プロDD・M ~その501

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 六文屋、プロDD組、スギコデパート、ゴールデンチェイン……走馬灯戦争を巡る争いの有力候補達が軒並み勢力を失ったとの報は、裏社会に広く伝搬された。

「聞いたか?ガリが行方不明らしい」
「知ってるぜ、その話。行方不明って、やられて消滅しただけじゃねぇのか?召喚されたヲタクは死体は残らないと聞くぜ。消し炭の魔女の襲撃で辺りは一面焼け野原だったんだろ。絶対死んでるって」
「それが肝心の消し炭の魔女は、ガリを殺してないと言っているらしい」
「どういうことだ?」
「何でも、いい男になる可能性があるとか何とか」
「よくわからねぇが、召喚者が死んだのは確認されてるんだろ?それじゃヲタクは現世に長くは留まれねぇはずだ」
 酒場では、これらの話題でもちきりだった。
 そんな酒場の一角で、ビールを片手に男は呟いた。
「馬鹿どもが…」
 同じ卓に座る仲間がそれを宥めていた。
「ガリはやはり生きているのか?」
「間違いねぇ…誰かがガリと再契約した痕跡があった。あのヲタク力の残滓は、並の術者じゃありえねぇ」
「これからどうする?」
「探す。このままでは、悪美烈駆には勝てん。強力な仲間が必要だ」
 ソウチョウとポッター。逃げ延びた2人は、仲間を探していたが、なかなか見つからなかった。
 そんな2人に、突然、女が話しかけてきた。
「ねぇねぇ、お兄さん。ガリを探してるの?」
「ふん、そうだが。ガキの遊びじゃねぇんだぞ、去れ」
 ソウチョウは女を追い返そうとしたが、女は全く気にせず、ソウチョウへと詰めよった。
「私、ガリの居場所知ってるよ」
 その動き、言葉に、ソウチョウは思うところがあった。
「ポッター!!」
 咄嗟に警戒するソウチョウとポッター。
 しかし、その警戒心の合間をぬぐうように、女は移動した。
「ついておいでよ。ガリの所に案内するよ」
「…….ちっ、虎穴に入らずんば虎児を得ず…か」


 ルビーの光地下神殿。
「神器を餌に有力候補を釣り出したというのに、たいした成果は得られなかったではないか」
 神官長レオンの叱責の声が飛んでいた。
「アオクマをここに呼び出しましょう。問い質すべきです」
 ルビスの進言にその場にいた神官達も頷いた。
 その時だった。
「揃いも揃って無能ぞろいだな!」
「何者だ!」
 神官達が一斉に入り口の方を見ると、そこには貫禄のある男が立っていた。
 神官の1人が男に向かって短剣を振りかざすとルビスの声が響いた。
「おい、馬鹿!やめろ!」
 しかし、神官は止まらず、男へ向けて短剣は振り下ろされた。
「侵入者め!どうやってこの場所を知った!答えろ!」
「馬鹿野郎!」
 ルビスの制止はもはやその神官にはとどいていなかった。
 そして、神官は理解した。
(短剣が…..動かない……?)
「刺したな?刺したってことは刺される覚悟があるっちゅーことやな?」
 刃は確かに刺さっていた。だが、その男の身体で完全に止められていた。
 そして、その威圧感に、神官は思わず尻餅をついた。
「あ..あ…」
 動けなくなっている神官に男が拳を振るおうとした。そこに急いでルビスが止めに入った。
「ま、待て!コーキ!それ以上は!」
「…..ルビスさんが言うんなら、やめましょう。命拾いしたな」
 男は拳を引っ込めると、にやりと笑った。
 ルビスは、男を宥めると、神官を下がらせ、ここに来た理由を問うた。
「ハハハ、わかるでしょ。あんた達の体たらくが原因ですよ」
「ぐっ……」
「なんのために、あんたらルビーの光に、ここまでの権限を与えているのか?あのお方もそろそろ堪忍袋の緒が切れようというもの」
「待ってくれ…必ず走馬灯は…」
「待てませんな。ここからルビーの光は我が指揮下に入っていただき、アレの儀式を行う」
「まさか…上はそこまでの事態だと」
「その通り。まして裏切り者を始末できぬまま、手をこまねていているなど言語道断!」
「裏切り者…?マルスは死んだと聞いたぞ」
「否、マルスは生きている…それも強い力を手に入れようとしている…」
「何!?」
「だから、我々もアレを起こすことにした。意義のある者は前に出よ」
「…….」
「ふっ、決まりだな。では決行の日まで待て」
 そう言うと、コーキは一旦帰っていった。
 その後、話を聞いていたキーリが、ルビスに聞いた。
「アレとは..いったい何なのです?組織は何を隠していると言うのですか?」
「……最終決戦兵器……そのあまりの危険度から、組織内でもその存在は伝説として語られるだけで、実際に目にしたものは少ない…..お前が知らないのも無理はない……」
「あ……」
大精霊ナンス…….!!」


「今、帰ったよぉ」
「ご苦労だったな、ナオユ。スギコデパートとの取引もこれで最後となったか」
 白の本部へと帰ってきたナオユは、アッキーが不在な事に気づき、コイケに所在を尋ねた。
 すると、コイケはため息つきながら、答えた。
「アッキー様は、あそこだ」
「ん?」
 上空を指差したコイケに、その意味がわからず、ナオユは言葉にならない声を発するにとどまった。
 コイケが諦めたような口調で、続ける。
「アッキー様は、月へ向かった
「月!?馬鹿な!この大事な時に何をやってるんだよぉ」


 一方、マルスは、1万2千年前の戦場で出会ったセルーと共に、戦いを繰り広げていた。
「セルー!」
「おう!!そっちにもう1人行ったぞ!」
「わかった!DDパンチ!」
 戦いを続けながら、マルスは感じていた。
 女神達の大きな力を。
「セルー…」
「何だ?何か聞きたそうだな」
「ああ、あの壁の向こうには何があるんだ?」
「やはり気になるか?」
「ああ…あの先から…」
「わかっている。だからこそ、その力を独占しようとする奴らを許すわけにはいかない」
「やはり……」
「そう、あの先にある女神の力を独占しようとする集団、最前管理組合、そして、その最前管理組合が雇った傭兵集団壁子。俺達はあの壁を突破すべく日夜戦いを続けているのさ」

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