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原宿 1980 夏_34

 

No. 34 oclok


ヤスエちゃんが昼メシに行こうと横浜中華街に連れていってくれた。
お店の人とかバンドのメンバーの行きつけらしく慶華飯店のチャーシュー飯に海老ワンタンがオススメらしい。
ほんとだ、こりゃ上手い!
後々に横山剣さんが自伝の本でこの店とこのメニューのことを書いてました。
よしこれで午後も頑張るぞ。
夕方頃になるとお客さんが作業するオレの後ろの階段をのぼりお店へ入ってゆく。
そして程良くしてBBSの演奏がはじまった。
う〜んさすがブロ、ソツがなく普通に上手い。
羨ましいなあ。
オレも早くバンドやりたいな今思えばロックンロールをききながら壁に絵を描くなんて特上寿司と特上ウナギを一緒に食ってるようなものだった休憩がてら軽くツイストを踊ったりして。
ヤスエちゃんが笑ってた。
余談ですがBBSのリードギターの子とハマレンのチアキちゃんはその後付き合って結婚したらしい。
バンドもやめてチアキちゃんのお父さんがやってる電気屋さんを継いだらしい。
わからないもんだね人生は。
それから何度か通いなんとかサマになってきた。


そしてある日のこといつものように絵を描いていると後ろで見ていたヤスエちゃんが小声で、
 あのさぁ、下のスミのほうでいいからちっちゃくヤスエって書いてくれない。
えっ、と振り返ると思い詰めた顔を無理に笑い顔に変え
 冗談、冗談よ。
と力無く笑った。
なんかすごく気になった。
その日帰るときヤスエちゃんにまた来週来るから水変えとか手伝ってね、と言うといつも明るくオッケーと言うのに
笑ったまま返事をしなかった
なんかやな予感がした。
それから数日後、夜仕事帰りにウォークマンを聞こうと、スイッチを入れようとしたら
何度やっても動かない、変だな壊れたかなと思いながら
アパートへ帰った。
部屋で横になっていると、
12時近くに電話がなった。
電話を取るとマブダチのアンベからだった。
興奮しながら
 たったいへんだよ、落ち着いて聞いてくれ。
あのさ、あのさあヤスエちゃんが死んじゃったんだ。
家で自殺して死んじゃったんだとハマレンのメグミちゃんから電話があって、、、。
えっ何?何を言ってんの、何を言ってんのかわからない。
変に冷静で現実逃避しようと
しているオレだった。
電話を切ってしばし放心状態のオレだった。やっちまった時間を聞きなんとなく
冷蔵庫の上のウォークマンを取りスイッチを入れてみた。
普通に動きだしライチャス・ブラザーズのアンチェインド・メロディが流れてきた。そして突然涙が溢れ流れた。
こんなに涙って出るんだと思うぐらい溢れ流れた。


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