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§12 中空調子や雲井調子は平調子からできているの?②               お箏を弾く人のための「初めての楽典」   

第12回 中空調子や雲井調子は平調子からできているの?②

前回までに「五(一)」絃を「壱越=D」に合わせた「平調子」の「二」絃と「三」絃から新たに「陰旋法の五音」の音階を作ることを実践してきました。

今回は視点を変えてみます。

お箏で「雲井調子」の曲をさらうときには先生から「三と八を半音下げて、四と九を1音(全音)上げて」と教わります。

表でみてみましょう。

これを指示の通りに変化させます。

この表の「二」から「七」に注目して第10回で「二=G(双調)」を起点として「陰旋法」の音階を作った時の表と比べてみます。

「二」から「七」までは全く同じものになっています。

さらにお稽古が進むと「中空調子」の曲もおさらいします。「六と斗を半音上げて、七と為を1音下げて」と教わります。こちらも表で見てみます。

指示通りに変化させます。

この表の「三」から「八」に注目して第9回で「三=A(黄鐘)」を起点として「陰旋法」の音階を作った時の表と比べてみます。

「三」から「八」までは全く同じものになりました。

初心者のお稽古ではお箏が「平調子」の調絃になっていることが多いので、おそらくは便宜上「雲井調子」や「中空調子」を「平調子」からの転調、変化形として教えてしまいます。しかし、「平調子から三と八を半音下げて、四と九を1音上げて」という指示や「平調子から六と斗を半音上げて、七と為を1音下げて」という指示は、「宮音」の始まる「絃」と「音の高さ」を変えた別の「陰旋法」を作るための指示なのです。

雲井調子」や「中空調子」は「平調子」の亜種でも派生して生まれた調絃でもありません。

「雲井調子」は「陰旋法」が「ニ」から始まる調絃であり、「中空調子」は「陰旋法」が「三」から始まる調絃なのです。「二」から「陰旋法」が始まっていれば起点となる「二」絃の「宮音」は必ず「G(双調)」である必要はありません。「二」絃の音の高さが何であっても「陰旋法」の音階が「二」から始まっている調絃は「雲井調子」となります。もちろん「中空調子」も同様です。

今回はひとつ課題を出してみます。

沢井箏曲院の門下の方に限らず広く親しまれている沢井忠夫先生の名曲「鳥のように」の調絃をみてみましょう。

「雲井調子より六・斗を1音上げ、五・十を半音上げる。巾は九の甲、一は四の乙」

これはなかなかハードルが高いですね。みなさんはどうしますか。まず「平調子」の調絃をしてから「雲井調子」に変化させて、それから調絃の指示の通りに箏柱を動かしますか。それとも、楽譜には「C・G・A♭・・・」と音名も表記されていますから、そのままチューナーであわせますか。もし、チューナーがなかったら(余計なお世話かもしれませんが)。

これまでに「鳥のように」をさらったことがある方は、ぜひ今まで通りにこの曲の調絃をしてみて、その上で「陰旋法」という考え方から音の配列を調べてみてください。何か発見があった時にはどうぞコメントをお寄せください。

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