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§11 中空調子や雲井調子は平調子からできているの?①               お箏を弾く人のための「初めての楽典」   

第8回から第10回までで三つの「陰旋法」を作ってみました。

最初に準備したのはおなじみの「五=D(壱越)」の平調子に調絃したお箏です。

箏楽舎では「五=D」という言い方をしていますが、皆さんが師事する先生によっては「一=D(壱越)」とおっしゃるかもしれません。平調子は「一」と「五」は同じ高さの音(同音)ですので、どちらの言い方であっても同じです。「一」を1オクターブ低くするときは「一は五の乙」という指示があるのもどの流派でも共通でしょう。

第8回では平調子の「五・六・七・八・九」に陰旋法を作りました。

これは最初に準備した「五=D」の平調子の中にそのまま存在していましたので、箏柱はひとつも動かす必要がありませんでした。

「五・六・七・八・九」以外の絃についても確認してみましょう。

宮音: 「五」と「一」は同音で「五」の1オクターブ高い音は「十」
商音: 「六」の1オクターブ高い音は「斗」
角音: 「七」の1オクターブ低い音が「二」で「七」の1オクターブ高い音は「為」徴音: 「八」の1オクターブ低い音が「三」で「八」の1オクターブ高い音は「巾」羽音: 「九」の1オクターブ低い音が「四」

合わせ爪で1オクターブ違いの同音を作ることで「平調子」のすべての音が「宮音がDである陰旋法」に現れる音であることがわかります。


第9回では最初に準備したお箏から「宮音がAである陰旋法」を作りました。

箏柱全体を移動するのではなく、もともとの「平調子」の「三」が「A」であることを利用して「三・四・五・六・七」の絃に陰旋法を作りました。

この陰旋法をいったんもとの平調子に戻して、箏柱をどう移動させたのかをもういちど確認してみましょう。この調絃にすぐに戻れるように、移動させた「六」と「七」の箏柱の位置に印をつけておきます。

「六」を半音高く(箏柱を右方向に移動)して「七」を全音(1音と説明することもあります)低く(箏柱を左方向に移動)することで「三・四・五・六・七」に「宮音=A」の陰旋法を作ることができました。


第10回では最初に準備したお箏から「宮音がGである陰旋法」を作りました。

もともとの「平調子」の「二」が「G」であることを利用して「二・三・四・五・六」の絃に陰旋法を作りました。

この陰旋法もいったんもとの平調子に戻します。この調絃にすぐに戻れるように、移動させた「三」と「四」の箏柱の位置に印をつけておきます。


「三」を半音低く(箏柱を左方向に移動)して「四」を全音高く(箏柱を右方向に移動)することで「三・四・五・六・七」に「宮音=A」の陰旋法を作りました。

ところで、長くお箏を弾いているみなさんなら「六を半音高く、七を全音低く」とか「三を半音低く、四を全音高く」という言葉に思い当たることがあるに違いありません。

これらは「平調子」の調絃から「中空調子」「雲井調子」を作るときに楽譜に書かれている指示の一部です。

次回は「中空調子」や「雲井調子」、さらに他の調絃と陰旋法の関係を明らかにしていきます。

次回は7/1の予定です。

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