(雑感)株式投資と労働者

岸田首相の「資産所得倍増プラン」なるものが打ち出され、個人金融資産をよりリスクの高い金融商品に移動させようとする政策が発動されていきそうだ。例えばNISAの拡大など何らか税制的に証券投資を有利にするつもりなのではないか。
多くの労働者にとって株式投資などのリスクテークは縁のないものではあるが、長く働いた正規労働者の場合には、数千万円の退職金を受け取る場合もあり、こうした政策誘導に関心を持たざるを得ない場合もあるだろう。
たまには、活動家からも株式投資について聞かれることはあって、そういう時には「労働者は株式投資なんか考えない方がいいと思います」と答えてきたのだが、金利ゼロ長期化で、預金だけにして資金運用はしない方が良いとも言えない状況になっている。
とはいえ、預金や個人向け国債以外の金融商品にはリスクがつきもの(厳密には前2者にもリスクはあるが)であり、その認識がないまま、銀行や証券会社に勧められて、金融商品を購入するのは賛成できない。特に投資信託の手数料率はしっかりチェックするべき。
一方で、金融商品保有の収益の源泉は資本の利潤の一部であり、金融商品を保有することで、つまり部分的に「資本家」になることで、この利潤の一部を「取り返す」ことになるというのも事実である。株式の配当金にしろ投資信託の分配金にしろ、そうした性格を持っている。
流通市場における公開株式の価格は大きく変動するものであるし、既に創業者利得は獲得されてしまった後の高価格になっていることが多いわけで、本物の資本家の利潤獲得に比べれば利潤の「取り返し」の効率は悪い、ということも認識されておくべきであろう。

(2022.5.10記)


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