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鍾離のモチーフ考察[原神]
今回は鍾離のモチーフ考察を行いました。
中国清朝の皇帝や道教の要素がある、岩神に相応しいキャラだと思います。
モンド初期組もそうなのですが、鍾離の考察はかなり難しく、まだまだ掘り下げることができそうなので、今後も考察を継続します。
以下は暫定の考察となります。
名前
原神のほとんどの璃月キャラは道教をモチーフとしています。
鍾離という名前も、中国の道教に登場する鍾離権という仙人からとった名前だと思います。
また、鍾離の呼び名として有名なものに「岩王帝君」があります。
帝君は道教のような神仙思想が関わっているものにおいて、神の尊称のような意味合いがあります。帝君は皇帝の「帝」という字が入っている通り、神々の中の最高位の神を指します。
よく中国の神仙思想が入った物語に○○帝君が出てきます。
鍾離権は多くの神々に先立って生まれた東華帝君という神に、様々な秘法を教わった仙人なので、この2人を合わせた存在が原神の「鍾離」なのでしょうか。
岩柱
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天賦に地心という岩柱を発生させるスキルがありますが、この岩の柱は結構謎で中国の方でもモチーフに悩むようです。
中国語であの岩の柱を岩脊(岩の背骨「脊椎」)と表現しているのですが、もしかしたら第三降臨者の遺骨が七神の神の心となっていることと、関係しているのでしょうか。
英語版を一つヒントにすると、石柱はStone Stele(石碑)ということになります。
確かに形状は石碑に似ています。方形の石碑は世界各地にあるため、とりあえず石碑だと考えても良さそう…?
命の星座
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中国において玉とは、翡翠を意味することが多いです。
その翡翠を使って6つの礼器(璜 琮 壁 圭 璋 琥)を作ったと言われています。
玉を以て六器を作り、
以て天地四方を礼す。
蒼壁を以って天を礼し、
黄琮を以って地を礼し、
青圭を以って東方を礼し、
赤璋を以って南方を礼し、
白琥を以って西方を礼し、
以玄璜を以って北方を礼す。
上の文によれば、六つの方角…空(天)、地、東、南、西、北があります。
この記述が下地となり、鍾離の命の星座が出来上がっています。
中国語の方がモチーフ元がはっきりわかるので、中国語の凸効果名で見ていきます。
1凸 岩者,六合引之為骨
上述の6つの方角を支える骨(おそらく世界を上下に支える背骨)という意味だと思われます。
→鍾離(岩神)は天、地、東西南北を支えるための存在という意味?
岩柱が「骨」に例えられていることと繋がりますね。
2凸 石者,八荒韞玉而明
→鍾離は世界を明るくさせる玉である。
・八荒…世界(国)の八方の果て
・韞玉而明…『文賦』の<石韞玉而山輝>から。
石の中に玉が混ざっているから山が輝くという意味。
3凸 圭璋,暝仍不移其暉
圭と璋は六つの礼器の内の2つで、翡翠の中でも特別貴重なものと言われます。
→圭璋(鍾離)は暗闇の中でもまだ輝く。
4凸 黄琮,破而不奪其堅
5凸 蒼璧,驅之長昭天理
について。
「蒼壁を以って天を礼し、
黄琮を以って地を礼す。」
という周礼の文を参考にすると、
4凸の黄琮は深淵(地)に対する鍾離を表し、
5凸の蒼壁は天理(天)に対する鍾離を表すとも言えます。
4凸の黄琮は地を礼す翡翠の祭器。
そして凸名自体は、『呂氏春秋・誠廉』の「石可破也,而不可奪堅」(石は割れても、その硬さが失われることはない)を意識した文のように見えます。
→ 黄琮(鍾離)が深淵に砕かれても、その堅さは失わない。
5凸の蒼壁は周礼の文にもあった翡翠の祭器。
→ 蒼璧(鍾離)は、天理を明らかにするために動く。
6凸 金玉,禮予天地四方
金玉は宝物の総称らしい。
→金玉(鍾離)は天地、四方(東西南北)への贈り物
まとめると、
1凸
鍾離は天、地、東西南北を支えるための存在(背骨)である。
2凸
鍾離は世界を明るくさせる玉である。
3凸
鍾離は暗闇の中でもまだ輝く。
4凸
深淵に対しても鍾離はその堅さを失わない。
5凸
鍾離は、天理を明らかにするために動く。
6凸
鍾離は天地、四方(東西南北)への贈り物
※補足
5凸6凸辺りから、日英中でそれぞれ意味合いが少し異なります。
英語だと教団の伝令、日本語だと天理を守る、中国語だと天理を明らかにする。
この天理が普通に世界を意味するのか、それとも天理(神の集団)を意味するのかでも話が変わりそうです。多分後者だと思いますが…。
ここの解釈は謎が多いので保留とさせていただきます。
衣装
鍾離の衣装は中国でも西洋風なのではないかと議論があったようです。
私個人の見解となりますが、
中国の服にしては、西洋の服のような要素が多く、
逆に西洋の服にしては中国の服のような要素が多いです。
(つまりどちらとも言えないし、どちらとも言える。)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124932670/picture_pc_828a45ab9777830bbe61d47f6268fb14.png?width=800)
これはモーニングコートを着る時の正装と一致します。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124933697/picture_pc_c97d832924aa39e5978a2a087767f01d.png?width=800)
コート(ローブ)
例えば一番議論があった鍾離の上の服。
西洋のモーニングコートを意識していそうですが、それにしては丈が長く、独特のカットが施された形の裾です。
これは中国の清朝の皇帝服「龍袍(ドラゴンローブ)」を現代風(西洋寄り)にアレンジしたのではないかと思います。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124936263/picture_pc_f438bd2d2699d7e291befee9de842506.png?width=800)
ちょうど「現在の」璃月は全体的に明朝、清朝あたりのモチーフが多いですし、そこの統治者という意味で鍾離が皇帝服を着ていることはおかしくありません。
また、鍾離自身が龍であるというのも影響していますが、中国において歴史的に龍は皇帝を意味してきました。なので、龍袍には名前の通り、龍が描かれています。
また、🔗甘雨の考察で言及しましたが、甘雨(麒麟)は良い統治者(主に皇帝)のもとに現れる瑞獣ですので、鍾離=皇帝だと思います。
この後説明する天賦の単語の中にも、皇帝を意味するものがあります。
(髪型は三つ編みをしてもないし、剃り上げてもないけれど、どことなく清朝の辨髪を意識したような後ろへ結って長すスタイル。)
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また、背中には方勝紋と盤長結を混ぜたような紋様がついています。
方勝紋は西王母の髪飾りから生まれた紋様だそう。(道教)
盤長結は仏の教えを意味する中国の伝統的な紋様です。(仏教)
盤長結は龍袍に描かれることもありました。
例:🔗京都国立博物館の龍袍のページ
同じく吉祥紋(めでたい紋様)とされる雷紋のような模様もあります。
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他にも、鍾離は時折、魯班鎖と呼ばれる立体パズルのような天星を出すことがあります。(中国の伝統的なパズルで、これを解くのは難しいと言われています)
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天星は名前の通り、星を落としてます。隕石です。
元素爆発・天星の記述
「以隕天蒼岩星,昭命理昏暝者。」
蒼天の星岩を落とし、暗間の運命を照らす。
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両肩には甲冑があり、鍾離の武神としての一面もうかがえます。
天賦
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日本語だと出典が分からないものが多すぎるので、中国語の方を参考にします。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/124940241/picture_pc_cac04886c2eb4596af17a6e4da9d25db.png?width=800)
固有天賦・悬岩宸断
宸断(しんだん)とは、皇帝の決断を意味する単語です。このことからも鍾離=皇帝としてデザインされていることがわかります。
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固有天賦・炊金饌玉
炊金饌玉(すいきんせんぎょく)は中国の慣用句です。黄金を炊き、玉を選んで食膳に並べる…つまりとても豪華な食事を意味します。
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固有天賦・晶石命理
命理は易経由来の言葉で、人の運命を表します。
晶石はおそらく鍾離を意味すると思われるので、まとめると鍾離の運命という意味でしょうか。
旧友
花と酒を手に景色を堪能しようとしたが、あの頃とはもう違う。旧友とまた…。
欲买桂花同载酒,只可惜故人何日再见呢
金木犀を買って、酒を持って歩きたいが…旧友が惜しい、いつになったらまた会えるのだろう…。
欲买桂花同载酒,终不似,少年游
金木犀を買い、酒を持って船に乗りたいが、少年の頃のような勇気はもうない。
唐多令の中の劉過の有名な詩が、鍾離のセリフのモチーフとなっています。中国語の故人は旧友という意味なので、死んでいるとは限らないのですが、魔神戦争などで友を亡くし、時代も移り変わり、きっと友も減っていったことでしょう。
鍾離の少し寂しい気持ちが伝わってきますね。
防御の要・璃月港
防御の神ともいえる鍾離ですが、都選びも秀逸でした。魔神戦争に備えて、鍾離は意図的に今の璃月港の守りやすさに目をつけています。
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海と山に囲まれた立地は、敵からの侵入経路が限られており、非常に守りやすいです。
日本だと似たような立地として、鎌倉があげられます。
璃月港を本拠地としたのは、隣に天然の「盾」となってくれる山があるからです。
鍾離先生が璃月を案内する動画でこう言っていました。
「璃月港の西にある天衡山(てんこうざん)は、外敵を防ぐ天然の障壁だ。」
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このことから、意図して鍾離がこの地を選んでいることが分かります。言い換えると、公式がそこの設定を作り込んでいたことが分かります。
歴史上においても、政治の中心地である都をどこにするかは、皇帝や天皇たちのセンスが問われていました。
創龍点睛
鍾離が若陀龍王を作る話である創龍点睛は、
画竜点睛という物語をモチーフにしていました。
南朝梁の宮廷絵師であった張僧繇(ちょうそうよう)が、安楽寺の壁に龍の絵を描こうとし、最後に睛(ひとみ)を書いた瞬間、龍が天に飛んでいったという話が大元です。
※今回の考察はXにて先行公開していたものです。普段モチーフ考察はXにて投稿していますが、これからnoteにもまとめていこうと思います。(🔗HanaのXアカウント)
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