プロDD・M ~その554

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 そこにいたのは、完全に包囲され、ボロボロに傷ついたノコッチだった。
「はぁ…はぁ…..」
「なかなかしぶとい。さすがはかつての鮫地方の支配者」
 ヨシケーの刀が血に染まっていた。
「ここは通さねぇ……」
「いつまで立っていられるかな?もう反撃もままならないようでは」
「うおおお!」
「ほぅ?」
 ノコッチはヨシケーの持ち手に手を当て、攻撃を防いでみせた。
 だが、すぐに横からコジオに蹴り飛ばされた。
「遊んでんじゃねぇよ」
「貴様には美学がない」
「あんだと?てめぇから先にやるか?順序が入れ替わるだけだぞ?」
「ほぅ?」
 睨み合う2人を見て、ソバシがため息をついた。
「愚かな」
「落ち着け、双方にとって利はないはずだ」
 エーケーが場を収めようとした。
「その通りだ」
 すると、そこにニシが到着した。
「ニシ様」
 ナガツキが言うと、ニシは笑った。
「ナガツキ、状況はわかっている。そろそろこの旧時代の遺物を排除しろ」
「はっ」
 ノコッチは歯を食いしばって立ち上がり、ニシを睨み付けた。
「ニシィ…….てめぇはァ…….」
「強いだろう?ナガツキは。こいつが俺にとっての消し炭の魔女だ。もうお前には関係のない話だが」
 そして、ニシのパンチがノコッチを捉えた。
 その場に膝から崩れ落ちるノコッチ……。
「守るものを履き違えたお前にはお似合いだ。ここは通させてもらう」
 しかし、そんなニシの足をノコッチは掴んだ。
「行かせねぇ…….」
「くだらん。下郎が」


 マルスは周囲を見渡したが、仲間の姿はなかった。
「最悪だ」
「2人っきりだね、兄さん」
「カエル…….」
「僕はずっと待っていたんだよ、この時をォ……」
「俺は、出来れば訪れてほしくなかった瞬間だ」
「兄さんも地獄で染めてあげるよ」
「お断りする」
 次の瞬間、兄弟は同時に拳を突き出していた。
 そのぶつかった衝撃で、近くのビルが倒れた。
「今…この世界でまだこれだけの力を出せるなんて…..さすがは兄さん…..プロDDだねぇ」
「…….?」
「安心してよ、兄さん。僕は既にこの世のものではない女神から力を受け取っている。だから、兄さんの期待に応えられるよ」
「さっきから何を言って…..」
「僕が示すのは、絶望の赤……!んふっ!!」
 カエルが手を広げると、その背後一体が真っ赤に染め上げられた。
「力が….抜けていく?」
「この絶望を浴びても立っていられるとは、さすがよ!兄さん!!」
 そのまま飛び込んできたカエルの猛ラッシュをマルスはなんとか防いでいった。
「やるねぇ!!」
「くっ!DDパンチ!!」
 防戦一方ではまずいと、マルスも反撃の一手を放った。
 だが、カエルにそれが当たることはなく、逆に身体を触られてしまった。
「くっ!」
「いくよ、兄さん…..検査
「ぐあああ」
 マルスの身体に悪寒が走った。そして、カエルは一旦離れると、恍惚な表情を浮かべた。
「全てわかったよ、兄さん……もう僕の手からは逃れられないよ」
 そして、カエルは再びゆっくりとマルスに近づくと、微笑みかけた。
 マルスは、何も出来なかった。全てが見透かされているような、絡め取られるようなそんな気がした。
 だが、その時、声がした。
「マルス!!!」
「…..!ツムギ!?来ちゃダメだ!」
 それを見たカエルは、一瞬嫌な表情を浮かべ、小声で愚痴った。
「ちっ…兄さんをたぶらかす女め」
 しかし、すぐさま元の表情に戻ると、扉を出現させた。
おいでませ、地獄
 その扉に、マルスは吸い込まれていくのを感じた。
「ぐああああああああ」
「無駄だよ!兄さん!その扉は地獄の女神の力を十分に練り込んでいるのさ!もう兄さんは僕から逃れられない!行き先は地獄さ!僕ももうすぐ行くからさァ…地獄で一緒に踊ろうよ…んふっ」
「く…狂ってる……」
「何を言ってるんだい!兄さんッッ!!狂ってるのはこの世界の方さ!僕達は楽園へ行こう!地獄と言う名の楽園へ!」
「う、うぐあああああああ」
「あはははははははは!!」
ツムギ…….!俺の分まで…幸せに…….!!
 そして、マルスは扉の中へと引きずり込まれていった。
 もはやカエルにはマルスの声など聞こえていなかった。彼の気分は今や絶頂を迎えていた。
「ああ…兄さん…これで永遠に兄さんは僕の物だ……」
「あ…..あ……」
 その光景を目の当たりにしたツムギはショックでしばらくマルスが消えた先を見つめていた。
 悦に入っていたカエルは、それに気付くと、不機嫌な顔になった。
「女…..まだいたのか……兄さんを惑わした忌むべき存在ッ…..」
 カエルの言葉に、ツムギも我に返った。
「カエル……とか言ったわね」
「失せろ、女。貴様など手首のコレクションにもならん
あんたは…私を怒らせた
 ツムギの右手の包帯が解けた。


「ねぇ…アーシを帰して…あの人のもとへ」
 化様が籠の中からジャスティススミオに話しかけた。
「いけねぇな。娘よ。あの男には渡せねぇ」
「アーシはあなたの娘なんかじゃないわ。ねぇ、お願い」
「うるせぇぞ、約束なんだ。俺はお前を…..」
 その時、スミオの視界にいないはずの男が映った。
「何?何かあったの?」
 化様が不思議がるが、スミオは応えなかった。
 スミオは籠から離れていくと、その視界に映った男に近づいた。
「ここには入れねぇはずだが」
「……..それが?」
「ふん、父としてはお前の存在は認めるわけにはいかねぇな」
「言いたいことはそれだけか?」
「何百年と待ったァ!っっこの時をォォォ!!渡さぬ!貴様には渡さぬぞォ!ツバサァァァ!!」
 スミオのブースターに力がこもる。
 そして、それを見たツバサは剣を真っ直ぐに構えた。
月神剣・十六夜…….来い、お前の全てを否定してやる


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