1.日々のあわ

妻が「ソオダ水のあわ」というタイトルをつけたときに、真っ先に浮かんだのは宇宙ネコ子とラブリーサマーちゃんの「日々のあわ」だった。それを妻に言おうと思ったけれど、きっと知らないだろうなと思い、今でもそのことは話していない。

ラブリーサマーちゃんを知ったのはいつだったか、三年くらい前だったと思うけれど、確かYouTubeで「202」を泉まくらで検索して聴いたのが最初だったような気がする。そのころには、というよりも十年ほど前からもう音楽をそんなに聴かなくなっていて、あんなに大好きだった(今でも大好きな)カーネーションもVenetian Snaresも田村ゆかりも、とにかく新譜が出るたびに買っていた人たちのCDですら買わなくなってしまっていた。そうなると泉まくらをどうやって知ったのか、という話にもなってしまうのだけど、それを始めると今までの音楽遍歴を遡ることになってしまって、とてもじゃないけれど書ききれない。

「202」を聴いてすぐラブリーサマーちゃんのミュージックビデオを片っ端から再生し、「LSC」は初回盤を予約して買った。CDを予約して買うのはPerfumeの「ポリリズム」初回盤以来のことだった。実はそのCDは開封さえしておらず、いまだにYouTubeでばかりラブリーサマーちゃんを聴いているのだけど、これは言わないほうが良かったかもしれない。

宇宙ネコ子という人のことは何も知らないのだけど、「日々のあわ」はラブリーサマーちゃんのミュージックビデオの中でもっとも多く再生した曲で(その次が「202」)、それは泉まくらと同じ人だなあと思ったそのアニメーションも理由の一つだった。のちにその人が大島智子という名前であると、書店のコミックコーナーで知った。

このミュージックビデオは大学生を題材にしていて(はっきり大学生だと示しているわけではないのだけれど、教室や喫煙所や食堂なんかからきっと彼らは大学生なのだということに少しの疑問も持てなかったというだけなので、高校生かもしれないし予備校生かもしれない)、でも全く大学で経験したことのないことばかりが描かれている(喫煙所でのタバコ以外)のに、なぜか妙に懐かしくていつも気になっていた。でも、時にバイト先の飲み会で朝まで飲んだり、友人の部屋でたむろしたり、学祭で屋台を出したり、それを講義にも試験にも行かずどこか冷めた目で見ていたり、そんな生活を大学で送っていたことは確かだった。四回生になる直前の春に辞めてしまったからそう思うのかもしれない。卒業していればまた変わっただろうか。

自分にあるはずのない記憶を思い出させる、ということにとても心が惹かれてしまう。こんな経験してみたかった、とは思わないけれど、愛してやまない「風呂上がりの夜空に」もそうだものな。ただの懐古趣味というやつだな。


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