとで。

那瀬 まあ、まだ読まないとわからないから、そーですよね! 今回はそんなにひどくなかったなって思いました! 違う?

枯野 あぁぁ、はい。いつもひどくないですよ?


【読者・リスナーからの質問コーナー】

那瀬:毎回『すかすか』シリーズの増刊号では、枯野先生にリスナーさんからの質問を募集させていただいております。今回も「待ってました!」という感じでお声をいただいて、たくさんのご応募をいただきましたので、いくつかご紹介させていただこうかなと思います。
小宮:それではここから、質問を少しコメントと一緒にご紹介したいと思います。

<ペンギンさん>
現在『すかすか』5巻まで読んでいて『すかもか』と『EX』は未読です。
この場合、『異伝』はどのタイミングで読むのが物語楽しめるでしょうか?
やはり『すかもか』を先に読むといいですか?

小宮:異伝を読むタイミングは、私は『すかすか』読んだ後に一度読んでいただいて、『異伝』を読んでいただいてから『すかもか』を読むと2倍楽しめるかなと思ったんですけれど。

枯野:そうですね。『すかすかEX』は『異伝』より先に読んだほうが通じるかなというのはあります。リーリァの根幹に当たるところは『EX』の方で説明を済ましてしまったということで、割とさらっと今回の『異伝』では流しているところはあります。『異伝』と『すかもか』の順番に関しては、それぞれの楽しみ方がある、楽しめ方がある、というかたちにしてあるので、もうお好きなように、というかたちになっています。

小宮:これ1巻だけでも十分楽しめるなというふうにも思ったんですけど、入り方としていろいろ選べるのは新しい『すかすか』、というかこのシリーズ全体の可能性かなぁというふうに私も思って読んでおりました。

<TomOneさん>
今回も何人か犠牲者は出ましたが、普段よりはずっと平和で気楽に楽しめました。リーリァがヴィレムを好きでぬいぐるみ買ったりした、バレたら確実なる黒歴史やら、アデライードの容姿も金髪ロング、白シャツに赤いスカート黒のコルセット締めと典型的お嬢様な感じでツボです。
エマとの容姿が姉妹なのに違うのは、やはり姉妹だと気付かれてエマの命が狙われないように、呪蹟(ソーマタージ)で容姿を変えたと言うところでしょうか?

枯野:姉妹だと気づかれてエマの命が狙われないようにというのはほぼそのままです。違う人間にならなければいけない事情は、なんにせよあったと。細かい所ですけれども呪蹟(ソーマタージ)で容姿を変えたっていうわけでは実はないのがあります。特殊な薬と、お化粧と、あとは容姿の印象をちょっと操作する護符(タリスマン)と、みたいな小技の組み合わせでバレないようにしています。

小宮:逆にそっちのほうがすごい感じですね。

枯野:いろんな技術の掛け合わせで結果を出すということのエキスパートのアデライードさんなので、そういうことができた、と。なので、今回最後の決戦で護符(タリスマン)が壊れたあとにエマにちょっとバレかけましたね。

<きりんさん>
なぜリーリァはエマを見て一瞬アルマリアだと見間違えたのでしょうか?
あと、『すかすか』4巻にカイヤというキャラクターがいましたが、
今回のカイヤナイトと何か関係があるのでしょうか?


枯野:今後のストーリーに関わるかに関しては今後にならないと明かせないところではあります。今回のストーリーにって話をするならば、もともとリーリァが社交的な子ではない、社交的に振る舞えるけど知り合いを積極的に作れる子ではない、ということがあり一瞬見間違えた。だからこそあのように関係を作れた。なぜ似ていたのかを考えるのに関しては理由はいらないと思うんですけれども、そっくりさんっていうのは理由なく生まれるものですけれども、似ていたからこその今回の話ではあった、とは言えると思います。

小宮:あとはカイヤというキャラクター、『すかすか』4巻に出てきた勇者パーティのキャラクターなんですけれども、カイヤナイトと今回出てきたキャラクターと関係はあるんでしょうか?

枯野:カイヤさんはさらにもう一人、2巻からかな、出ている黒燭公(イーボンキャンドル)の従者の猫耳さんがいますね。まぁもともとはその2巻と4巻のお二人だったんですけれども、これらの間に共通の設定がありまして。そもそもこちらの世界にも言えることですけれども、子供が生まれたときの名づけに聖人とか歴史上の有名人とかの名前をいただくというやり方があります、と。これがこちらの世界でも向こうの世界でもある程度メジャーなやり方としてあって、カイヤの名前は有名な昔話に出てくる精霊の名前だったりします。世界を救う超聖人をそばで支え続けていた、そういう精霊。この名前をいただいて、リーリァのパーティにいたカイヤもイーボンキャンドルの隣にいたカイヤも名前を付けられたと。つまりその源流がそのカイヤナイトです。

<[ ]/nakatoさん>
正規勇者(リーガル・ブレイブ)リーリァは人類を守れても1個人を守ることはできないすごく悲しいですねそれを13歳で理解してるのもまた…
そしてセニオリスの話が個人的に好きでした!
(あとヴィレムに聖剣(カリヨン)の調整を教えたのがアデライードなのかな?)

<キアさん>
異伝でセニオリスの完成秘話が書かれましたが、
今後他の極位古聖剣の完成秘話を書く予定はありますか?

枯野:他の聖剣の完成秘話。きっぱりないです。今回のセニオリスの話は、もともとセニオリスってどういう剣なのかのバックボーンを、本編シリーズで山ほど描けた後の登場だったから、このようにダイジェストで書いて伝わる話にできましたが、他の剣に関してはポッと出の剣の誕生秘話を短く書いたところで、何にもならないと思うんですよね。ポッと出じゃないかたちにしようとしたら1冊以上まるごと使って描写するようになっていくと思います。それにおそらく、どの剣も書こうとすると違うジャンルの話になります。

<もじゃ 中学3年さん>
セニオリスの誕生秘話のなかに名前の由来が書かれていましたが
他の聖剣の名前にもセニオリスのように由来があるのでしょうか?
またゼルメルフィオルの特筆能力(タレント)についても教えてください!

枯野:名前に由来がない聖剣はないです。必ずどこかに由来があります。ただ、一般名詞とは限らないですね。人名から取っているようなものもあるので、辞書引いて分かるものばかりとは限りません。

枯野:出てくる予定がないのでざっくり言ってしまえるんですが、世界汚染です。詳しく説明すると、リュシル以外には使えない理由なども全部説明しなきゃいけなくなってすんごい長くなりますので、今のざっくりの説明で。

那瀬:ゼルメルフィオルに関しては、リュシルしか適合していないってことは、リュシルと、それこそカイヤナイトみたいなことも何か物語があったのかしら、的な思いもあるんですけど。

枯野:そうですねぇ、まる1冊以上かかりますね。

小宮:私は読んだときに、ちょっとゼルメルフィオルの特筆能力っていうか影響というかは、〈重く留まる十一番目の獣(クロワイヤンス)〉に似ているなと感じたんですけど、そのあたりはどうでしょうか?

枯野:人のつながり方を使って、人が人を変えていく過程になぞらえて生まれてくるものとして、クロワイヤンスとか〈広く包み込む五番目の獣(マテルノ)〉とか〈輝き綴る十四番目の獣(ヴィンクラ)〉とか、あのあたりの獣もそうなんですけど、似ている部分はあります。人に干渉して取り込んで無機物に変える。まあ無機物とは言い難いものも混ざっていますけど。ただ、理由とか経緯とか手段とか対象とかがそれぞれまるで違っているので、同類とは言えないところがかなりあります。

那瀬:ルーツは似たところにあるんだな、というところ感じもします。

枯野:そうですね。ルーツは、これはもうシリーズのテーマ的なものになってしまうんですけれど、人が人を求めるときに、どういう手段を取って、そしてその手段を間違えたらどうなるのか。というようなところが物語の根幹に常にあるようにデザインされているので、そういったところの印象が似てくるというのは当然あると思います。

小宮:ではここからは彼の先生のプライベートに関する質問も頂いておりますので紹介したいと思います。

枯野:お手やわらかに。

<リュウさん>
僕は『終末何してますか?』シリーズが本当に大好きな高校生です!
『終末何してますか?』シリーズの中で自分に似てるな~と思うキャラや、
お気に入りの遺跡兵装(ダグウェポン)を是非教えてください。

(ちなみに僕はクトリの最後の戦いを支えたデスペラティオが好きです)

枯野:似ているキャラ。大人勢一通りですかね。グリック、マゴメタリ、一位武官ズ、今回のヨーズア。うっかり気を抜くと、彼らには作者の言いたいことをそのまんまの言葉で言わせてそうになってしまって、慌てて本人の考え方に立ち戻ってもらう、みたいなことが多々あります。

小宮:それは、キャラクターを書いている上でやっぱり枯野先生が手を出したくなるというか、ストーリーに入り込みたくなるような瞬間の気持ちが書かれているわけでは?

枯野:ストーリーに対してというよりは、若者に対して物を言うっていうときに、自分自身ある程度年をくっているものですので、言いたいことっていうのは素でいくつもありますし、気を抜くとそれが出てしまう、と。けど、作者が言いたいことと作中の大人勢が言いたいことはやっぱりズレがあるしなくちゃいけないし、そこを大事にしようとすると作者のセリフをそのまま書くわけにはいかなくなる、と。

小宮:続いて、お気に入りの遺跡兵器。

那瀬:前のインタビューで思い入れがあるものはみたいなのものも一つしてもらった気もするんですけど。

枯野:思い入れでどれと答えましたっけ? それこそデスペラティオ?

那瀬:デスペラティオっておっしゃっていました。

枯野:そうですよね。あれはやっぱり思い入れは非常に強い剣なんですよ。で、好きな剣っていうのは違う角度から答えるとなるとやっぱり自分で使うならみたいな感じになってくると思うんですけど、そうなるとパーシヴァルですかね。ハイエンドマシンではありませんが、ユーザーが改造できるだけの拡張性がある。まあ要するに自作パソコンのノリですね!(笑)

小宮:逆にちょっと聞きたいのは、選ばれたくないなっていうのもありますかね? 理由があるじゃないですか、適合理由というのが。

枯野:そうですね~~……。理由というか、適合条件を全てを知っている立場からすると、確かにこの中には入りたくねーなというのはあります。

那瀬:それは明確に教えていただけない……?

枯野:いや~駄目ですね!

小宮:じゃあ今後の楽しみということで、またインタビューのときに、全部が明かされたときに是非教えていただきたいなと。

枯野:全部明かす日はさすがに来ないんじゃないかな、と(笑)。

<つかちゃんさん>
枯野先生は執筆中あまりにも筆が乗らないとき何をして気分転換してますか?
先生が今までで衝撃を受けた作品(映画でも小説でもアニメでも)で特に印象的なものがあれば知りたいです。
3日ごとに新刊読みたいので、枯野先生の3日が1年くらいになるように神様にお祈りします。

那瀬:という鬼のようなコメントが(笑)。

小宮:激励の言葉が届いております!

枯野:わーい!(笑)

小宮:筆が乗らないときも、3日のうち1日ぐらいはあると思いますが、何をして気分転換をしていますか?

枯野:3日のうち1日……、でも一年経ってるんですよね!? さておき、気分転換は基本的には散歩ですね。運動不足は大敵ですし、歩いている最中に出てくるアイデアというのは机の前で出すアイデアと全く別も質のものになるので、混ぜ合わせるといい感じになることがあるし、それを期待して歩くと。長い時には丸半日ぐらい歩き通しということもあります。

小宮:特に衝撃を受けた作品というご質問も頂いておりますけれど。

枯野:まぁ山のようにあります。強いて一つを挙げるならば、今の方々があんまり知らなそうな感じのゲームブック=読者の選択で展開が変わる物語。これに若かりし頃ハマっていた時期がありまして。世の中にファミコンすら普及する前の時代ですね。主人公の選択一つで幅広く展開が変わっていく。けれど、物語が物語であることをやめない。一つの問題に対して主人公はスタイリッシュに進んだり、もしくは薄汚いやり方で進んだりして、そのどちらでも物語が成立するというのを見て、若かりし頃の私はね、一つの舞台の上に一番美しいもの以外の展開をしても、そういう物語を送ってもいいんだということに衝撃を受けました。そういうのが、他にもいろんな衝撃を受けまくった末、今の私につながっている。

那瀬:ちなみにそれってテーブルトークRPG(=TRPG)の本とか、そういう形ではないんですか?

枯野:TRPGが本格的に日本に紹介されるようになるまで、ゲームブックが日本に来てから数年の空きがありまして。その数年をリアルタイムで追っていた世代なんです。

那瀬:私はむしろTRPGの頃からしか知らなかったので、その前のゲームブックという存在自体を知らなかったです。面白そうですね。

枯野:面白いですよ。今の感覚で言うともっさりしたゲームに見えてしまうのはもちろんあるんですが、当時はもちろん携帯電話はおろか液晶画面で何かをするみたいなことすらなかった時代ですから、ゲームというもの自体、選択肢があまりなくて。だからこそ、狭い枠組みの中で色んな実験が行われていたというと意味では今でも可能性を感じる分野ではあります。あとはあれですね、私の3日か1年ぐらいになると、週刊漫画の続きを読むのに2年かかるようになってしまうので、ちょっとこれは困ります! なのでそのお祈りが天に届かないように私も祈っておきます!

小宮:『異伝』以外にも少し質問をいただいておりましたのでご紹介します。

<寛二さん>
旧ゴマグ領跡には六番が多数いましたが、夢幻結界内のゴマグに二番がいたのは何故ですか?
最初の獣=シャントルが現れたのはゴマグと王城のどちらですか?

枯野:疑問に持たれるものを当然かつ、だからこそさっきのネタになるところからピンポイントでご質問いただきました。『異伝』が超続くようなことがあったら4巻ぐらいになったら大ネタになる話だと思います。ゴマグ市に出た獣、これは色々考えられると思います。たとえば現実では〈穿ち貫く二番目の獣(アウローラ)〉の脅威をなんとか退けて、でも〈深く潜む六番目の獣(ティメレ)〉に屈したとか、もしくはアウローラがゴマグを滅ぼした後にどこかへ行っちゃったとか、それらとまったく違う理由の可能性も当然あります。それと、最初の獣が現れたのはゴマグと王城のどちらですか、と。『すかすか』の1巻でちらっとだけ書いている、最初の獣が王城に出たっていう記述ですね。よく拾っていただきました。こちらが正解です。ゴマグに最初の獣は出ていません。では4巻のアレは何だったのか、ということに関しては現在の材料で想像はできると思います。正解に関してはまだ出ていないということで一つ。

小宮:じゃあ今後4巻ぐらいで。

枯野:出ますかね~?(笑) 読者の皆さんにお願いする感じですね。

那瀬:こちらの応援次第ですね。

枯野:お願いします!

<詩歌さん>
今回は私SS(ショートストーリー)のためにゲーマーズで買わせていただいたのですが、店舗特典をまとめて小冊子にしたり再掲したりはできないんですか…?
小冊子とかにしてプレゼント…いや買います!買うので、まとめてくださいいい!

枯野:店舗特典についてはあくまでオマケということで、本編に関係ないというか読まなくても大丈夫な内容にするようにいつもしています。なので、気が向いて手近で手に入るときだけ入手っていう感じでいいとは思います。が、そう言いつつ結構数がたまってきちゃっていますので、どこかでまとめられませんかという話は実はしています。ただ我々だけで決められる話ではあまりないので、いろんな方が関わっている話でもありますので、これがどう転ぶかに関してはまだなんとも言えません。

小宮:ここで質問のコーナーは終わりなんですけど、たくさんの皆さんからのコメントをいただいておりまして、今回抜粋でご紹介させていただいたんですが全部、枯野先生にお渡ししてお読みいただいておりますので。

枯野:拝見させていただきました。本当にたくさんいただきました。

那瀬:感想だけのコメントもたくさんいただきました、ありがとうございました! 今回も盛りだくさんにお話いただきましたが、これが次の特集にどうつながっていくかも、『すかすかシリーズ』増刊号の楽しみかなと思っております。最後に枯野先生からメッセージをお願いします。

枯野:『すかもか』は次回は8巻となります。9巻で終わるかな、終わればいいなと夢を見ながら続けております。その辺りの未来が見えてから『異伝』に関しては考えたいな、という感じではありますので、今後の展開に関してはふわっとしたことばかりですいません。
そんな感じの未来ではありますが、今回100万部突破と帯に書かれている、これに関しても今回はお礼を言わなければならないところなんです。長いこと様々な方々に、そこあにさんも読者の皆様方もお付き合いいただきましてここまでやってきました。これからもゆるふわな、ゆるふわな? ふわふわした感じの未来にもぜひお付き合いいただきたい。今回のような実験的なものまで含めて、このシリーズでやっていきたい楽しげな試みはまだ色々とあります。少しずつ形にしていきたいと思いますので、今後ともお付き合いいただきたく思います。

構成:那瀬ひとみ
協力:米林明子

ネットラジオ(Podcast)「そこ☆あに」 https://sokoani.com

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