見出し画像

ウチのTLには女児だった頃の岩倉文也が居た

これは本当のことです。(ここに本当のことが書かれたときに現れる光の写真が貼られる)

画像1
嘘の光


突然ですが、皆さんは岩倉文也という存在をご存じでしょうか。知っていたり知らなかったりするかもしれませんが、知っていたり知らなかったりしましょう。

今回はこの岩倉文也という存在の話を


しません*。


ウチのTLの話をします。

【Def. 「ウチのTL」とは、筆者が想像し得る世界の全てのことである】

数年前のことです。ウチのTLには、女児高生(原文ママ)を名乗るあるアカウントがありました。彼女の呟きは現代的で、露悪的で、少女的でした。彼女の表現は繊細で、鋭く、生生しかったです。私は彼女の呟きが好きでした。私は彼女の表現が好きでした。彼女の呟きを印刷して折って綴じれば、そのまま詩集になるだろうなと思っていました。私は彼女の文章に、オーラに、その全てに「女児だった頃の岩倉文也」という印象を抱きました。そして……彼女がそのまま成長したら、岩倉文也になるのだと思いました。

今思えば、この態度はとても不遜でした。人を評価するときに別人を持ち出して「誰々みたい」と言うことが双方に対して失礼なふるまいであることは周知の事実です(岩倉文也さん、ごめんなさい)。しかし当時のウチのTL、すなわち当時の私の世界に対する解像度では、彼女は確かに女児だった頃の岩倉文也でした。

そこまで言われると、気になると思います。彼女の表現がどれくらい、「女児だった頃の岩倉文也」だったのか。

残念なことに、それらを確認することはもうできません。彼女の呟きを見ることはできません。私は特にお気に入りの投稿をブックマークもしていましたが、それも無駄でした。なぜなら彼女はアカウント(@yumeututu87)を消しているからです。今このIDで検索しても、彼女に私が飛ばしていた見るに堪えないリプライと、おそらく私と同様のネットストーカーと思わしきアカウントの一方的なリプライくらいしかヒットしません。

私は後悔しています。ツイッタラーがよく言う「このツイート額縁に入れて飾りたい」は、案外重要な行為だったかもしれないと。

今手元に残っている、唯一確認できる彼女の表現物は、かつてネットプリントで印刷ができた同人誌「詩人第7世代」に「むらさめ」の名義で寄稿された一編の詩「BLACK me」のみです。現在はboothでデータ販売されているようなので、どうしても気になった方は購入してみてください。

ただし、あなたから見てその詩が「女児だった頃の岩倉文也」の書いたものに思えなかったとしても責任は取れません。そして実際、彼女は岩倉文也にはなりませんでした。


彼女は岩倉文也にならなかった

そう、彼女は岩倉文也にならなかったのです。何故なら彼女はインターネットを辞めたのですから。

上述の詩が「地雷女子特集」に掲載されていることからも分かるように、彼女はいわゆる地雷女子でした。小学生の頃にはアイドルを自称して放課後ライブを開いていたそうです。インターネットにずっと居れば、いつしかファンを抱えてインターネットアイドルになっていたことでしょう。そしてアンダーグラウンドで健全とは言えない人間関係に巻き込まれていったことでしょう。そして実際にそのようになりかけました。

もちろん詳細は伏せます。これは個人の家庭や人間関係に関わる情報ですので。ですが彼女のすごいところは、そこで自らを省みて、そのアンダーグラウンドから脱出することを決心したことです。高校を卒業すると同時に、インターネットで形成したあらゆる自己を封印しました。自分を大切にすることを心に決め、インターネットから去っていきました。これはすごいことです。

繋がりが非現実という感覚は
ほとんど失っている

BLACK me - むらさめ

これほどまでに非現実の人間関係に浸かっていた彼女は、しかし、もうインターネットには居ません。

彼女の意思に敬意を表し、私はその後の彼女を認知しないことにしています。

だからもうこの話は終わりです。





*岩倉文也氏の作品は「終わりつづけるぼくらのための」が個人的おすすめです。二頁ほどの短い小説の集まりなのですが、中でも「窓」は当時の私の世界観そのものでゾッとしました。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?