プロDD・M ~その549

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

「あの巨大な剣アネンゴころしを、まるで木の棒のように軽々と!」
「なんて荒々しくも華麗な剣捌きだッ!」
 ガリとセルーが驚くのも無理はなかった。
 マキゲの攻撃は、苛烈にして繊細、着実にマルスの命を断ち切ろうとする暗殺剣であった。
紅葉舞落斬撃
「くっ!!」
 なんとか急所を避けながら応戦するマルスだったが苦しくなり始めていた。
(おかしい…..力がいつもより湧いてこない…いや、以前から少しずつ感じていた…..)
 マルスは、世界に流れる女神の力を使い戦ってきた。
(DDの呼吸が…..うまく出来ない。力が練れない…..!)
 しかし、その力が弱まっていたのだ。
「くっ…..!」

「もうこの世界は限界だ…」
 ソウチョウは呟いた。その側には、襲いかかってきた敵の戦闘員の無数の屍が積み上げられていた。
「世界から女神の力が失われ続けている。全てはこの俺の……罪だ」
「ご主人……」
「罪には罰が必要だ。俺はこの手で、この世界を終わらせる」
 隣で聞いていたブルジョンは何がなんだかわからなかった。
(世界を終わらせる?どういうことだ?)
 その様子に気づいたコーが、ブルジョンを威圧した。
「おい、お前は何も考えなくていいにゃ。ただ命令に従って動くにゃ」
「だが、これだけは教えてくれ!ソウチョウ!あなたはこれから何をする気なんだ!そのスズハラという女を見つけて!」
「お前、僕の話を聞いているのかにゃ!」
 怒るコーをソウチョウが制止する。
「いい、コー。この機会だ、それぐらいは教えてやろう」
「ご主人…..」
「俺はこの手で、彼女を殺す…..」

 ニシとの殴り合いを中断し、コイケは一旦自陣へ退いていた。
(かつて栄華を誇った白も現在は手駒が少ない…これ以上私の力を消耗するわけにはいかない…)
「コイケ、消し炭の魔女が封印されたみたいだよぉ。攻めないのかよぉ」
「今は様子見です、ナオユさん。最後に走馬灯を手にすれば良いのですから…」

「全ては俺の思い通りに進んでいる」
 ニシはに笑みを浮かべていた。
 彼にとっては、今行われているこの決戦も、自分が作り上げたステージだった。
 そのニシも世界から女神の力が失われつつあることに気づいていた。
(あの圧倒的だったコジオの力さえも弱まっているのを感じる。もはや全盛期の2割…いや1割程度の力しか感じない…くくく)
「ニシ、俺達は今の内に消し炭の魔女の仲間達を排除するぞ」
「ええ、仰せのままに」
 コジオの指示に、ニシは従った。だが、腹の中では既に見下していた。
(お前の力は弱くなる一方だが、俺は違う。失われるのであれば、自ら作ってしまえばいい。人工女神…..くくく)

ナイットン!!」
「ナイスデス!トンジルスキー」
「イー=サンもさすがだゾ☆でも、これじゃきりがないゾ☆」
 押し寄せる敵を葬っていくトンジルスキーとイー。
 しかし、消し炭の魔女が封印されたのを好機と見た他陣営の攻撃は収まることはなかった。
「ちっ…パイセン、簡単に封印されてんじゃねぇよ」
「オーハシ、どうなんだ?彼女の状態は」
「カエルって野郎、よほど趣味が悪い奴みたいでな、そう簡単には封印は解けねぇよ、だが、中身は無事だ」
「ならば良い。この状況を凌ぎきれば、逆転の目が見える」
(さすがだぜ、ノコッチ。古の名君だけはある。状況ラボで行き場を失っていた俺をつれてくるぐらいだからよォ…だが、俺にもまだ手駒は残っているんだぜ?ふふ)


「マルス!そっちはダメだーーーー!!」
 セルーは叫んだ。
 マキゲに追い詰められたマルスは、シブヤアマノガワの中へと逃げ込んでいった。
「仕留める…マルス…仇…」
 それをマキゲは当然のごとく追う。
 シブヤアマノガワの中は既に廃墟であり、暗く、足場も不安定だった。
 そこでは、マキゲの暗殺剣の方が圧倒的に優位。
 しかし、マルスは、全く別の事を考えていた。
 マルスは、かつて師ダイが言った言葉を思い出す。
「何?マルス?女神の力をうまく引き出せない?マルス、それは無理矢理引き出そうとするからだよ」
 マルスは潜った。アマノガワの奥深くへと。
「逆に考えるんだ。干されちゃってもいいさ、と考えるんだ」
 マルスは、あえて奥へと進んだのだ。
「あなたには…見えるかしら…私の…姿が…私には…よく見えるわ…暗闇の中でも…この恨み…憎しみの向かう先が…..」
「……」
「とったッ…..!!そこッ……!!」
 マキゲの鋭い斬撃が、マルスの首をはねた…はずだった。
 しかし、マルスの姿はそこにはなかった。一瞬早く移動していたのだ。
「なぜ…私の位置が…わかったの……」
「憎しみにばかり目を奪われているから、こんな単純な事にも気づかないんだ」
「……はっ!」
 マキゲはそこが暗闇ではないことに気づいた。
 白…..!真珠のような雪が舞い、辺りを照らしている。
真珠雪Lulu Neige
「この為に…私を油断させるために…誘い出した…」
「半分…..正解だ!」
「……!!」
(世界から女神の力が失われていくのを感じている….だが…..)「この場所にはかつて熱狂した女神と信者達の想いがまだ色濃く残っている…..!!」
(マルスの周りに強い力が戻っていく…!)
ひと夏のダイアリー!!」

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