「芸能人の政治的発言への違和感」への違和感

大前提として芸能人が政治的な発言をすることは全く問題ない。
むしろ歓迎すべきだ。
勉強していないうんぬんの指摘は的はずれだ。
勉強をどれだけしても、ものごとには違う見方がある。

極論すれば、橋下徹がよくやる手法の「現場以外は口出すな論」になる。
あまり建設的な議論にはならない。
もし勉強してなければ新聞でも読めばいいだけ。
「勉強してない」とTwitterでいう奴らも対して勉強していない。

が、それでもどこか急に政治的な発言をする芸能人に対し違和感があった。

ある日、ふと気がついた。それは、彼ら彼女らの作った作品に政治が見えないからだった。

「あの日、恋に落ちて」だの「青春がどうのこうの」だの「ポンポンポン」だの。そんなんばっかりだ。

勘違いしないでいただきたいのはそういった音楽やドラマ、アニメ作品を否定はしない。しかし、政治色のない作品ばかり作っていたアーティストが急に政治的な発言をしたらファンはそりゃびっくりするだろう。

よく作者の作品は切り離して考えるべきだという。
正論っぽいが、私は違うと思う。

作品は作者と結びつけて考えるべきだ。
作品は作者の人間性、生い立ちがにじみ出るんだよ（呂布カルマ風）

作者と作品

以前、ＲＡＤＷＩＭＰＳの曲で「HINOMARU」という曲があった。右翼的であり、歌詞の血潮という言葉が問題視された。主に左翼から。

作詞をした野田洋次郎はアメリカでの暮らしから日本人アイデンティティに目覚めたという。彼がアメリカでどんな暮らしをしたのかは知らないし、私自身は「血」「日本人だから」という言葉・感覚は好きではない。
が、彼はそう感じたのだろう。だから曲になった。
それ自体を責めることはできない。

椎名林檎が今更、右翼的な歌を出したところで誰も何も思わない。
ラサール石井が、左翼的な舞台をやったところで誰も何も思わない。

断っておくが政治とは単に国会的なことを指しているわけではない。

生き方そのものだ。

日本人鼓舞であれ、世界平和であれ、平等であれ、何であれ。

「あー○○はずっとあんなの歌ってたもんな」と思えないのだ。

そこに大きな違和感がある。

なぜ、作者と作品が一致しないのだろうか。
なぜ、政治・生き方が感じられないのだろうか。

商売だから。

確かにその通りだろう。
しかし、もっと他にもある気がする。

一つは、以前、「日本のコンテンツは少年少女を中心に作られている」という東浩紀の指摘から読み取れるだろう。

私の体感だが、日本の特にアニメ・漫画カルチャーで描かれるのは「高校生世代」が7割以上を占める。
なぜなのかは分からない。
反対に海外の作品はマーベルをはじめ、おっさんが主人公というものも多い。

高校生は政治に関心がない。親の庇護のもとにいる場合がほとんどで、政治と自分を直接結びつけることは難しい。
人の金で生きていてリアルに政治を感じられるはずがない。
もちろん、高校生がこれを恥ずかしく思う必要もない。
高校生なんてバイトと部活とゲームとセックスで頭がいっぱいだ。
そういうもんだ。
高校生の頭の中が政治でいっぱいなんて国のほうがよっぽどやばい。
どこの北朝鮮だ。

逆におっさんおばさんはリアルに自分で金を稼いでいる（ことが多い）わけで、政治は自分と直結している。だから政治的な発言、ある特定の思想に基づくイデオロギーがあっても驚かない。

日本は高校生が主人公でターゲットも高校生だ。なぜだか分からんが、テレビもネットも若い人若い人と念仏のように唱えている。経済的な意味では主人公であるはずのおっさんおばさんが主人公にならない。

なぜかは分からないが、この高校生至上主義が政治的発言への違和感に繋がる。

モラトリアムである高校生、青春を歌っていたアーティストがなぜ急にその世界を出てしまうのか。
政治とは隔離した世界をフィクションにしていた人が現実になるといきなり政治について語り合う。
びっくりすよねそりゃ。
幸せな桃源郷にいたと思ったら戦場に叩き落されたみたいな。
インターンで自己啓発してたら社内の学閥闘争に巻き込まれたみたいな。

反発する側の気持ちもわかるっちゃ分かるんだよ。

最後に。

私は、政治的発言をした芸能人やアーティストの方々の、思想信条を垣間見れる作品が観たいし、聴きたいし、読みたい。

政治的発言は恐れるべきではない。
と同時に政治的な作品も恐れるべきではない。

直接、言葉で語らずとも、彼らほどの才能と能力があれば素晴らしい作品になるだろう。そしてそれは１４０文字で伝わることより、もっと大きな意味を持つと思う。すごいインフルエンサーだよそれ。