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原宿 1980 夏_33

  No. 33 oclok

フライデーは老舗のオールディーズライブハウス、ケントスのデザイナーが次に手掛けたライブハウスらしい。
そういえばまだ六本木のケントスがちっちゃなビルの地下でお店を始めた頃バッチリきめて螺旋階段を降りていったらいきなり店員に止められて入店拒否されたことがあった
その後のケントスが全国的に店舗を増やせていけたのは
そういうオレ達のようなリーゼントでガンガン踊るようなヤツらを入店させないことで
一般のお客様を大切にしてきたからだと思う。
お店を経営するというのはそういうことなんですね。
そうだ壁に絵を描きにいかなくちゃ。 それ〜!
アクリル絵の具を調達して
フライデーへと向かった。
磯原さんと待ち合わせして
お店を開けてもらいスタンバイオッケー。お店のヤスエちゃんがお手伝いしてくれる。
さてと、と壁に近づき手で触れて、え〜!と絶句した。
なんじゃーこれは、、、。
壁がボッコボコじゃないですかあ〜。
ぜんぜん気づかなかった。
下描きどころか絵の具で線がまったく引くことができない
超想定外!
あせって振り向くとヤスエちゃんが笑ってる。
ついでにオレも苦笑い、ハハ
もうこれはイッバツ書きで絵の具を壁に埋め込んでいくしかない。
あとはハートと勢いと気合いしかない。
成るように成れだハハハ。
とりあえず描くのは50年代のハリウッドの女優さんとロックンロールのパイオニア、
ビル・ヘイリーと決めた。
ひたすら絵の具を壁に埋め込んでいく。
とにかく少しでも全体のディテールが見えてこないと不安に押し潰されそうだ。
オレにもう少し計画性があったらこんなことにはなってないんだけれど、トホホホ……
勢いだけは誰にも負けないんだけどそそっかし過ぎだね。
まあオレの個性ということで見逃してくれよ〜。
椅子も脚立もないからオレが背伸びした所が絵の頭の部分に必然的になる。
これは当たり前ハハハ。
後ろで見ているヤスエちゃんにこの状況を気づかれないように余裕を装い描いてゆく。
あいや埋め込んでゆく。
だいじょぶかオレ。


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