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超高齢者が黄疸を発症したときに、著効した漢方薬

こんにちは。
私は本年2月から新しい職場となり、慣れるのに数ヶ月かかってしまいました。
新しい職場は高齢者〜超高齢者が多く、残念ながら老衰(心不全や肺炎を含む)で亡くなる方もおります。反対に超高齢者でもほぼ自力で(抗生剤を投与することなく)、病を克服して退院される方もいます。

今回は超高齢者の黄疸に、漢方が著効した一例を紹介します。

ある早朝に、99歳のおばあちゃんが「嘔吐したものを窒息しかかっている」と救急搬送されました。
救急車が到着したときには窒息症状が取れて、ひとまず落ち着いたところで私が担当で経過観察入院となりました。

その後絶食で点滴をしている分には症状が出ないのですが、ご飯を始めると発熱したり嘔吐したりです。
「これはたまたま嘔吐→窒息で入院となったが、嘔吐を来たす何かしらの原因があるぞ」
と思い検査をしていった結果、
・ご飯を食べるとビリルビン値が上昇する。
・エコーやCTで、総胆管肝内胆管が拡張している(16mm)。
ことが分かりました。
ビリルビンは胆管(胆汁の流れ道)に閉塞するものがあると上がります。例えば結石であったり腫瘍であったりです。

さらに詳しく分かるMRIをしたところ、総胆管に結石がありそうなことが分かりました。
総胆管結石の確定診断並びに治療は、ERCPというものがあります。
太い胃カメラを飲んで胆汁の出口までカメラを進めて、石の存在を確認して取り出します。
私としてはERCPによる精査加療が良いのではと考えましたが、院内カンファレンスでは「超高齢者なので、ERCPをするダメージのリスクの方が高いのでは」とERCPの適応がないという結論になりました。

「ご飯が食べられるようにならなければ、元いた施設に帰れない」ので、私は何か良い治療がないか考えていました。

たまたま見ていたNHKの東洋医学の番組で、「いんちんこうとう」という漢方薬が黄疸に効果があることを知りました。

私は漢方薬が好きで良く処方するのですが、いんちんこうとうを使うのは初めてです。
藁をもすがる思いでいんちんこうとうを院内処方しました(院内にこの漢方薬が採用されてることは、ラッキーでした)。

おばあちゃんはすんなりこの漢方薬を飲んでくれました(漢方薬は苦い、胡散臭いと受け付けない方も多いのです)。
その後恐る恐るご飯を再開すると、嘔気嘔吐なく、発熱も出ませんでした。

もう一度エコーをしたところ、肝内胆管の拡張はなくなり、総胆管拡張も12mmとやや改善していました。

いんちんこうとうを継続して、ご飯も全量食べられるようになり、笑顔で退院していきました。


西洋医学が進化する前はERCPもなく、内服薬もなかったと思います。
それでも症状を良くしたい想いで、漢方薬は生まれ、今でも残っているのだと思います。

毎日アタフタ過ごしていますが、ふと嬉しかったので、投稿しました。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

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