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書籍紹介:なぜ、それでも会社はかわれないのか

「なぜ、それでも会社は変われないのか ~危機を突破する最強の「経営チーム」
(柴田昌治 著 日本経済新聞出版本部 2020年4月)

主に関心をひかれた部分

 組織におけるイノベーションやアージリスも指摘する役員レベルの標榜価値と実用価値の乖離を埋める為のアイデアが詰め込まれています。
 役員がチームとなる事により難課題を突破できないという点から、どのように取り組めば良いかが開設されています。日本の調整文化の中では、役員間のダイナミックな創発がなかなか実現できません。
 役員の信頼関係がチーム作りの基礎となり、その為には「心理的安全性」が重視されます。「腹落ちマトリックス」というものが提示され、信頼関係を醸成した上での議論が「腹落ち」の為には重要となります。上記の様な問題は、日本に根付いた「調整文化の空気感」が課題の根っこにあるとのことです。
 そもそも欧米文化では、命令しても「受けた人間の異論、反論」がありうることが社会通念として当たり前であり、両者の間でコミュニケーションが成されることが前提になっており、コミュニケーションの合意することが基本となっていますと記述されている。

「調整文化は金太郎のアメの「鋳型」との表記があるが、時間できると感じました。
 『「どうやるか」ばかり考えると、手段がいつの間にか目的化』との記述があったが、まさにそのような企業が多く、KPIの達成が活動の目標であって、ゴールへの到達性などあまり考慮されていなかったりします。

これらを打破する方法として、「オフサイトミーティング」が推奨され、ポイントが記述はされるが、正しいマインドセットで正しいファシリテーターが行わないと難しい様にも感じました。

<部下の仕事を増やす役員の言動>チェックリストとういのも提示されるが、どこにでもありそうな上司の言動が多くあり、興味をひかれました。

最後に『挑戦文化の人間観 ー事実と自分に誠実に向き合う』とされていたが、本当にこれからの時代大切なポイントに思えた。
「調整文化の良き土壌をつくり、そこに挑戦文化の花を咲かせることで企業価値が高まる基盤をつくる」
 一方で、調整文化は創発をもたらす相互承認の風土だけが必要で、あまり調整という人為的コントロールの様なイメージはもはや必要ない、もしくは、そこに力を割いている時間はないようにも感じました。

全体の感想

 日本では長年の間、成功体験に基づいて企業の採用に関して上位下達が良しとされる体育会系の出身の人材が重用されており、就職に関して言えば、大学での勉強するよりはクラブ活動を優先する方が就職には有利であった。事実、勉強内容よりサークル活動の経験が重視されたりしてきました。また、企業内でも大学時代の勉学は長らく軽視され、何も考えずに言われたとおりする人材が好まれたように思います。それが成長に関する成功体験だったように思われます。これは、ここまでの日本経済の中心であった団塊世代が自身が学生紛争でろくに勉強もせずとも、社会・社内でやってゆけた成功体験に基づいた判断だと思われますが、このことが結局、企業でのマネジメントの欠如(誘因と貢献の概念や権威の源泉に関する知識など)やコミュニケーションの合意を阻んできた可能性も否定は出来ません。また、本書が指摘するように意見を言わない人材を育んできたように思われます。これが案外、日本の現代の組織における基本的な問題点の根っこのようにも思われます。


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