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§6 陰旋法の5音を歌う         お箏を弾く人のための「初めての楽典」   

第6回 陰旋法の5音を歌う

今回はいよいよ陰旋法のすべての音、陰旋法の5つの音を歌います。

その前に少し寄り道をします。

お箏を長く弾いてきた方は「宮商角徴羽」という言葉に出会ったことがあるかもしれません。「宮=きゅう」「商=しょう」「角=かく」「徴=ち」「羽=う」、続けて読むと「きゅうしょうかくちう」となります。この言葉は日本音楽の5音を説明するときの「階名」として働きます。「階名」ですから「宮」の音はピアノの鍵盤に割り当てられた「音名」のように固定された音の高さではありません。調絃の仕方によって「宮」の音は変わります。例えば「五」の絃を「壱越=D」に合わせた「平調子」では、その「平調子」を作っている「陰旋法」の「宮」にあたる音は「壱越=D」になり、「五」の絃を「神仙=C」に変えた平調子では「宮」にあたる音は「神仙=C」に変わります。つまり「宮」の音は「D」にも「C」にもなるのです。この点で「宮商角徴羽」は「階名」として働いているということになります。

しかし、実際には「きゅうしょうかくちう」と声に出してメロディを歌ったりすることはありません。あくまでも日本音楽の音階を説明する際に五音音階の5つの音それぞれの働きを説明する際に使います。


補足

少し詳しい説明になりますので、ここを覚えていただく必要はありません。「宮商角徴羽」は中国から「雅楽」といっしょに「雅楽の音階」を理論的に説明する「五声=ごせい」として伝わりました。日本では「五音=ごいん」として独自の変遷をしていきます。

いま私たちが嗜む「箏」の音楽は「雅楽」ではありません。「雅楽」に対して「俗楽」と呼ばれます。

「俗楽」の五音音階も「宮商角徴羽」を使って説明しますが「雅楽」の理論とは異なる点があります。この講座では「俗楽」の五音音階について田辺尚雄や小泉文雄が提唱した理論をもとに説明をしています。


今日の練習では「平調子」「五・六・七・八・九・十」を上がったり下がったりします。「平調子」に含まれる「陰旋法」は「五」から始まっていますので「五」が「宮音」になります。そして「十」で1オクターブ高い「宮音」にたどりつきます。

さあそれでは「ミ・ファ・ラ・シ・ド・ミ」「ミ・ド・シ・ラ・ファ・ミ」を歌ってみましょう。今回も半音ずつどんどん移調していきます。繰り返し何度も練習してみてください。

<お知らせ> 次回は5月13日 第7回になります。

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