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狼たちの反逆の歌[原神]

今回は、原神内の狼に関係する記載を、私なりの考察や解釈をまぜてまとめてみました。

裏切られた狼

かつてこのテイワットに、世界樹を信仰する時代があった。
天の使者(天使)は人々に知恵を与え、
時には司祭が秘境の白銀の樹(世界樹の1部)に祈るという祭祀を行い、人々は繁栄を極めた。

しかし、ある時天から釘が振り落ちてきて、世界樹は砕かれた。
人々に知恵を与えた天使、人々を導いた祭祀、そして信徒である多くの人々は皆呪われた。

知恵を与える天の使い

ここで少し物語の視点を変えましょう。

かつて狼たちは、神に裏切られ、自分たちを生み出した母である月(もしくは世界樹)を失った。

この裏切りにより、狼が住んでいた土地は呪われることになった。
大地は荒原となり、人は魔物と化し、
神々(天の使者)は仙霊と化し、
狼はその中を彷徨った。

※狼の魂を受け継いだ者、狼へと「夢の中で」変化した者、狼という運命を引き継いだ神などを「狼」と呼ぶようです。原神世界の狼は、純粋な動物を指すことがあまりないように思います。

※天は月を砕いたという風に原神内で言われており、さらに天は世界樹も砕いています。
このことから恐らく、月は世界樹に関係する者をさす呼び名であると考えています。
ちなみに月が狼の母であるとすると、恋人である太陽or北極星が父であるということになりそう。

1匹の王狼は部族を率いて、荒原を彷徨い続けた。

かつて「信じていた神」を失い、神なき世界を彷徨うという意味ではヒルチャールたちと同じようなものだった。

過酷な荒原を彷徨ううちに、仲間はどんどんいなくなり、王狼のみが生き残った。

王狼が老いて、すでに廃墟となっている宮殿(恐らく月が昔居た宮殿)に立ち寄った時、悲しげな詩が聴こえてきた。

※ちなみに、ヒルチャールたちは火や太陽を信仰しており、拠点に太陽の絵が描かれています。

ヒルチャールの説明には「荒野をさ迷っている」という伏線があり、この設定は狼と同じです。

荒野や荒原は、原神内では神がいない土地(多分、自分たちにとっての神がいない土地)を意味すると書かれています。

原神の書籍「酔っぱらいの逸話」より

歌っていたのは少女の姿をした仙霊だった。
最初は神を失った人間のための歌だったものが、今では神を失った仙霊のための歌へと変化したのだと言う。
その後、狼と仙霊の少女は、ともに歌った。

※ともに歌うというのは、過去の記憶を引き継ぐということの例えだろうと推察できます。
この後「狼」と「仙霊の少女」は共に協力するようになりました。
1部の盲目な神々が行った、残酷な仕打ちを忘れないように。

実は今でも狼たちは忘れていない。
月を砕いた天理の残酷さを。
世界が狼を裏切ったことを。
狼の末裔たちは言う
「我はかつて世界に裏切られ、傷を負った狼」
「我らは新たな世界を創造する、誰も裏切ることのない世界を」
「我らはしばし月のない夜を歩いている」

冬極の白星のストーリー
淑女のBGMの歌詞

人を育てる狼

アンドリアスは太古の魔神の力を引き継いだ、記憶の残滓(「魂」)である。
恐らく引き継いだ力は元々は「風」であった。

彼は風の王となり、人々を導こうと、
暴君デカラビアンに挑んだが、
彼は自信が持つもう1つの力(氷)が、生命を奪うのだと気づき、風の王となることを諦めた。

※アンドリアスが当時の「風の王」を倒して、
自らが風の王になろうとしている点から見ても、
風こそが本来の彼の力だったと推察できます。
ということは、どこかで氷の力を手に入れたはずです。
私は、自らを狼と名乗るファトゥスもそうですが、氷の力は恐らく寒天の釘が月や世界樹を砕いたことに関係する能力なのではないかと想像しています。

アンドリアス自身が欲しがった力だとは思えないことから、氷の力は彼に与えられた「呪い」なのかもしれません。

※ちなみに当時の風の王デカラビアンは、民を守るために暴君となっています。彼自身も神の性質上、人間を守りたいという本能があったそうです。
(淵下宮でも語られていましたが、魔神は自分を信じるものたちを守ろうとする本能があります。)

アンドリアスは人間が嫌いだと言いながらも、
捨て子などを拾って育てる優しさがあり、根本的には優しい魔神であった。
この後、アンドリアスは自らの力を大地へと流し、魂の残滓がこの土地を守ることになった。

見捨てられないアンドリアス
「ルピカ」…運命の家族

この捨て子を拾って育てるという出来事は、
かつてテイワットにあったレマ共和国の建国神話の伏線となっています。

狼が育てた双子

ある雌狼が人の双子を育て、
狼と人が住む「家」は「狼の洞=ルペカ」と呼ばれ、
テイワット世界の「ルピカLupical」となりました。

この話はフィッシュルのモチーフ武器・幽夜のワルツのストーリーにもあります。

「少年たちの"怒り"」→ファトゥスやアビスが天理に対して対抗する力を「怒り」と呼びます。

ローマの建国神話

双子を育てた狼の話は、私たちの世界の「ローマ」の建国神話がモチーフです。

〈ローマ帝国の建国神話〉
アルバ・ロンガの王アムーリウスは、自身の王位を奪われたくないという理由から、親戚であり、まだ生まれたばかりの赤子だった双子のロームルスとレムスを川に流すように命じた。

ロームスとレムスは、川に流されたが、いちじくの木がある丘(パラティウム)に行きついた。そこで狼に拾われ、すくすく育つ。

やがて大人になった双子は、アムーリウスに復讐し、王国を奪還した。

しかし、今度は、双子の間で争いが起きた。王国をどこに建てるかで意見が割れたのだ。兄は自分達が救われたパラティウムに王国を建てたいといい、弟は他の場所がいいと言った。

最終的に弟が殺され、兄の要望が通った。王国が建てられた丘はパラティヌスという都市になった。

この物語は、幽夜のワルツのストーリーに非常によく似た形で記述されています。

「時の木に立つ壮大で偉大なレマ共和国の枝は、やがて切り落とされ、狼の双子のもう一人に国を明け渡すだろう。」

時の木はおそらく世界樹を指していると思います。世界樹のモチーフは山ほどありますが、そのうちの一つが、キリスト教の知恵の樹であり、知恵の樹になる禁断の果実はいちじくだったという説があります。(林檎のパターンといちじくのパターンがあります)

つまりいちじくの木=世界樹=時の木ということになり、いちじくの木がある丘の上にできたローマ帝国は、時の木の上にあるレマ共和国と一致します。

(兄はロムルスRomulus、弟はレムスRemus。
ワルツのストーリーにはレマReman共和国と書いてあるが、これはローマRomaと死んだ弟Remuをちょっと混ぜてると思われます。)

ローマ神話では兄が王国を作り、弟が死にますが、幽夜のワルツでは「狼の双子のもう1人に国を明け渡す」ことになっています。

原神では実際に兄ではなく弟がレマ共和国ではなくレムリアという古代国家を作り上げました。

おそらくモチーフ神話通り、兄が王国を支配した後、なぜか弟に王国が明け渡されたような気がします(推測です)。

双子の父と母に関してですが…
父親は軍神マールス(ローマ神話)と言われています。ギリシャ神話ではアレスとされる神でもあります。
母親はウェスタの乙女(ウェスタの巫女)であるレア・シルウィアです。

このシルウィアは森の女神とも言われている他、
イリアという呼ばれ方もします。
このレア・シルウィア、トロイア戦争で戦った半神の英雄アイネアースの娘です。

淵下宮や金リンゴのモチーフになっている「トロイア戦争」のあった地域の出身者の可能性が高い人物と考えられます。

話がだいぶそれましたが、ルペカ(ルピカ)の話に戻ります。ルペカLupercalとは、ローマの丘の洞窟のことで、オオカミにより双子はここで育ちました。

ローマの「ルペカ」

ローマは、様々な形に変遷し、民族は異なりますが後の神聖ローマ帝国に繋がります。

つまり、レマ共和国(ローマモチーフ)の技術は、カーンルイア(神聖ローマ帝国=ドイツ)に繋がると考えられます。

その伏線が、同じくドイツモチーフのモンドやフォンテーヌにあるという状態です。

ファトゥスの由来

ファトゥスが「世界に裏切られた狼」と関係がある組織であることは冬極の白星からわかります。

ファデュイfatuiもしくはファトゥスfatuusはラテン語の「愚者」を意味すると言うのが一般的な解釈です。

ただ私はfatuusはダブルミーニング(2つ意味を持つ)ではないかと思います。

愚者と、
もうひとつは双子の狼を見つけた、双子の養い親ファウストゥルス「Faustulus」=fatuusという意味。

これはそこまで根拠がある訳では無いので、
あくまで1つの可能性として頭の隅に置いて下さい…。

アンドリアスも狼の記憶の残滓だし、
ファトゥスたちも狼の家族「ルピカ」の成れの果てなのかもしれません。

<参考資料>
酔っぱらいの逸話
竹林月夜
冬極の白星
幽夜のワルツ
凛風奔狼シリーズ

余談・ローマに関する伏線

ドゥロクトゥルフトの寝返り

幽夜のワルツのストーリーに登場する。


ドゥロクトゥルフトはおそらくロンゴバルド族の英雄ドゥロクトゥルフトのことです。
彼は攻撃していたローマという都市に惚れ、逆にローマの味方になって戦いました。

ということは、ローマがレマ共和国のモチーフだとすれば、レマ共和国側が「世界の獣」である何かを抱え込んでいた可能性があります。

ローマとモンド

フォンテーヌにレムリアがあったと言われており、実際フォンテーヌはローマモチーフのものがたくさん存在します。
ローマ=フォンテーヌだと思う人が多そうですが、実はモンドにもローマ要素があります。

レマ共和国は恐らく、共和政ローマ(後に帝国へとつながる)をモチーフにしており、
共和政ローマ時代は剣闘士が円形闘技場で命をかけて戦っていました。

モンドには貴族時代に剣闘士(バネッサとか)がいましたが、レマ共和国はもっと古い時代だと思われます。

モンドの千風の神殿は統一文明時代の遺跡らしい作りをしていますが、神殿という名前なのにどう見ても円形闘技場(コロッセウム)です。

剣闘士を閉じ込める檻
剣闘士の戦いを眺める観客席
観客席からみると、戦う舞台に遺跡守衛がいる。遺跡守衛は統一文明やカーンルイア関係の遺跡によくいます。

この千風の神殿が建てられたのはおそらくモンドよりも前の文明の時代であり、模様や建物の構造が統一文明のものと合致します。

そしてレマ共和国のモチーフである共和政ローマの時代が、剣闘士が活躍していた時代なので、今のモンドの地域にレマ共和国の一部が存在していたという事だと思われます。
(かの有名なスパルタクスもそれくらいの時代の人物です)

モンドの貴族時代は、レマ共和国の遊びを真似したのだと思います。そこに巻き込まれたのがヴァネッサでしょうか。

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