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床面の「汚さ」の実態①

ルミテスター(キッコーマン)による「ATPふき取り検査」が隠れダストの測定に有効だということは,前回の記事でご紹介しました.さらにWhizの清掃機能及び室内空間に及ぼす影響を評価するため,複数の地点において定点測定を行ないました.

ここでは,床面のATP測定値とダスト量(”隠れダスト”を含む)の関係についてみていきたいと思います.

同じような床面でも「汚さ」「綺麗さ」の状況は様々

今回,2019年12月~2020年3月までに東京都内を中心とした首都圏に立地する以下の4施設5地点にて定点測定を行ないました.5地点とも使用用途は様々ですが,基本的には人が出入りするオフィス内の空間です.床面はいずれもタイルカーペット,土足での利用でした.以下に測定箇所5地点の詳細と,Whizで清掃を開始する前のATPふき取り検査の測定結果を示します.

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(1)はA施設内にあり,展示室としての役割がメインですがごく少人数用の打合せスペースも併設されています.清掃を実施した期間中における展示スペースの閲覧利用はなく,人の出入りはごく限られたものでした.

同じくA施設内の(2)は,階段・トイレ・給湯室に繋がる共用廊下で,日中の人の出入りは頻繁です.

(3)はBビル内の従業員200人ほどを収容するオフィス空間内に設けられた,共用スペースの前の通路になります.昼食時の利用の他,打合せや休憩所として利用されるため一定の人通りがあります.

Cビルの(4)は従業員50人ほどを収容するオフィス空間の出入口付近の通路です.トイレ・給湯室・エレベーターホールがこのオフィス空間の外にあり,自販機も出入口側にあるため一定数の人通りがあります.

(5)はD施設内の共用廊下であり,この奥には喫煙室もあるため人の出入りは頻繁です.

このように使用用途こそ違いがありますが,(1)以外は測定期間中にも頻繁に人の出入りがあるような空間となっています.しかし表の通り床面の測定値は約1,000RLU~10,000RLUと様々です.

前回の記事で,一般的なオフィス床面の清掃前ATPの平均値は6,200RLU程度とありましたから,今回の測定箇所はもとから比較的十分に清掃がなされていると言えますね.もちろんこの平均値を超えていた箇所が「見るからにものすごく不潔だった」ということは全くなく,見た目は清掃の行き届いたクリーンな印象でした.通常清掃での“隠れダスト”の除去がいかに難しいかを,特に痛感する場所でした.

もちろん,数値の差には使用用途の違いや清掃頻度・方法,測定したタイミングにもよるかと思います.しかしどの地点も同じようにオフィスで用いられる一般的なタイルカーペットを敷いているのに,この数値のばらつきは面白いですね.

ATP測定値とダスト量の関係

その後,上記5地点においてWhizによる清掃を行いました.一度の清掃でWhizを1~2回稼働し,これを 1日の同じ時間帯に1清掃もしくは2清掃, 5~6日間続けて行いました.ちなみに,Whiz清掃中の吸引の強さはノーマルモードに設定しています.連日の清掃終了後,Whizの紙パックを取り外し,紙パック内に回収されたダストの量を量りました.

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この紙パック内に回収されたダストの数値を,1測定=10回(Whizを1清掃で2回稼働×5日間)使用した場合の100㎡当たりの回収ダスト量に換算しました.この回収ダスト量と清掃前の床面のATP測定値の関係を示したものが下図になります.

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清掃前床面ATP測定値と回収ダスト量の関係

この図から,以下のことが読み取れます.

・清掃前のATP測定値が低いと,清掃後に回収されたダスト量は少ない.
・清掃前のATP測定値が高いほど,清掃後に回収されるダスト量が多い.
・清掃前のATP測定値(床面)と清掃後に回収されたダスト量には相関関係にある.


つまり,ATP測定値が高ければ高いほど床面はダストが多く存在している=汚染されており,清掃後のATP測定値との差が大きいほど,清掃効果がより高いということが分かります.

著者プロフィール

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谷口 惠梨
株式会社熊谷組 技術本部 技術研究所 循環工学研究室
株式会社熊谷組Webサイト:https://www.kumagaigumi.co.jp/

前職の地場コンでは河川・山岳土木の現場にて施工管理として従事.
2018.4~転職・現職へ.バイオプロセスによるCO2有効利用(CCU)技術開発や微生物機能を利用した地盤改良技術開発など循環型持続的社会実現のための基盤技術についての研究開発に携わっている.他にも室内浮遊菌評価手法に関する研究開発に取組んでおり,その一環としてWhizの清掃機能に関する評価について,技術的・学術的に協力している.