新聞の切り抜きで脅迫文を作る作業の効率化
私はフォントが好きだ。
フォントオタクって言ってしまっていいのか分からないけど、多分それなんだと思う。
いろんな種類のゴシック体を一緒に眺めて楽しんでくれる友達がいないから誰かからそう言われたことはないけれども。
まぁとにかく、個人的にとびきり興味を惹くものがある。
そう、なんかよく見る
「新聞の切り抜きで作った脅迫文みたいなもの」だ。
元はサスペンスドラマとかでそういう怪しげなものとみせるために演出で使われたものだが、
「怪文書と言えばこれ」
みたいな認識になっている。
※知ってる人も少なくない
「怪文書ジェネレーター」
だが、この記事を書いている最中、検索してみたらサイトごと無くなっていた。寂しい。
様々なフォントでひと文作って、それを他人に読ませるのって教科書とか文庫本とかじゃありえないなって興味を持って、
「もしかして新聞の切り抜きで実際になんか文章作ったら達成感やばいんじゃないか…?」
と将来に不安を抱いていても目の前の興味を優先してしまうような精神年齢で、夏休みの自由研究くらいのカロリーの何かを成し遂げたかった私は、そのへんにあった前日の朝刊をしれっと勝手に貰って、いっぺん作ってみた。
なんと、宇治金時しかつくれなかった。
(奇跡的に揃った4文字だったので記念にマグネットステッカーにした。)
文章ですらない。集めることができた文字が想像以上に少なく、強制的に
「ここにある文字でなんの熟語が作れるかな〜?」
みたいな脳みその体操、パズル?を急にさせられた。
フィクションに存在している新聞の切り抜きを一生懸命集めて犯行声明文を作成している爆弾犯かなにかは、とてつもなく苦労しているということを知った。
そんな暇があったら爆弾をもう一個調達しといたほうが絶対自分の為になると思うほどに。
単純に、もっと長文を作るなら比例してより多くの新聞をかき集めなきゃならないということだ。
「うじきんとき」や
「うじ金時」、「う治金とき」など断固拒否、
本来漢字表記であるものをどうしたって漢字で表記したい意地が足を引っ張っていたところはあるが、爆弾犯に申し上げたい。
……と。
私は爆弾犯ではないけれども、ここで
「新聞の切り抜きで脅迫文を作る作業の効率化」
に着目することになった。
どうしてそこにやる気を出す?とか聞かれてしまうと理由がめっちゃ薄いから返事に困るが、
「なんで一日中YouTubeを見てしまうのか」
のクエスチョンと同じアンサーになると思う。
そうとなれば、と火曜の紙ごみの日まで放置されてた朝日新聞の束をかっさらった。また、いろんな種類のゴシック体と明朝体を確保しようと最寄りのコンビニからさまざまな新聞社の日刊、朝刊を購入した。
見出しを切る→シールにする
早速だがまず、簡単にだけれどもどういった流れで一文字ずつ切り出していったか説明させていただく。
床に一面ずつ広げる。内容には特に着目しないで新聞一面でどの見出しが使えそうか考えはさみで切りまくる。
若干言い訳がましいが、読書恐怖症のため本どころか文章みっちみちの新聞を読むことができないので、「そもそも読み物と捉えない」ことが個人的に重要であると判断した。
内容気にしてないと、ときどきこういうなんかちょっと気になる見出しを切った後で見つけることもある。
「仕方ないし、多分必死に頑張って読んでも『読んだ』という実感しか得ることができないだろう」と滅茶苦茶に勝手な偏見のうえで諦めることが肝心だ。
そして見出しを幅広の両面テープの接着面に貼り付けていく。こうすることで、後で反対側の剥離紙を剥がせば、接着剤不要で直接紙に貼ることができるという魂胆だ。
フィクションの再現を求めるのであれば、裏面はなんかノリとかにつけてピンセットで慎重に貼るのがドラマっぽいかもしれないし、最初はそうしようとしていたがノリでちまちま貼る時間よりうちの可愛い猫を撫でる時間のほうが優先度が高いと判断し、申し訳ないがそこは見限った。
これを1文字ずつ切り離していけば、気がつけば結構な量のひらがなとカタカナがシール状になるわけである。
新聞の用紙は非常にぺらぺらして放っておくとすぐどこかに飛ぶので、剥離紙があるお陰で厚みと重量が増し紛失防止にも役立っている。
脅迫文を作ってみる
ある程度材料が揃ったとて、実践なしでは
「脅迫文、納品できます!」
と自信を持って言えないので作ることにした。
しかし、私は悩んでしまった。
生憎、私は爆弾犯ではないので。警察を敵に回すつもりがないので。
この無数のフォントたちを見て、何を作りたいか1週間ほど考えた。なんとなく、
攻撃的な発言(場合によっては冗談じゃなくなるから)
面白さを狙った発言(狙って面白いこといえるほど面白い人間じゃないから)
大学辞めたい(お前のそういう発言まじで元気無くすし悲しくなるからやめてと同期に怒られたことがあるから)
というような内容にしたいわけではないということだけふわっと決まったまま作りたい文章をスマホにメモする。
内容を真面目に考えていく最中で、
「脅迫文らしさとは一体…?」
と悩むこともあったが、
「私自身はそもそも誰かを脅迫したくないし、怪文で誰かを困らせたい訳でもない。」
という常識は持ち合わせていたので、私が作るにあたっては
「脅迫文よかったら代理でつくれますよ」という
意思表示さえできればいいと考え、
「脅迫文もしくは犯行声明文に似通った内容」
は却下し
「私のひとりごと」
を起用することにした。
そうして初めてできたのがこれだった。
その当時はじめて飲んだエスプレッソアフォガートフラペチーノが美味しすぎてスタバに週4で通うくらい取り憑かれていた。
内容は他人からしたら
「どうでもいい〜」
「で、だから?」
くらいの情報で概ね良いと思う。
文字の大きさの違いと、いろんなフォントを使うことでアンバランスさも取れている。
だけども、これ作るのに6時間かかった。
6時間のうち大半は、
「ソ」「プ」「バ」が見つからず
「ソーーーーー!!!!!!」
「良い加減にしろプーーーーー!!!!!!」
「バのバーーーーーカ!!!!!!」
と発狂することに時間を要した。
予め集めて一箇所に集約したとて、
スパイスの種類が多すぎて欲しいのが見つからないカルディ状態だった。
かかりすぎだ。
だったらときメモGS3の平だったら6時間で攻略できるので、平を攻略したかった。
沢山作って実績を積む
文章の製作は達成したけど、あとは更なる時間短縮の問題だった。
これが最初の「新聞の切り抜きで作った文章」だったことを差し置いても、次作るときも6時間かかる前提なのは正直辛い。
だけど、時間が無いと悩んでいる爆弾犯のための「脅迫文外注先」となるために回数を重ねて最短経路を探していくしか無いと考えた。
ちなみに、出来上がるごとに完成品が部屋のどこかに埋もれてなくなりそうで怖かったので、ツイッターのサブアカウントで画像のみの投稿を始めた。
フォロワー4人の気持ちは到底理解できないけど、この4人のおかげでモチベーションはかなり維持することができた。非常に感謝しています。
より多くの文字を切り抜いて確保した上で、見出しに使われる頻度が少ない文字を把握することも同時並行で行った。
そうすると、次に見出しを切る際にどの文字が必要か、優先順位を立てやすくなるから。
ひらがなに絞ると
「の」が圧倒的に多く、
「そ、ぞ」「ゆ」「ぴ、ぷ、ぽ」
が圧倒的に少ない。
見出しというのはやはり体言止めが多く、漢字表記できる部分をあえてひらがなにすることをしないので、必然的に使われない「かな」がこの辺りだった。「ひらがなのぺ」は最悪「カタカナのペ」から持って来ればいいので、意外と足りている。
ちなみに、「ぬ」は探せば結構見つかる。
使うタイミングがあまり無いが。
あの頃の私とはもう違う
思いつきで始めたことがこんなに続くとは思わなかった。
こんなに続けていられるのは、おそらく私くらいしか探索していないマイナーコンテンツだからなのだと思う。私が辞めたら全てが終わる。
pixivの過疎ジャンルと同じような感じだ。
毎日の積み重ねは大事なので、今日も私は新聞紙を買って帰る。
「この文章が欲しい」と思い立ってからでは遅い。新聞は定期的に買いためておく。
新聞をいっぺんに5種類買う人間ってあまりいないらしく、店員さんが気づかず新聞一冊の金額で精算が進みそうになったことがあり、
「変な買い物してすみません」
と申し訳なくなった。
夜中の23時半に入店してきて、日付もうすぐ跨ぎそうなのにその日の朝刊を買って帰る人間を見てコンビニ店員は何を思うのだろうか。
めちゃくちゃ効率厨になった私は、このひとつの見出しを切るだけでも最効率のルートを逃さない。
漢字とかなに分ける。カタカナがあればそれも別に切る。
漢字の山とかなの山とカタカナの山を作っておく。
それらを一文字ずつ切り分けたなら、この引き出しにしまう。
Amazonで見つけた瞬間これのためにある引き出しとしか思えなかった。めちゃくちゃ使い勝手が良い。
当たり前だけど、引き出しに一枚ずつしまうのではなく全部振り分けてからまとめて引き出しにしまうほうが早い。
(これを早く進めるために切る段階で漢字とかなとカタカナを山にしてわけていた)
ちなみに6と9は見分けつかなすぎて同じ引き出しにしまっている。UNOで下線引かなきゃいけないくらいだから仕方ない。
ひらがなはあいうえお順で並べているのでよいとして、どの見出しにおいても絶対漢字は使われている。漢字のほうはどうやって分類して保管しておくかだが、そこも既に解決している。
例えばこれだと、どう見ても「ちょうせん」としか読めないが、これを切って別々にしてしまうと熟語読みはできなくなる。
だから、漢字は訓読みがある場合、必ず訓読みになおしてあいうえお順にしまっていく。
この場合、
「いどむ」で「い」の引き出しと、
「たたかう」で「た」の引き出しに
しまうことになる。
加えて、引き出しの中でも同じ漢字が重複しているものはポリ袋に入れて保管する。
「戦」に至ってはあまりにも枚数が多くひきだしを圧迫するため、別でトレーに避けている。
※オリンピック、甲子園などスポーツ関連の記事で増えがち。
始めた頃は漢字が見つからなく、なくなくひらがなで妥協したことも多かったが今は大分見つけやすくなった。
ここまで下拵えをしたからこそだが、今では文章ひとつ作るのに、15分程度で済むようになった。
ラーメン屋さんですぐラーメンが出てくるのと同じ原理だ。
完成したブツを見ると、現物の新聞で実際に切り貼りする良さが毎回見えてくる。
意外と新聞はカラー印刷の面が多いので、一定割合見出しもカラーになり、その点で本物で作ったランダムさが伺える。
次に同じ文章で作ったとしても、また違う文字を引き出しから漁ることになるから、違う様相で楽しめることだろう。
また、よく見ると年季の入った新聞は裏面の印刷が透けて見え、
「本物の新聞で作ってる感」をひたすら感じる。
そして、思っていた以上に大きさにばらつきがあり、どれを使うか考えないと貼る紙に収まらないこともある。
メーカーやジェネレーターは
「誰でも作れる手軽さ」があるが、本物で作ると、ユニークだし遊び心が生まれ、自由度が高いと感じた。
雇用先が決まり、社会の大変さをこの身で噛み締めていたらTwitterの更新はほぼ止まってしまったが、今でも新聞の切り抜きで文章は作り続けている。
犯行声明文を作ろうか悩んでいる爆弾犯さんがいらっしゃれば、Twitterの投稿がポートフォリオみたいになっているので、見ていただいた上でぜひご相談いただけたらという感じだ。
どんとこいだ。
最後に
季節は夏、しかも夏休み。
平日でも外は人で溢れかえり、人混みが嫌いな私が外出を控える時期だ。
もともと仕事が休みの日かつすることがないなら、家に溜め込んでいる新聞をジャキジャキ切り、猫を撫で一緒に昼寝し、貼り貼りすることに時間を費やす。
でもやっぱり誘える人がいるならその人を誘って海とかデパートとか行ったほうが有意義だと思ってはいるので、効率化とか言ったとて私の口から
「みんなもぜひ怪文書作ってみてね!」
とはとても言えない。
これは私に限った話をしているのではなくて、
この記事を読むために時間を使ってくれたあなたにもあてはまることである。
貴重な時間を割いてこんな身にもならない記事を読んでくれて感謝を申し上げたい。
補足
新聞の切り抜きで脅迫文を作るのは、コストがかかるし時間もかかります。
このことは記事で何度も説明しましたが、そもそも「新聞の切り抜きで脅迫文を作る行為」は現代の警察の科学力では簡単に足がつきます。
みなさん、犯罪はしないほうがいいです。
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