プロDD・M ~その550

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 マルスがシブヤアマノガワ古戦場に積み重なったヲタク、女神の力を吸収し、解放していく。
 その場に立っているだけでも、気圧されるほどの力の奔流。
「くっ…マルス…仇……紅葉舞降残酷斬
「遅い、全て見きっている」
「!?」
DDパンチ!」
「あああ…..!」
 倒れてもすぐに立ち上がるマキゲ。しかし、その攻撃はマルスにはもはや届かなかった。
 それでも抗おうとするマキゲにマルスは優しく語りかけた。
「もう勝負はついている。剣を納めてくれないか?」
「イヤだ….モミジちゃんの仇…..私の生きる意味……」
「復讐は何も生み出さない。まして、俺は仇などではない。だが、わかる。そうやって生にしがみついてきたのだな」
「うっ…うう…..」
「悲しい女よ…」
「う、うわぁぁぁ」
 その時、マキゲの中で、感情が決壊した。
 そして、ひとしきり泣いた後、マキゲは言った。
「マルス…プロDD…圧倒的な力……」
「マキゲ、よかったら俺達と共に、走馬灯を目指さないか?俺は、よりよき世界を、君のように悲しむ人がいない世界を走馬灯に願う」
「マルス…….」
 マキゲは、マルスへと手を伸ばした。


「時空の狭間へと逃れたスズハラだが、走馬灯がこの世界に顕現すれば姿を現すはずだ」
 ソウチョウはそう言いながら、敵を屠り続けた。
「ご主人!圧倒的ィ!」
「コー、こんな雑魚ばかり相手にしても仕方ない。さて、ならば、少し走馬灯へとエネルギーを送るか」
「それならご主人、近くに巨大な反応があるにゃ!」
「よし、行け」
 それを聞いたソウチョウは、ブルジョンに指示を出した。
「おいおい、俺が行くのかよ、囮か盾か、俺はよ」
「黙れ。慎重に事を進めるに越したことはない。敵の能力の全容がわからない以上は、探りをいれるのは当然の事」
「わかったよ!いってやらぁ!」
 ブルジョンが飛び込んだ先にいたのは、ニシだった。
「なんだ、ハエか?…..いや、ハゲか」
「てめぇ…初対面で失礼じゃあねぇか?」
 対峙する2人の後ろでソウチョウとコーは話していた。
「当たりだな。灰かぶりの拠点へ乗り込めた」
「にゃにゃ!ご主人、だけど、召喚されたヲタクの反応は、まだその先だにゃ」
「大方、コジオだろう。コジオが相手ならば、容易い」
「どういうことだにゃ?」
「奴の力はもうこの世界では発揮できないからな」
「?」
 そうしている内に、ニシとブルジョンの戦いが始まった。
「思ったよりやる」
「そっちこそなァ!」


 ナガツキは血を吐いていた。
(なんだ…さっきの技は…カエル…お前はいったい…)
 膝をついたナガツキは、カエルを見失った後、周囲を見渡した。
「しまったな…本隊はどこだ」


 戦いに参加できないアッキーはシブヤを離れていた。
「アッキーさん、ユイの欠片を探すアテはあるんすか?」
「大丈夫だ。俺はユイをこの手に収め、あの戦いの勝者から走馬灯を奪えばいい」
「そもそも誰が勝つか計算ついてるんすか?」
「そんなものはわかりきっているだろう…では、我々は帰るとするか、懐かしの群青王国へ


「オルマどもが消えた今、物量では我が81が圧倒的に有利だ」
 大総統エーケーは、兵達の後ろで指揮をとっていた。
 その表情には余裕さえうかがえた。
 それもそのはずだった。81は大組織。個の力で驚異的だった消し炭の魔女も封印されており、もはや磐石と考えるにふさわしかった。
「ソバシ、そちらはどうだ?」
「エーケー様、東に位置していた灰かぶりの部隊は殲滅しました」
「さすがだな、ソバシ。私が考えていたのよりもずっと早い。よし、一旦戻れ」
「はっ」
 通信を終えたエーケーは、後ろを見た。
 そこには化様とそれを守るジャスティススミオの姿があった。
「こちらも磐石…ふっ….」
 この時、エーケーは2つの不安材料を抱え込んでいる事など微塵も感じていなかった。


 マキゲが伸ばした手をマルスが掴もうとした。
 1人の女が憎しみの呪縛から解放された瞬間であった。
 周囲の皆、ほほえましくその光景を見守っていた。

「おい、マキゲ。何やってるんだよ、お前さぁ……」

 赤い血が舞い上がった。
 マルスの目前にいたはずのマキゲの身体が崩れ落ちる。
「な…….何やってんだァァァァァ!!てめぇ!!」
 そして、分断された上半身が落ちると、その後ろからにやけた表情の男の姿が映し出された。

「やっと会えたね……兄さん」

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