企業の人事組織構造とIT活用について

自身の業務でITシステムの認証認可を一元化するIdPサービスの選定を担当し、色々と思うところがあったので書いていく。結論から言うと、日本企業が業務執行する上での人事組織構造はITシステムの運用と非常に相性が悪いのではないか、という内容である。

ご存知の通り、ITシステムとは情報の処理や伝達、記録を行う為のシステムであり、営業系、生産系、人事系など様々な種類がある。そしてそのシステムは組織内で権限を与えられた人間が入力、閲覧することができる。

ITシステムを適切に運用するというのは適切な人間に権限を与えて業務上必要な情報を入力させるということであり、ITシステムを効果的に活用するというのは記録された情報を業務戦略や改善に繋げていくという事だと筆者は捉えている。

つまり、
①この入力や記録された情報、付与された権限の信頼性を担保し、利便性を向上させること
②何を入力するか?誰に権限を付与するか?どう業務に反映させるか?を決定すること
この2つの関係性をうまく回していくことで効果的にITシステムを運用に繋がると考えている。

しかし筆者が日本企業の情報システム部門に勤めていて感じるのは、多くの日本企業はITシステムの利用権限が職制でなく人に紐づく人事組織になっており、それが一部のITシステムの運用負担増加に繋がってるのではないか?という点である。
誰がシステムを入力して誰がどこまでシステムの記録を閲覧することができるのかが職制ではなく人に依存するため、組織改編や人事異動によって権限が不明瞭になる。そして時間が経つにつれ機能要件やシステム自体の目的がブレてプログラムがスパゲッティ化するシステムが出てきてしまうのである。
職制に権限が紐づいていれば、組織改編の際にもシステム権限に応じた人事になるが、人に紐づいてると権限が組織が分離してしまい、業務執行体制にシステムを合わせようとするとシステム修正に多大な負荷がかかってしまう。これが日本企業がIT活用に劣ると言われる大きな要因なのではないかと感じる。

この文化は現場主義という意味では人間の関係性や能力が優先され部分的な業務品質は高くなるかもしれないが、組織運営やシステム運用という観点では人と手間がかかり過ぎる。長期的な目線で言えば非常に効率の悪いシステム(業務)になり、運用保守に多くの人を要する負の遺産になってしまうのである。

筆者は決してシステムを第一に考える経営が素晴らしいと言う気はない。しかし多くの日本企業がITシステムを効率的に活用することができてるとは言い難く、業績としてもアメリカや中国に遅れをとっている状況を考えると、マネジメントの改善は必要不可欠である。

今後、日本の労働市場はより流動性が高まることが間違いなく、特定の個人に依存しない業務執行体制の構築はリスクマネジメントの観点からも必須になる。政府のデジタル庁の開設にもあるようにIT活用の重要性が高まっている今、単純にDX推進と声を上げるだけでなく、人事組織構造から見直すリーダーシップが求められるようになるだろう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?