見出し画像

記憶の記録18

高校最後の年、4年生になると教室が広くなった。
自分のクラスもそうだが、学年全体としても生徒数は入学時の半分以下になった。少ない年だと数人しか残らないこともあったようだ。

落ち着いた雰囲気で、時々和やかで、普段話すことはなくてもなんとなく仲間意識を持てるクラスになった。
学校で過ごす時間は1日5時間ほどだが、それが4年となると案外長いものだ。

卒業後、リネンのパートを続けながら、16の時に出会った人と結婚した。
もちろん両親は大反対だった。だがその両親とは不仲だったし、実家に居場所も無かった。一刻も早く家を出たかったが、独り暮らしができるほどの収入も無い。
相手はずっと結婚を望んでいてくれたのもあって、結婚すると同時に一緒にアパートで暮らし始めた。

当時から小さな我慢はよくしていた。
相手以外に自分の居場所を見出せなかったから、捨てられたらすべてが終わりだと思っていた。

自分はなにもできないし、これで生きていくんだなんて思えるような好きなこともなかったし、そんな自分は生きてる価値なんかない、この人に求められなくなったら死ぬしかない──なんて視野の狭すぎる思考しかできなくなっていた。
自分の存在を肯定してくれるのはその人しかいなかった。当時は自分ですら自分を肯定できなかったのだ。
縋るしか無かったのかもしれないが、今思えば、そこから苦痛の十数年が始まり、20代という貴重な時期を迷走することになった。

そうなったのは自分一人の責任ではないかもしれない。客観的に見ればそうだろう。
でも、その時その場で選択してきたのは自分なのだから、残った結果は自分の責任なのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?