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添付文書ってなに?

前回は医療用医薬品の添付文書の調べ方について説明しました。今回は、添付文書とはどんな文書であるのか、具体的にはどんなことが書いてあるのかについて説明します。

まず添付文書がどんなものかについて。
「医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について(薬生発0611第1号令和3年6月11日)」には、以下のように書かれています。

医療用医薬品の電子化された添付文書(以下「電子添文」という。)は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和35年法律第145号。以下「医薬品医療機器法」という。)第68条の2第2項第1号の規定に基づき、医薬品の適用を受ける患者の安全を確保し適正使用を図るために、医師、歯科医師、薬剤師等の医薬関係者に対して注意事項等情報等の必要な情報を提供する目的で当該医薬品の製造販売業者が作成するものであること。

医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について(薬生発0611第1号令和3年6月11日)

つまり、医薬品を使用する患者が安全に使用できるように、医療従事者に対して必要な情報を提供する文書です。医療従事者向けの文書で患者向けの文書ではないため、専門用語も多く一般の方にとって読みやすい文書ではないと思いますが、どんな医薬品の添付文書でも構成は決まっています。そのため、ご自身が知りたい情報がどのセクションに書かれているかを把握しておけば、比較的機械的に調べることができると思います。
2024年1月25日現在、添付文書の構成は以下のように決まっています(今後変わる可能性はあります)。

記載項目及び記載順序
ア. 作成又は改訂年月
イ. 日本標準商品分類番号
ウ. 承認番号、販売開始年月
エ. 貯法、有効期間
オ. 薬効分類名
カ. 規制区分
キ. 名称

1. 警告
2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)
3. 組成・性状
3.1 組成
3.2 製剤の性状
4. 効能又は効果
5. 効能又は効果に関連する注意
6. 用法及び用量
7. 用法及び用量に関連する注意
8. 重要な基本的注意
9. 特定の背景を有する患者に関する注意
9.1 合併症・既往歴等のある患者
9.2 腎機能障害患者
9.3 肝機能障害患者
9.4 生殖能を有する者
9.5 妊婦
9.6 授乳婦
9.7 小児等
9.8 高齢者
10. 相互作用
10.1 併用禁忌(併用しないこと)
10.2 併用注意(併用に注意すること)
11. 副作用
11.1 重大な副作用
11.2 その他の副作用
12. 臨床検査結果に及ぼす影響
13. 過量投与
14. 適用上の注意
15. その他の注意
15.1 臨床使用に基づく情報
15.2 非臨床試験に基づく情報
16. 薬物動態
16.1 血中濃度
16.2 吸収
16.3 分布
16.4 代謝
16.5 排泄
16.6 特定の背景を有する患者
16.7 薬物相互作用
16.8 その他
17. 臨床成績
17.1 有効性及び安全性に関する試験
17.2 製造販売後調査等
17.3 その他
18. 薬効薬理
18.1 作用機序
19. 有効成分に関する理化学的知見
20. 取扱い上の注意
21. 承認条件
22. 包装
23. 主要文献
24. 文献請求先及び問い合わせ先
25. 保険給付上の注意
26. 製造販売業者等

医療用医薬品の電子化された添付文書の記載要領について(薬生発0611第1号令和3年6月11日)

医薬品を使用するにあたり、何を事前に知っておきたいかは個人の判断基準があると思いますので、私からどれをチェックするべきとは申しませんが、安全に使用いただくためにまず冒頭にある「1. 警告」(記載がない医薬品もあります)、「2. 禁忌(次の患者には投与しないこと)」は確認していただくのが良いと思います。そして、そもそもどんな効果が期待されるものなのかを知るために「4. 効能又は効果」、正しく使っていただくために「6. 用法及び用量」は押さえておくのが良いのではないかと思います。

これまでにどんな副作用が報告されているのかを知りたければ「11. 副作用」を見てみると良いと思います。過去にどれくらいの頻度でどんな副作用が報告されているか、記載されています。ここで一点ご留意いただきたいのは、本項に記載されている副作用の頻度はあくまで過去の報告に基づいた数値であって、ご自身に特定の副作用が起きる確率ではないということです。例えば「1~5%の頻度で食欲不振が報告された」と書いてあったとして、「あなたがこの薬を使用した時に食欲不振が起こる確率は1~5%」という意味ではありません。使用するあなたにどんな副作用が起こりうるかは誰にもわかりません。そのような過去の成績をもつ薬である、という事実が書かれているだけです。その事実をもって、その薬を使いたいと思うかどうかはご自身の判断によるものと思います。

今回は医療用医薬品の情報として最も基本的な文書である、添付文書の内容について紹介しました。医薬品の情報収集、そしてそれに基づく医療の選択にお役立ていただけましたら幸いです。
 
さて、これまで全体的に硬い文章で書いてきましたが、次回以降はもう少しゆるっとした文章も書いていきたいと思います。書いている自分自身が緊張で疲れてきたので(笑)。これまで医薬品業界で働いてきて良かったなと思うこと、自分が日頃考えていることなども共有できたらなと考えています。また、もし質問などあれば可能な範囲でお答えしたいと考えていますので、何かございましたら気軽にコメント欄にご記入ください。

それでは、本日も長文にお付き合いくださり、ありがとうございました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。

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