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原宿 1980 夏_24

 

No. 24 clock

原宿のホコ天は夏を迎え更に盛り上がりを見せていた。
歩道橋の手前がロックンローラーで奥は竹の子族だ。
いろんなチームがそれぞれのチームカラーを出そうと選曲ステップ、そしてファッションと競いあっていた。
やっぱオリジナリティがないと他のチームには勝てない。
そんなとき上野のアメ横の革ジャン専門店で袖が脱着できるダブルの革ジャンを買った
このままでもカッコイイけど
なんかの映画で見たギンギンに革ジャンにビョウが打ってあるやつ、あ、あれだ!
ひらめいたらとまらない。
買ったその足で手芸屋さんに寄りビョウをあるだけ買った
それでも全然足りないので200個追加注文しておいた。
お店の人が不思議がってた。
もう帰りの電車の中で完成したものが頭の中で浮かんでいた。きっとひとりでニヤニヤしてたんだろうなあ。
期待とちゃんと完成するのか不安が入り混じっていた。
自分の勢いが自分で怖かった
だ、だ、大丈夫か自分。
さっそくその夜から作業に取り掛かった。
畳の上に雑誌をおきポンチにカナヅチでカーン、
あ、穴が空いちゃった。
今日買ってきてもう穴を開けちゃった。
もう戻れない。最後までやるっきゃない。ビョウを差し込み裏にメスのビョウを、そしてカーン! 潰す。 OK!
カッチョイー!
まだたった一個じゃないか、
まだまだ道のりは遠いぞ。
慎重にビョウの幅を揃えながらカーン!う〜ん失敗はゆるされない。カーン、カーン。
30分ぐらいたっただろうか、突然ドアをドンドンドン!
ちょっと何やっての、うるさいわね、子供が怖がって泣いてんのよ。
部屋の真下の大家さんだ。
あ、ああすみませ〜ん。
夜なんだから静かにしてちょうだい。
そうか、木造2階建てのアパートの真下に大家さんが住んでいるのだ。
まだちっちゃいガキ、あいやお子様もおられる。
そんなこと微塵も考えてなかった。
ただ走りだした暴走列車、
もう誰も止められない!
まだ10発ぐらいしか打ち込んでない。まだまだ先は長い。
でも完成させないと。
取り敢えず一日間をあけて
下に雑誌とかクッションを置いて、カツーンカツーン、、
ドンドンドンちょっとお〜
うるさいて言ったでしょう!
    無視!
ちょっと開けなさいよ!
  さらに無視!
何やってんの、まさか爆弾でも作ってんじゃないでしょうね!
 ぷっ、思わず笑った。
…………  帰ったようだ。
この辺は夜やたら静かなのだ
だんだん大家さんのあがってくるのが早くなってきてる。
よし!と思い、上がってくる時間と一日打てる数を表にしてみた。
う〜んちょっと日にちがかかりすぎるなあ。
でも焦ると位置がズレたりビョウがひん曲がったりしちゃうからなあ。
と、バカなことを真剣に考えてる自分がけっこういとおしく思えた。
ナゾのプラス志向なのだ。
完成させねば、戦いは続く。
そこで一句
  おばあちゃん
 ポニーテールで若返る


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