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0112「最高のサッカーの教科書」

今日はコンサドーレの2019シーズンキックオフがあり今期のスカッドが発表された。そして埼玉スタジアムでは檀崎選手が全国高校サッカー選手権準決勝を戦った。つまりコンサドーレサポーターとしてはとても重要な日であった訳だが、私はそれらの結果を把握していない。
というのも今日は今年5月に控えた結婚式の衣裳合わせがあったのだ。悲しいかな人生最良の日と言われる結婚式の準備には結婚式以外のいかなる気になる事象も優先されることはない。そういう訳なのでこれらの結果はこの後帰宅してからじっくり確認しようと思う。

さて、結婚の話が出たので勝手に結婚相手について記してみると、彼女とは大学時代に知り合って、付き合って7年ほどで結婚ということになる。その間、私の愛する北海道コンサドーレ札幌の試合に何度も一緒に行った。彼女は東京出身で、特にサッカーに興味があったわけでもないので彼氏である自分に長い間渋々付き合ってくれていたのだ。
一緒に観に行き始めた当初はコンサドーレはJ2で、その中でも良い成績を出しているチームではなかった。特にアウェイでは結果が出ない。我々は東京に住んでいるので観戦となると関東からアクセスの良いアウェイ戦がメインとなるのだが、とにかく勝てなかった。(まれに2人揃って行った札幌ドームでも勝てなかった…)
福森のFKが立て続けに目の前で決まった大宮戦も、昇格争いの真っ只中で内村が目の前で劇的な逆転ゴールを決めた千葉戦も、そのときは猛烈に盛り上がったが、あくまで彼女にとっては単発の盛り上がりだった。
それでも得点時のゴール裏の熱狂や、試合中の90分はもちろん、試合前のウォーミングアップからボルテージMAXで応援し続ける札幌サポーターのゴール裏に魅かれていたのだろう、彼女は文句一つ言わず付き合ってくれていた。

状況が変わったのは2018シーズンのアウェイ鹿島戦である。この試合、結果はスコアレスドローだったものの、コンサドーレが終始主導権を握り、細かいパス交換で崩したり鋭いサイドチェンジを繰り出したりと、この年就任したミシャのサッカーがまさに体現された試合であった。
サッカーでは最も魅力に欠けると言われるスコアレスドロー。私は、これまで主にスタジアムの雰囲気やゴール時の熱狂そのものを楽しんでいた彼女にはこの日コンサドーレが見せたサッカーの素晴らしさは分からないだろうと思った。
しかし実際は違った。帰りのバスは渋滞で大いに遅れたが、その日のサッカーがいかに面白かったか彼女が語り、それに私が反応し、話題は尽きなかった。

その後彼女は変わった、私も驚くほどにサッカーを見る視点が変わったのだ。ゴールだけではない。誰のボールの受ける位置が悪いとか、誰のコンディションが今日は良いとか、このゴールに貢献したのは誰だとか、選手個々の役割とその試合でその役割を果たしかどういかとか、そういう話をするようになったのだ。これは本当に驚くべきことだった。彼女が何かサッカーの戦術に関する本を読んだとか、誰かから知識を植えつけられたとか、私がこういう視点を持てとか言った訳ではない。
そんなことがあるか、と思う人はいるだろう。しかしこれは本当にあった話だ。ではなぜこんなことが起きたのか。

いま改めて分析してみると、それはビジョンの明確化、ということに集約されると思う。
ミシャが就任するまでのコンサドーレのサッカーは、「如何にして勝つか」ということがメインだった。どのようにがむしゃらに勝ちを掴むかはその時の自軍のスカッドや相手のメンバー状況に大きく左右された。そのため毎回コンセプトがハッキリせず、また全ての試合においてはそれを明確に選手たちも体現できていなかったと思う。一方ミシャのサッカーは「自分たちでボールをコントロールし、自らの力で相手を崩した上でゴールを奪う」というビジョンが明確である。ちょうどそれが浸透し、体現もできたのがアウェイ鹿島戦だったのだ。
それ以降のコンサドーレは自陣からビルドアップすることを恐れず、ゴールを奪う、ということに対して明確な姿勢を見せた。それにより私の彼女を始めとする観客は観るべきポイントが明確になり、選手の役割が明確になり、より深くサッカーにのめり込むようになったのではないか。

ここまでの文章は半分惚気だ。しかし半分は真理だと思う。明確なビジョンを確かに再現し、それを観客に見せる。それが観客のリテラシーを最も向上させる。私はそう信じている。

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