プロDD・M ~その493

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「刺さってる…..!地面に突き刺さってやがる…..」
 ブルーハワイの恐ろしげな声が、場の異常さを知らせていた。
 その威力、まともに食らえばおしまいと理解するのに十分だった。
 鉄扇から一直線になったまま、スギコはマルスを睨み付けた。
「もうあんたは私を捉えることすら出来ない」
「……そうか、やってみろよ」
 しばしの睨みあいの後、再び魚雷のごとき飛翔をみせたスギコは、確実にマルスの喉元へと迫っていた。
「捉えたッ…..!死ねィ!マルス!!」
 その一撃はマルスを殺しうる一撃だった。
 だが、スギコの鉄扇がマルスに到達する前に、何か固い物に阻まれた。
「ぐあぁ!この私のト・マンナヨが止められただと…!?」
「スギコ…DDには決して折れない必需品がある」
「ば…かな」
「そう、馬鹿さ!この脚立はァァ!」
 スギコの鉄扇は脚立の隙間からマルスへ向けて伸びていたが届かず、高速でぶつかったのはスギコの頭だった。
 そして、挟まったその腕は抜けず、マルスが脚立の角度を変えて締めた。
「ぐぁぁぁああ」
 そのまま脚立を下ろすと、マルスは動けないスギコへ向けて得意の一撃を放った。
「や、やめろ…!」
DD…..キック!!」
「ぐはぁ!!」
 容赦なく蹴り上げたマルス。
「さすがプロDD!なんてテクニカルでオリジナリティ溢れる脚立の使い方なんだ!」
 ブルーハワイが感動の声をあげた。
 さすがのスギコもこの攻撃には参ったかと思ったその時だった。
 突然、脚立が蒸発した。
「!!?」
500億円投入…….!!」
 スギコの纏うオーラが、さらに跳ね上がった。
「スギコの…..目の色が変わった……!?」
 ブルーハワイでさえ、足がすくむほどの怒気であった。
 ぐわっと伸びた手がマルスを掴み、そのままの勢いで壁に叩きつけた。
「下等なDDがッ!この私に、何をしたァ!!」
 叩きつけられた壁に向かって、さらにスギコが拳を繰り出した。
 寸前で躱したマルスは、くるりと回転して距離をとった。
極・鉄扇“サクラ”
「!!」
「私にこれを使わせるとはねェ!マルス!!」
「くおっ!!」
 スギコの持った巨大な鉄扇にマルスは追い詰められていった。
「とんでもねぇ動きだ…あの巨大な鉄扇をまるで重力がないかのように操ってマルス様を攻撃している」
「マルス様…がんばれ…」
 アネンゴとツムギが祈る中、なんとか致命傷を避けつつ、マルスもカウンターを入れた。
DDパンチ!!」
「効かぬわッ!!」
「ぐあっ」
 マルスが殴った自分の手を押さえて後退した。
「マルス様のDDパンチが効かないどころか、分厚いオーラの壁がマルス様を傷つけたなんて…!」
 アネンゴの声が悲鳴に変わった。
 だが、スギコは手を緩めなかった。
「さらなる絶望を教えてやるよ…….1兆円投入!!」
 爆発するような激しいオーラに、その場の全員の身体が地面に押さえつけられた。
「ハハハハハハ!金は力よ!これが金貨の神器の権能!!……まだ諦めていないようね」
 マルスがそのオーラに抵抗するように立ち上がった。
「俺はプロDD……俺が倒れたら、仲間達はどうなる…俺を信じて散っていった仲間達の想いはどうなる…」
「全ては無惨に散る。それが現実と言うものだ。夢見がちなDDが、志半ばで!」
「そいつは..どうかな……DDネットワーク!!」
 その時、マルスのもとに通信が届いた。
 そして、スギコのもとにも通信が届いた。
「大変です!スギコ様!スギコランドの各施設が襲撃を受けています!遊戯機構です!遊戯機構の練習が各地で破壊活動を……ぐあああ!」
「……!どういうことだァ!」

「ここも制圧完了だぜ、簡単な仕事だなァ、赤いの」
 スギコランドの施設を奪ったカシワギが通信をとばす。その先はケイだった。

「こっちの仕事は終わったぞ、マルス」
 スギコの攻撃を逃れていたはずのケイがマルスへと通信を行っていた。
「遊戯機構会長...ケイ!お前、いつの間にマルスと!」
 コジオが警戒を強めた。
「いつの間に?ふふ..奴は最初から遊戯機構さ、なぁ…マルス!」

「金貨の神器……自らの財を投入することで、自身の力を増幅させる…..お前は金を奪われるのが怖いんだ!」
「私の力が…..消えていく……失われていく……マルスゥゥゥ!貴様ァァァ!!」
ジッパー!!」
 空間に現れたジッパーからマルスが出入りする。瞬間的に消えたり、現れたりするマルスをパワーが落ちてきているスギコでは対応できなくなっていた。
「くっ…どこよ!どこに!!」
「ここだよ、スギコ!」
「後ろッ!!」
「と見せかけて前にいる」
(まずい…至近距離…..間にあわ….)
私の一番かわいいDDパンチ!!」
「ぐあああああああ!!」
 その一撃はスギコに命中した。だが、後ろに押し出されながらも、踏ん張った。
「まだ倒れないのかよ!」
 アネンゴが叫んだ。
「私はスギコ。スギコデパートの創業者にして、この世を牛耳る帝王……退かぬッ!媚びぬッ!省みぬッ!帝王に逃走は…….」
 スギコが反撃に出ようとした時、その足が止まった。
 そして、その身体から鎌が貫通していた。
「うるせぇな…お前の時代は終わったんだよ…」
 スギコは鎌の主へと振り返った。
「カリ…スマ…貴様…..ァァァ!」
「呪力吸収…伝わる伝わるぞ!スギコのパワーが!!ハハハハァ!!」
「ぐ…吸われる…あともう少しで…アレも完成するのに……こんな所で…….ェェェ」
 消滅していくスギコ。そして、その消えた後に、マルスとカリスマは向き合った。
「やはり俺の敵は…」
「お前か!!」
 2人の拳が交わった。

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