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三度目の正直?

 大阪に3度目の緊急事態宣言が出ます。近大生にとって授業開講時期の宣言発令は初めてで、昨年に続いて我慢の大型連休になります。3年生になったゼミ生からは「世間は宣言慣れした」「危機感が薄い」「生活は変わらない」とあきらめにも近い、割り切った声を聞きました。(現代新聞論ゼミ担当教員・二木一夫)

 新年度の授業は原則対面で始まりました。でも、緊急事態宣言が出ると、全面オンラインに切り替わります。宣言発令が濃厚になってきた22日の授業でゼミ生に尋ねました。「過去2回の宣言と違いはある?」「宣言中、どう行動する?」

 宣言を出すなら数値目標を定めるべきだという意見が複数ありました。感染者数をここまで減らすと決めたり、病床使用率をこれだけ下げるといった具体的な基準を設けたりしないと、漫然と期間が過ぎてしまうだけだと。

 いくら飲食店を制限しても路上や公園で酒を飲む人がいるので、宣言が出ても変わらないという声もありました。高級焼き肉店でアルバイトをしているゼミ生によると、中高年はマスクをせず、手指の消毒も嫌がります。学生ら「若者」が集団で飲み歩き、クラスターを起こすとやり玉にあげられますが、無責任な行動をとるのは若い世代に限ったことではないはずです。

 大学受験を控えた弟のいるゼミ生は、感染させてはいけないと家で過ごします。家族に介護職や病院勤務の人がいれば、自分が感染源にはなれません。遊ぶ約束を全部やめたという学生もいれば、GWは質素に過ごし、妹と近くの公園でピクニックをするのがせいぜいという女子も。ある男子は、世界遺産検定1級を取得するため、猛勉強するぞと意気込んでいます。

 人の流れを止めるため、広範囲に休業要請がありました。地下街やショッピングモールの店でアルバイトしている学生は口をそろえて「店が閉まるので稼ぎがなくなる」と気落ちしています。家計を直撃する家庭は少なくないでしょう。失業や自殺が引き続き社会問題になるのではないかと心配になります。

 幼児の英語教室でアシスタントをしているゼミ生がいます。そこで子どもは食事もするのですが、アクリル板で仕切ったり、向かい合わせにせずに食べさせたりと感染予防に気を使っています。子どもたちは「どうしてこんなことするの?」と聞いてきます。このゼミ生は時折、マスクを外して友人と近い距離でごはんを食べてしまうのですが、子どもの素朴な質問に、そういう生活を見直したくなると。

 騒ぐ学生は確かにいます。でも、多くは他人を思いやる、つつましい生活を送っています。「若者」とひとくくりにして色眼鏡で見るのはやめてほしいなと思います。=2021/04/24記