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原宿 1980 夏_39

 

No.39 oclok


 本当のドラマのクライマックスはここからだった。
成金おぼっちゃまとツーレディーはお帰りになりBBSの演奏も終わり時計を見るともう4時を回ってる。
お客さんもオレたち以外はいなくなっていた。
アンベは右手をボクサーのバンテージのように包帯をぐるぐる巻にして左手にウイスキーグラスを持ち目だけはギラギラしていてまだ怒りは収まらないようだ。
『そろそろ行こうぜアンベ
もう10時間ぐらい飲んでるんだぜ〜』
『行きますか〜』
店内を寂しくボビービントンのミスターロンリーが流れてお帰りと言っている。
マスターにまたねと言い外に出るとゲゲゲ!土砂降りの雨が降っている。


そして目の前には見覚えのあるバイクが。
『アレ?何でここにオレのバイクがあるの?』
見つめあうベロベロに酔っ払った二人。
『アレ?バイクで来たの忘れてた、、、ハハハ』
二人一緒に『ハハハハハ』
『どうする?』
『どうするって、帰りましょうよ。ハハハハハハ』
『そうだな、帰ろうハハハ』
そうだ、オレがアンベをバイクのケツに乗せて神楽坂から横浜、関内まで来たんだった『ちょっと待ってろ』
オレはマスターからゴミ袋を一枚貰ってきた。
『ホレ、カッパがわりにこれをかぶれ』
アンベにメットの上からゴミ袋を被せ土砂降りの中をオレたちは東京へ向けて走りだしたのだ。
季節はもうコタツを出してたから冬だった、、、はず。
体の中にウイスキーというガソリンがたんまり入った二人にはこの寒さが心地よかった
、、、最初のうちは。
土砂降りの深夜ボケたアタマで気持ちだけは東京を目指し
ひたすら走っていた。
東京東京東京へ〜!
アレアレアレ〜ココどこ?!
あっあっあっヤバイ、高速に入っちゃった!
今は高速もバイクの二人乗りはオッケーだが昭和のこの時代高速二人乗りは禁止だったのだ。当然飲酒運転はず〜と禁止ですよ。
『アンベやばい高速に入っちゃたよ』
『、、、、、、、、』
『オイ!アンベ!』
振り向くとアンベは被せたゴミ袋がメットごと顔に張り付き真っ白になって気を失っていた。
オレはゴミ袋を引っ剥がしメットを取って顔に平手とグーの乱れ打ちを食らわした。
『あっ、、おはようござ、』
『生きてたか、よしよし、で
やばいよアンベどっからか
高速に入っちまったぜ』
『じゃあ戻んないと』
『だな、えーと東京はと』
ボケボケのアタマで標識に目を凝らす。
『あっこっちだ逆だった』
『よし行くぞ、しっかり捕まってろよ!』
そしてオレたちは東京という二文字が指し示す雨の高速を逆行していったのだ。
死ぬぜ100パー!
  さらに続く〜




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