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雷電将軍のモチーフ考察[原神]

今回は雷電将軍のモチーフ考察を行いました。
雷電将軍が稲妻において「禍(わざわい)」の神になる理由として、日本の風土や歴史が関係していると思います。

・〈〉はゲーム内記述を引用した文。
・話の都合上、「影」と「雷電将軍」を分けて言及すると非常にややこしくなるので、今回は統一させてください。

ヤマタノオロチ伝説

一番有名なモチーフはヤマタノオロチ伝説だと思います。
日本神話のスサノオという英雄が雷電将軍側、
日本の歴史上、朝廷に征服されて言った民族をオロバシ側として、話が展開されています。

稲妻にはたたら砂があります。
この「たたら砂」のモチーフは明言されていませんが、出雲(現在の島根県)の中世から続くたたらの里をモデルにしていると言われています。
そこにさらに九州の要素も足しているようです。
たたら砂=九州+出雲

日本史を習った方の中には、「出雲国風土記」を聞いたことがある人も、いるのではないでしょうか。
出雲国風土記は聖武天皇に奏上された、神話の要素も持ち合わせる風土記です。

この風土記には、出雲国と、スサノオの関係性を匂わせる記述があります。

出雲国風土記の記述から、
スサノオがヤマタノオロチ(八岐大蛇)を退治した物語は、
天皇家が出雲国の斐伊川(=オロチ)らへんの鉄産地を平定したことを意味するという説があるんです。

スサノオは八岐大蛇の中から、草薙の剣を見つけるんですが、これは川の流域で鉄が取れた話が元となっていると言われています。
(原神では、オロバシが斬られた隙間は現在川となっています。)

この草薙の剣は三種の神器として、天皇家の皇位継承の証に利用されていくこととなります。

この草薙の剣は、原神では雷電将軍のモチーフ武器、草薙の稲光として登場しますね。

ちなみに、稲妻でオロバシが死んだ場所の近くにある名椎の浜の名椎(ナヅチ)は、
八岐大蛇伝説に出てくるクシナダヒメの親であるアシナヅチ・テナヅチのことで、彼らは出雲国の肥河の上流に住んでいたとされています。
名椎の浜周辺も出雲国モチーフだとわかります。

禍(わざわい)の神

★通常:御建鳴神主尊
雷電将軍の別名・御建鳴神主尊(みたけなるかみ)は、
日本神話における雷神かつ剣神である建御雷神(たけみかづち)をモチーフとした名前です。

日本では鳴神も雷神を意味するので、ほぼ同じ意味となります。

★ボス戦:禍津御建鳴神命
雷電将軍のボス戦の姿は「禍津御建鳴神命」(まがつみたけなるかみのみこと)と呼ばれます。

厳密には雷電影自身では無いのですが、「過去の自分(雷電自身)」を投影したものなので、ほぼ同じ存在です。

「禍津」と名前についていますが、これは災い(災禍)をもたらす御建鳴神命と言う意味。

補足:主尊の「尊」も「命」も神を意味する「みこと」という字。

後述しますが、
命の星座の悪曜や凶将という表記と同様、雷電将軍が災いの源となったことを言いたいのだと思われます。

千手千眼観音モチーフ

神変·悪曜開眼(元素スキル)説明文

〈「手眼」とは、偉大なる神通者が見るものすべてを支配することを指している。〉
〈雷神は凶星の手眼を操り、眷属に加護を与え、敵に雷罰を下すことができる。〉

※ 補足:悪曜、凶将ともに凶星を意味します。神通力は菩薩が持つ力です。

仏教において、
千の手を持つ菩薩を千手観音といい、
その千手観音は手のひらに瞳を持つと言われています(千手千眼)。
それを手眼と呼びます。

この菩薩は右手に剣(雷電将軍も右手に剣を持っている)、
左手に三鈷(金剛杵)を持ちます。

ボス戦中の雷電将軍は悪曜三鈷の破壊波を放ち、(千本もないですが)目がついた複数の手を操っています。

また、千手千眼観音は
インド神話のヴィシュヌ神やシヴァ神から千手の要素を受け継ぎ、
雷を象徴するインドラ神から千眼の要素を受け継いでいます。

突破素材の宝石は七種それぞれインド神話の名前がつけられているのですが、
雷神の宝石の英語バージョンがインドラの持つヴァジュラVajrada(金剛杵)なのも、
千手千眼観音をモチーフとしているからだと思います。

雷電将軍ボス戦で悪曜三鈷(金剛杵)を出して「千手の戒め」らしきセリフを言っています。

命の星座


★1凸悪曜の呪詛
悪曜とは、
平安時代初期に日本にもたらされた、密教の宿曜道(占星術)における、悪い巡り合わせの星。不運や災難を意味する。

雷電将軍関係のテキストにはこの「悪曜」が沢山出てきます。
「悪曜影向天魔状態」「雷罰悪曜の眼」「悪曜開眼」「悪曜三鈷」など。

天魔…第六天魔王波旬という仏教における悪魔

三鈷…密教において金剛杵(こんごうしょ)という金属製の仏具。

神話において神が持つ武器。
実際、雷電将軍のボス戦で悪曜三鈷の破壊波という攻撃を避けた際、「不壊の金剛」というアチーブを獲得出来ます。

▶︎深淵からの災厄により、雷電自身も災厄となっていく序盤を表すみたいです。


★2凸 斬鈇断金
斬鈇…鉄をも切ると言われる日本刀「斬鉄剣」を表す。

断金…金を断ち切る、という意味から転じて、易経において金を断ち切るほどの友情を意味する。
(余談:璃月キャラがよく易経をモチーフにしています。)

▶︎仲の良い存在たちを亡くしたときのことを意味しているのかもしれないです。

★3凸 眞影旧事
眞影(真影)…鏡のようにうつしだされたもの。
▶︎双子の魔神の名前の由来っぽい。

旧事…昔あったこと。
▶︎つまり眞影旧事とは双子の魔神の間に昔あった出来事を仄めかしているようです。

★4凸 常道への熱い
▶︎常道は不変の真理を意味する言葉である。つまり永遠という「常道」を目指し始めたことを意味すると思われます。


★5凸 凶将の顕現
凶将…陰陽師の占星術に登場する十二天将(鬼神)の内、吉将ではなく凶将の方。
十二天将とは、西洋占星術で言うところの黄道十二宮にあたる。
悪曜同様、占星術における厄災の星や星座を意味することがある。

▶︎ ボス戦の雷電が凶将の手眼を落とすため、凶将は、永遠のために民の本当の願いを無視した道へと進む雷電を表すと思われます。

〈彼女の答えは「永遠」。「永遠」のみが全てのものを維持し、稲妻を不滅の国にすることができるのだ。
「ならば、全てがまだ美しいうちに止めましょう…このまま…永遠へと。」〉


★6凸 願いの代行者
雷電将軍は「諸願百目の輪」というものを背負っています。

この輪の見た目は、雷神が持つ雷鼓がモチーフです。

雷鼓には本来、雷を意味する三つ巴が描かれています。
これは雷電の紋様として、ゲーム内で見つけることが出来ます。

諸願…神仏に人々が願うこと。

目狩り令によって人々の神の目が集められていましたが、最終的にそれが人々の願いとして雷電を目覚めさせるきっかけとなりました。

▶︎旅人と出会い、人々の本当の願いに気がついた雷電。

雷電将軍は自身の人形にこう言われてしまいます。

〈「あなたが心に決めた永遠は、人々の無数の願いによって揺らいでしまいました。ならば、あなたは既に私の敵です。」〉

人々の願いによって、自身の追い求めた永遠の意味を考え直すようになりました。

〈願いがひときわ強く輝いた時、神はその者に眼差しを送る〉

〈汝の臣民が必要としているのは、汝の約束などではなく、汝の「眼差し」(=神の目)じゃ。〉

つまり、

災厄が訪れ(1凸)、

仲のいい者たちや片割れを失い(2凸3凸)、

永遠のために民の心や願いを置き去りにして凶将となってしまった雷電将軍(厳密には影)(4凸5凸)は、

旅人の出会いで自身の本来あるべき姿に気がつく(6凸)

ということだと思います。

禍となった理由

一時的にでも厄災の神になったことをネガティブに捉える方がいないように補足しておきます。
雷電将軍が厄災を背負うようになったのは、恐らく日本の文化が理由です。

他の国(とくにヨーロッパ)だと、厄災はむしろ悪として捉えられるのですが、
日本では厄災はむしろ神様あるあるなんです。

例えば、菅原道真は大宰府に左遷されたあと、自分を陥れたものたちを呪う怨霊となり、雷を落としたと言われています。道真はその後、雷神や学問の神様として祀られるようになりました。

特に日本で象徴的な「雷神」は厄災の神である一方、私たちを守る神として祀られる大切な存在です。雷神は日本で恐れられる神であると共に、とても愛された神でもあります。

風神雷神、特に雷神に関する逸話は日本に多いんです。補足で紹介した話以外にも、雷神が祀られたものとして、浅草の雷門とか誰もが知っている象徴的なものだと思います。
(雷神は罰(厄災)として雷を落とす存在であると共に、風水害から民を守る存在です。厄災と守護の両方の役割を持ちます。)

そこだけ理解していただきたいです

衣装

眞が松と藤をモチーフとしたキャラなのに対し、
影は桜と朝顔をモチーフとしたキャラです。

顕著なのは、眞のシーンでは松である木が、池に映る影のシーンでは桜に変わっていることです。

どの植物も日本の古典的植物であり、千年以上昔から日本で愛されてきました。

中でも、松と藤という組み合わせは平安時代から人気の組み合わせです。

松と藤

特に枕草子で
「色あひふかく花房ながく咲き
たる藤の花の松にかかりたる」
と書かれているように、松にかかる藤は鑑賞の定番です。

雷電影は元々、桔梗咲き朝顔の髪飾りしかしていませんでした。

眞の死後、眞の扇の髪飾り(を少しアレンジしたもの)もつけるようになりました。

〈すべてが落ち着いた後、浄土から取り出した小さな髪飾り。

一念は万劫の終わりであり、時間を超えた想いと言うのは必ず存在する。
百千万劫に渡る眞の想いは、ちゃんと届いただろうか。〉

宵宮のモチーフ考察の時と同じく、帯に飾り紐をしています。
服装(特に振袖)は朝顔と桜のような紋様が散りばめられています。

手元に注目して頂きたいのですが手甲をしています。

武芸における防具の一種です。アジア系のキャラ(スメール、璃月、稲妻)は良くしています。

まとめ

他のキャラのモチーフに比べて、やはり日本のかなり昔の歴史や神話をモチーフとしています。
様々な元素がある中で、日本を「雷」にしたのは、本当に英断だと思います。日本独特の文化がつまった雷電将軍が、これからも多くの方に愛されますように。

※今回の考察はXにて先行公開していたものです。普段モチーフ考察はXにて投稿していますが、これからnoteにもまとめていこうと思います。(HanaのXアカウント)

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