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胡桃のモチーフ考察[原神]

今回は胡桃のモチーフ考察を行いました。胡桃は鍾離と道教の影響を強く受けたキャラです。

実は日本語版で消されていますが、
胡桃の命の星座はかなり詩的な表現をされています。

名前

胡桃は胡が姓、桃が名前です。
つまり、胡桃という名前ではなく、
胡家の桃さんってことです。

しかし二字合わせて胡桃(くるみ)を意味するのは中国でも同じなので、クルミを連想して欲しくてこの名前をつけたのだと思います。

胡桃のPVより
〈ほら、蝶々って胡蝶とも言うでしょう?私と不思議な縁があるの。〉

中国でも蝶々を胡蝶と呼ぶことがあり、胡桃の『胡』はここからつけられたようです。胡蝶は中国において、生死を連想させる存在でもあります。

中国版PVではもっと直接的に名前の由来が胡蝶(蝴蝶)であると言及しています。

〈为什么「引路人」是蝴蝶?你看,蝴蝶也姓胡,胡桃也姓胡〉

(和訳)何故(死後の世界の)案内人は胡蝶なのかって?ほら、蝶の姓は胡、胡桃の姓も胡でしょう?

また、胡桃の命の星座はPapilio Charonti(英語版)となっています。

Papilioはアゲハ蝶、
Charontiはギリシャ神話において死者を冥界に運ぶ渡し守カロンを意味します。

冥界に運ぶ蝶という意味の命の星座なんですね。

桃は中国において桃源郷のようなユートピアや、不死の木、神聖な木を意味します。
中国の方なら神聖な木と聞いて真っ先に桃を思い出すのではないでしょうか。

ちなみに2字合わせた「胡桃」は、「桃」という字が入っていることもあり、桃の木と同じく魔除けの効果があると考えられていました。

中国の諺に、「クルミを手に持っていれば、乾隆帝よりも長い89歳まで生きられる。地獄の王(閻魔)も地獄に呼ぶことが出来ないできない。」

と言われており、死だけではなく生を意味する名前でもあります。

道教の影響

胡桃はPVで道教の『往生印』を結んでいます。
悪霊を遠ざけ、安全に転生することを表す印です。

往生印

胡桃はかなり中国の道教と縁深いキャラです。

誕生日は7月15日。この日を中元と呼びます。この中元という呼び方は道教から来ています。

7月15日の中元は善悪を判別し、罪を赦す地獄の神による贖罪の日とされています。
この日に火を焚いて、自分が犯した罪を懺悔します。

また、胡桃の帽子の前方中央には令牌(札のように見えるもの)がついています。この令牌は道教の儀式で使う道具です。

易経

また、胡桃が被る帽子は、乾坤泰卦帽 (けんこんたいかぼう)といい、儒教の経典でもある易経の影響を受けた名前をつけられています。

易経は結構難しく、私も上手く言い表せないのですが、
森羅万象のあり方(陰陽)を印で示します。

乾は天、坤は地。
泰卦は地天泰(天地の万事が安泰となっている状態)を表すとされています。
→つまり乾坤泰卦帽はすべてが安泰となっている状態を表す。

衣装

服はチャイナドレスのように見えますが、実は違います。これは黒地の唐装と呼ばれる服です。

名前から唐代の服かと思うかもしれませんが、清代の馬褂という服装が変化して唐装になったので、唐代の服装というわけではありません。

胡桃は右腕に赤い紐のブレスレットをつけています。

これは中国において魔除け(悪霊除け)の効果があると言われています。

余談ですが、胡桃のモチーフ武器である護摩の杖も、護摩と名付けられている通り、火を用いて厄災を払う儀式を表しています。実際に胡桃は厄災(霊も含む)を払う儀式をするような演出が何度かありました。

胡桃の帽子には紅い梅の花がついています。梅は中国では縁起の良い花とされ、幸福を意味します。

胡桃の服の裾には、

彼岸花

独特の彼岸花(裏地)と、

菊が左、百合が右

菊と百合らしき模様があります。

彼岸花は中国原産であり、胡桃にとって特に縁が深い花のようです(後で命の星座と絡めて話をします。)
生と死を表す天界の花とも言われます。

菊は中国において昔から愛された名花で、幸運や長寿を意味します。
また、日本でも追悼の意味を表し死者に菊を備えるように、中国でも追悼の意味を持った花です。故人をあの世へ導く花とされているようです。

百合は国によっては死者への手向けの花とされていますが、百合が中国でどういった意味を持つのかはちょっと曖昧です。死者への手向けの花という意見もあるようですが、元々それは外来の意味であるという意見もあるようです。

胡桃は、胡桃、桃、梅、彼岸花、菊、百合のように、植物をかなり意識したキャラクターであることがわかります。

命の星座

日本語だと気がつきにくいですが、
胡桃の命の星座は一つの詩のような表現をされています。

赤团开时斜飞去(1凸)
最不安神晴又复雨(2凸)
逗留采血色(3凸)
伴君眠花房(4凸)
无可奈何燃花作香(5凸)
幽蝶能留一缕芳(6凸)

直訳するとかなり意味不明になるので、私がスーパー意訳しました。
私の解釈がかなり入っています↓

赤い花(彼岸花)の蕾が開くと蝶はひらひらと飛んでいく。(1凸)
最も不安なのは、晴れていても再び雨が降るということだ。(2凸)
血の色(花の蜜)を集めるために蝶は花に留まり、(3凸)
花の家で一緒に寝て、 (4凸)
花をお香として焚き、(5凸)
蝶は一筋の香りを残していくのだ。(6凸)

※補足→ 中国では彼岸花を赤团花と呼ぶことがあるので、1凸の赤团开は彼岸花の開花を意味すると解釈できる…と思います_(:3 」∠)_

さらに、この1凸から6凸までの流れは、人が死んだ時を表すようにも思います。(私の勝手な意見です。)

花とは死者のことで、死出の旅に向かう死者を名残り惜しみ、死者を見送る蝶(胡桃)の情景が思い浮かびました。

胡桃は、元々そういう死者を送る往生堂の人なので…。

命の星座も彼岸蝶座です。(死者を導く蝶。)

胡桃の天賦・蝶導来世
〈胡桃が学んだ秘伝の槍法、その教えの一句目は「槍よ切り開け黄泉の道、蝶よ引き寄せ来世の橋。」〉

余談・胡桃の歌

あくまで私が勝手に類似性を見つけた『説』ですが、胡桃がよく歌っている童謡は、魔神任務カリベルトの伏線だったかもしれないという余談も載せておきます。

胡桃がよく歌っている「ヒルチャールのお兄さんが病気になった♪」は、
中国では有名な兎の恐怖の童謡だそうですが、
改めて中国語の歌詞を見てみます。

〈胡桃の童謡〉
ヒルチャールのお兄さんが病気になった♪…ヒルチャールのお姉さんが看病して♪…ヒルチャールのお兄さんが薬を飲んでも治らない。

〈元の童謡の歌詞を私なりに訳しました〉
大兔子病了,
長子の兎が病気になったら

二兔子瞧,
2番目の兎が看病をして、

三兔子买药,
3番目の兎が薬を買い、

四兔子熬,
4番目の兎が(薬を?)煎じて、

五兔子莫名死掉,
5番目の兎が原因不明の死をむかえ、

六兔子抬,
6番目の兎が運び、

七兔子闷着头挖坑,
7番目の兎が頭を傾かせて穴を掘り、

八兔子埋,
8番目の兎が(5番目兎の遺体を)埋める。

幽暗森林小小墓碑,
暗い森の中の小さな墓石は、

是兔子冰冷的尸骸,
冷たい兎の死骸だ。

悲鸣喊叫早已不在,
悲鳴や叫び声はとうの昔に消えてしまった。

太阳慢慢爬了出来,
太陽がゆっくりと昇ってきて、

九兔子在地上悲哀,
9番目のうさぎは地上で悲しんでいる。

十兔子问它为什么?
10番目の兎が悲しむ理由を尋ねました。

九兔子说,
9番目の兎はこう言います。

五兔子它一去不回来
5番目の兎は二度と帰ってこない。

高高地抬,
高々と持ち上げて、

深深地埋,
深々と埋めて、

别让五兔子再爬出来
5番目の兎が地を這い出てくるようなことはもうしないで。

〈解釈〉
長子の兎が病を患ったのに、亡くなったのが5番目の兎というのは、皮肉な話だと思います。年長ほど優先される。
そして5番目の兎が墓から這い出てくるというのは、復讐されるような酷いことをもうしないでという意味でしょうか。

ヒルチャールが呪われていて簡単になおすことが出来ないのはカリベルトで語られていました。

不死の呪いにかかっているコロタールは、
荒野の呪いにかかっているカリベルトをなんとか薬で治そうとしていましたが…。

ちなみに、魔神任務カリベルトの最後には、埋められた遺骨が出てきました。

コロタールはカリベルトに薬を飲ませようとしていましたが、亡くなったのはコロタールの方でした。
(呪いが解けたのはコロタールだった。カリベルトの呪いがどうなったかは明確には分からず。)

まるで兎の童謡で恐れられていたことが起きてしまったかのように…。


と、余談も入れましたが、胡桃の考察はなかなか楽しかったです。命の星座の詩的な部分が、日本語版で感じられなくなってしまったのが少しだけ残念です。

その分、今回の考察でみなさんにその良さが伝わっていたら嬉しいです。これからも胡桃が多くの方に愛されますように。

※今回の考察はXにて先行公開していたものです。普段モチーフ考察はXにて投稿していますが、これからnoteにもまとめていこうと思います。(HanaのXアカウント)

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