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Comme Des Garçons | Fall Winter 2022/2023に寄せて

Comme des garçon 2022/FW を読み解いていく。

日本のファッションに関係するメディアやジャーナリスト(一部を除いて)、まあ随分と簡単な仕事でやっつけてしまっているように見える。伝え手もさることながら、読み手にもそれはそれで問題意識が弱いように思えてならない。若しくはあるが、所謂サイレントマジョリティーとして黙秘することを決め込んでいるのだろうか?自身もそういった過去からの反省から、微力ながらこういった形でテクノロジーを享受しながら、言うべきことを可視化し世に一つの意見として誰かの為になることを願っている。

他メディアアウトレットで散見されるような、ただ見たこと=表面をなぞるだけを可能な限り避け、表層と深層から垣間見えるそのコアにある何かを少しでも掴み取っていくことを試みたい。抽象的な表現が多いが、それはコレクションが着想を得ているであろうインスピレーションに際限が無いように、また受け手側が感じ取り表現をする自由度から来るものであることもご承知頂きたい。

これはあくまでもエッセンスを凝縮した、公開されているコレクションを視聴ながら、順を追って感じ取れた事象、気づき、を乱雑ではあるが、自身の心に響いた通りに率直に書き記したものだ。全体のトーンとそのハイライトを感じ取って貰えると思う。実際にコレクションを現場で見た方、同じようにデジタル配信を視聴した方、または写真による抜粋、文字起こしされたメディアを読んでいる方も、リキャップとして、違った視点としても活用を頂き何かしらヒントになれば嬉しい。

これを基に“考えて”より芯のある推論を述べてもいきたいが、先ずは先述の通り以下を流し見でもよいので拝読頂きたい。特に重要な点を太字とし、後述していく。

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スローモーション。ゆっくりと歩く。
着実に一歩一歩進んで行くこと。
テンションとコンフォート。が共存出来るということ。

抑制、でも自分の心の中にあるもの。
ヘッドピース。マグマのようにゆっくりと流れる感情、ただただゆっくりと、そして熱を帯びて。
頭を冷やすこと、冷静になること、をリマインドしている?

Look 3 / 16 (1*)

民族性。自身のトライブを見つめ直す。脱構築。ディコンストラクション。

影と照明の使い方。これは意識の中?連続性がない、フェードアウト。

夢の続きを見ようとしているよう?または突然にその夢を思い出す瞬間。デジャヴ?

ふつふつと呼び戻る瞬間的な記憶。

形を変えてやってくるその感情。

抽象から具現へ。意識のフォーカスが戻ってくる、睡眠からの覚醒に近いあの感覚。
つまりは今までは夢?曲のソニカルな高揚と共に少しづつ現実に向かい始めている?幻想?との静かな訣別と脱却。

Look 9 / 16 (*2)

装いのムードとしては、着膨れをしたその姿の皮肉さに、強かな逃亡を垣間見る。ありがとうアングロサクソン、これからも程よく良いところは頂きながら、踏み出したこの一歩を踏む締めながら現実という闇に手探りにでも大胆に進んでいくわ!とも聞こえなくもない。

自身の肉体的なエレメント。肌、瞳、髪。
持って生まれたものを享受すること、傍ら望めば軽やかにその重さから逃れることも出来るということの証明。身体の一部分(端部)をアクセサリー化する、またはそう捉える。自己実現の自由さ。もはや、望めば好きなようにまたいつでもその仮面を使い分けることが出来る。

傍ら身体に纏う装いは表層を超えて、よりヒュメーンな部分、すなわち自身の心の有り様を無理余すことなく自然に纏うことが出来る時代に我々は置かれているのだ、という啓示。

Look 13 / 16 (3*)

他者からの目、価値観とはもう既にお別れをしている。またはもうしてしまおう!見ること<見られること<見ようが見まいがもうどうでもよいこと、の自身以外のファクターを超越した一つの到達点

静かなステイトメント。

そしてまた夢の中に帰っていく。まだ意識と現実の狭間に囚われている?まだその時が来ていない?またはその時を選択するのは自分?または時がその“時”を選ぶ?自分の運命とはなにか?翻弄され続け、また振り返れば点と点が線となり、また予知としての近い未来?

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このコレクションのテーマは”Black Rose”であったそうだ。私自身は事前に何もインプットをせずに見た上で感じ取ったエレメントを記述していったが、デザイナーの川久保玲のコメントを引用すると「黒い薔薇のダークな美しさは、私にとって勇気、抵抗、自由を意味する」*4と、簡略に、また解釈の自由度を残すかのように、相変わらずに気持ち良く受け手を突き放してくれる。

大きな視点での私の解釈には、少なくとも私観も含め、このデザイナーの心情をある程度汲み取ることが出来たのではないか。まだ3校目の本記事であるが、前出のものを拝読頂いても分かるように、私は現代が今向かっている先として、脱アングロサクソン(または西洋的価値観、もはやこの言葉さえも古い響きを帯びているが)、また個人主義の讃歌を一つのテーマに掲げて推論を行っている。

彼女が指す、勇気・抵抗・自由とは、究極的には、それは自分自身に対するものとして捉えることで、この考えを様々な外的事象に当て嵌め、自由な解釈を持つことが出来ることではないか?

先述の私なりの解釈にもう少し?具体的に述べるならば、

それは自身の出自と育ち(トライブ・民族性、性格・心のあり様)を俯瞰し、自己をより深く“再”/理解し/続ける(頭をクールに保つこと)こと。またそれを恐れない、逃げないこと。

今までの“当たり前”(封建的価値観、イデオロギー)という幻想から目を覚ます/そうとすること。またそれを装うということで、強かな逃亡が思いがけず成立してしまう今日でもあるということ。あがらうとうことに躊躇いを捨てること。

そして、自身をより深く愛でることから生まれる、揺るぎのない自信。自分の在るが儘を生きる自由を獲得し、それを自己他との共存の中で、相互的に共犯の関係性が成立し始めるということ。


私は一人でも多くの人が自分自身の幸せについて思案することが出来、またその実現が可能な世界を見ていきたいと思う。今回はある一つのコレクションへ寄せた論述であるが、以後他のコレクション、シーズンを超え、また様々な事象を横断しながら見解を発信し続けていきたい。

*4
FASHIOSNAP. (2022, March 8). 勇気、抵抗、自由——コム デ ギャルソン22-23年秋冬コレクションのテーマ「黒い薔薇」の意味. FASHION 注目コレクション. Retrieved September 5, 2022, from https://www.fashionsnap.com/article/cdg-2022aw-show/
a

*1, *2, *3
Vogue . (2022). Look 3/16, 9/16, 13/16. -shows/fall-2022-ready-to-wear/comme-des-garcons/slideshow/collection. photograph, Vogue / Condé Nast. Retrieved September 5, 2022, from https://www.vogue.com/fashion-shows/fall-2022-ready-to-wear/comme-des-garcons#review.

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