「まなぶ」2022年4月号 質問箱

まなぶ」(労働大学出版センター)2022年4月号掲載

ロシアへの経済制裁の影響もあり、原油価格が高騰しているようですね。どのようなリスクがあるのですか?

ロシア・プーチン政権によるウクライナへの軍事侵攻に対し、欧米諸国は経済制裁の一環として、ロシア産原油の輸入を禁止する措置を始めました。この措置を受けて、原油市場で価格が高騰しています。ロシア産以外の中東産や米国産の原油へ需要がシフトし需給が大きくタイトになってくると予想されるからです。
代表的な原油価格であるWTI(ウエスト・テキサス・インターミディエイト)の価格で見ると、ロシア軍のウクライナ侵攻が始まった2月24日92.8ドル/バレルが、3月8日には123.7ドル/バレルとわずか2週間で33%の値上がりをしました。その後は、上昇がひと段落したようです。連鎖的に他の資源価格も上昇しています。国際商品市況の指数であるCRB指数でみると、2月24日269.02から3月8日304.23への13%の上昇を示しました。
原油価格上昇は今のところ1970年代のオイルショックのように大きなインフレの要因になるとまでは考えなくていいでしょう。2014年の半ばに原油価格の暴落が起きたわけですが、暴落前の原油価格はおおよそ100ドル/バレル前後を推移していました。この当時から、ドルベースで見ると米国の物価はおよそ20%上昇しているので、120ドル/バレル程度まで原油価格が上昇すれば、O P E Cは増産に向かうと思われます。120ドル程度で推移するのであれば、世界的には2010年から2014年にあった物価上昇圧力が生じるという程度でしょう。

資源を海外に頼る日本はとくに深刻なのでは?

原油などの資源価格の上昇は、サウジなどの埋蔵量が豊かな産油国にとっては何の努力もなしに手に入る収入である一方、輸入国にとっては所得を吸い取られるという意味を持ちます。その負担は、電気代、ガソリン代、ガス代などの上昇によって我々労働者にも負わされています。多くの企業にとってもコスト増となり、利益減少要因になります。
第一次石油危機や第二次石油危機は世界的なインフレと大不況を引き起こしました。主要国の産業に大きなコスト増となり、企業が軒並み赤字に陥り、インフレを抑制するための金融引き締めもあって設備投資が急減したからです。
今回は石油危機時のような大きな悪影響はありませんが、日本の物価は円安にもかかわらず欧米に比べて上昇していなかったので、同じ原油価格上昇でも欧米以上の物価上昇圧力がかかることになります。
日本に限らず企業側はかかってくる負担を値上げや雇用削減につながる人件費抑制で乗り切ろうとするでしょう。労働組合は物価上昇以上の賃上げを確保し、企業の人件費抑制に抵抗していかなければなりません。

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