ピンクリボン 検診啓発ポスターに思うこと 「私たちはガラポンじゃない」欠けていたのは想像力

ピンクリボンポスター問題を考える

22日、Abemaプライムに出演させていただいて当事者の気持ちを述べさせていただきました。まだまだ言い足りない感ともやもや感があるのでお付き合いください。

壁をまた乗り越えなくてはいけない、正直、そう思いました。

今回のピンクリボンフェスティバルへのポスター。
番組の中では「ガラポン」の当たりはずれにされてしまったのが残念とコメントしました。くじにあたったときの驚きとがんの驚きは違い、喜びではなく、悲しみ、です。

日本対がん協会からの回答によると、患者さんも5段階の審査の中には入られていたようですが、広告表現ということでインパクト・デザイン重視で選ばれ、その声が生かされていなかったのではないかと思います。(番組内ではスルーした、という表現でしたが、必ずしもそうではないのではないかと思いたいです。)

ストレートなつまらない表現しかできなくなる、という声もありました。表現の制限がこのままだと出てしまうと。なんでもかんでも炎上しちゃうから、何もできなくなることへの懸念が出ていましたが、本件は想像力に欠けており、それ以前の問題だと私は考えています。患者もなんでもかんでもいっているわけではない。がんとは生きていくものであり、抽選だったり、勝ったり、負けたりするものではない。出してはいけないメッセージが出てしまうと思うのです。

そして、デザインの良し悪しでも逸脱の程度でもなく、実際に傷ついた人がいる、ということなんです。

デザインかわいい、そのくらいの確率なんだと検診受けなくては、と製作者の思い通りに受け取った方もいらっしゃったそうなので、壁は作りたくはないけれど、り患者や向き合った経験のある家族が思うがんというものに対する考え方、とらえ方・・・とそうした経験がなかった人との乖離があったと思わざるを得ません。

検診だけでなく、がんそのものを知ってもらう がん教育がやはり必要なんだと思います。

これからのピンクリボン活動の在り方についても話が及びました。

日本のピンクリボン活動は、企業に支えられています。数多くの企業があらゆる形でご尽力され、検診率を上げるための一定の効果はあったと考えています。あらゆるところで同じものに向かって動く、そう簡単なことではない中、ピンクリボン運動は数多くの関係者の力で浸透してきました。

ただ、もう検診だけではなく、がんそのものを知ってもらう活動、そしてそれを進める中で、そもそものアメリカで始まったときのように、乳がん患者さんを支える活動につながるようにシフトしていくべきではないかと思うのです。

もちろん企業としては未病である、9人に8人のほうがターゲットになりやすいのは理解できますが、10月のピンクリボン月間に売られる商品が患者会の活動資金になったりするアメリカのように増え続ける患者さんを支えるものでもあってほしいと思います。

検診そのものの是非

国の検診の指針の話をしたときにご出演の先生から、過剰な検診に懸念を示されているお立場から、40代以上のマンモグラフィのエビデンスはない、まちがっているとご批判を受けました。

現状、40代以上にマンモグラフィ推奨という根拠に基づいて行われているという話なので、逆にきちんと説明しなおすべきだったと反省しています。

乳腺の密度が高い40代におけるマンモグラフィの立ち位置は議論されています。現在はマンモグラフィは45歳以上に引き上げたほうがいい、40代以上に超音波をつけたほうが発見率は上がった、まではわかったけれど死亡率を減少させる効果までは判断できず、国の指針を変えるまでにはなっていない。ここまで説明しないといけなかったような気がします。

短時間でのリカバリーと言葉の使い方が難しいなと思いました。

さらに、早期発見が必ずしも死亡率を下げるエビデンスはない、というのも混乱された方もいるのではないかと思います。残念ながら早期発見をしても転移されてしまう方もいれば、見つからずにいてもがんが成長することがないような方も現実にはいます。CMで早期発見すれば治るといわれている、と強調されるのも当事者からすれば違う、と実感される方も多いと思います。そのとおりで、早期発見だけを訴求する方法も事実とはかけ離れています。(ああ、これもちゃんと問題提起すればよかった・・・。)

それだけ乳がん含めて、症状、成り行き、人それぞれで一つじゃない。標準治療も最も最良と思われる結果に基づいた頼るべき治療でありますが、統計上なので、全員にとって100%ではない。

患者の思いからすると、効果の高いと思われる治療を医師や医療従事者の協力により、選択するたびに治るか、治らないかにかけるしかないわけです。ただ、確かにエビデンスはそうなのかもしれないのですが、適切に早期発見、治療が受けられればそのリスクは下げられるということだと思います。

セルフチェックの必要はない、ということも混乱したとの声もありました。いまだ、自分で見つけて乳がんと診断される人のほうが、検診で見つかるより多いのが実情です。検診よりもハードルが低いであろうセルフチェックをもって、ご自身の胸について関心をもってもらう、ブレストアウェアネスなんだと思います。

一方で、自分でセルフチェックをすると、良性のしこりまで見つかってしまう、検診を定期的に受けていればその必要はない、のも理解できます。ここからつながる、過剰受診については放射線の被ばくや見つけなくていい擬陽性や再検査、(何度も繰り返される)精神的な負担がある等のデメリットも挙げられているところです。

しかし、自分の胸の変化に気づくことは大切なこと。自分にとってのデメリットは知識で腹落ちしないといけません。

再発は早く見つけてもエビデンス的に生存率変わらないから詳しく調べない、、に患者として納得いかないのにも似ていますが、若い方でもみつかる場合がある、かかる人が少ない、という理由で現実に患者としていらっしゃる、20代、30代をその検診・ブレストアウェアネスの網から外してほしくないと思うのです。

今、現役世代の患者の立場としては、20代から40代の命を守りたい。もしも、治療に向き合うとき、仕事・家庭・子育ての困難も一緒にやってくるこの世代。国の指針は変わらないけれど、誰にでもなる可能性がある以上、メリットとデメリットを知ってもらい、自分にあった検診を受け(受けないも含めて)、リスクを下げるためにも早く見つけてほしいと思うのです。

そして、その正しい検診を受けるためにがんについて知ることで、自分が患者とならなくても家族や周りの人にかける言葉も変わる。そのすべてがつながり、病と向き合うことになったみなさんを温かく包むピンクリボン活動であってほしいと思うのです。


番組内で少しデータが出ましたが、女性の正規雇用・非正規雇用・仕事なしで家事を担うもの、で検診受診率は下がっていきます。これも命の選別につながりかねない。誰もが受けようと思うときに受けやすい環境つくりも絶対必要なのです。新しい検査技術の進歩も必要ですし、その効果が本当にあるのか、やりすぎになっていないかどうかも進めるべきです。さらに、診断後の受けられる診断・医療の地域格差や情報格差も課題ですし、早期からの緩和ケア、偏見などなど乳がんひとつ通してみても課題は山積み。検診を訴求するだけではいのちは救えないのです。

患者であれば、「患者力」。自分でどう調べて、どう考えて、どう動くかにつきる、が現在地。

そのためにも当事者が介在した「がん教育」は大事です。

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