プロDD・M ~その559

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 その肘はカエルを元の形状がわからないほどぐちゃぐちゃに砕いた。
 そして、ツムギはその場に倒れ込んだ。
「マルス……仇はとったよ……」
 もう一歩も動けず、ツムギはそのまま目を閉じた。


 消し炭の魔女は確実にニシを追い詰めていた。
「5…..」
 しかし、無数の炎の腕に殴られながらニシは何やら呪文を唱えていた。
 その意図に消し炭の魔女は気付いていなかった。
「4……」
「さぁ、そろそろ朽ち果てなさい、ニシ」
 すると、ニシはにやりと笑った。
「3……朽ち果てるのはてめぇだぜェ?2……消し炭の魔女ォ……」
 その声は、消し炭の魔女には聞こえていなかった。
「ヒヒヒヒヒヒ….1…….」
 だが、気付いた者もいた。
「消シ炭様、危ナイ!!」
 各国の呪術に精通していたイーは、ニシが起こそうとしている人工女神の力によるオリジナル呪術を見抜くことが出来た。
「特殊ナ呪術デモ共通点ハアル….コノ術ハ危険スギル….!」
「もう遅い!✕✕、◯△□☆、5秒前5 seconds before the death sentence!」
 放たれた呪力は、消し炭の魔女の命を奪い取ろうと迫った。
「くはははは!発動に時間はかかるが、この術は解除できまい!終わりだ!消し炭の魔女ォ!」
「くっ!!」
 その時だった。イーが消し炭の魔女を突き飛ばした。
「サセナイッ!!」
「イー!!」
「グアアアアアア」
「イーーーーーーーー!!」
「消シ炭様、アリガトウ….必ズ走馬灯ヲ……」
 その術はイーを消滅させた。
「おのれ、ニシ!!よくも私のイーを!!」
 しかし、消し炭の魔女がニシを仕留めることはなかった。
 なぜなら、ニシは既に逃げる手を打っていたからだ。
「この場での最善は、逃げ切る事だ……」
「なんて切り替えの早さなんだゾ☆」
 傷ついたトンジルスキーが立ち上がるが、当然捕まえることは出来ない。
「私が…このまま逃がすと思っているのかしら」
 ニシにとって最大の障害は、消し炭の魔女だった。いかに消耗しているとはいえ、これから逃げ切るのは容易いことではない。
「思っているさ…..あまりこの手は使いたくなかったんだが、仕方ない」
 ニシは突如、戦っているコジオとヨシケーに近づいた。
「何を!?」
 そして、ニシは、コジオに触れた。
崇めたまえ俺様
「ぐ、ぐっっっがあああああああああ」
 突然苦しみ出すコジオ。
「コジオ、この世界から女神の力は失われつつある。お前を守る強大なDDオーラも、全盛期の1割ほどしかない」
「て、てめ…」
「ヨシケーありがとよ。コジオの意識をそちらに向けてくれたおかげで、この術もかけやすい」
「何を…す、吸われる……」
「くははっはああ!!俺のオリジナル呪術、崇めたまえ俺様は、ヲタクのエネルギー、肉体、そのものを取り込み、自身の力に出来る!全ては俺だけの為の世界!!かつてDD王と呼ばれたコジオの膨大なエネルギーは今ッ!我が内にあるッ!!」
 コジオの肉体がニシに吸われて消滅した。
 さすがに一同は唖然としていた。
「それでも、お前から簡単に逃げ切れるとは思っていない。俺がそこまでの評価をしているんだ、むしろ感謝してくれ」
「狂人が…..わかっているなら、黙って首を置けばいい。たかがコジオ1人取り込んだところで…….」
 消し炭の魔女の周囲がさらに熱を帯びていく。
「最後まで聞け!このコジオの力を解き放ったらどうなると思うッ!?」
「な….!」
「ハハハハ!では、またいずれ会おう!さらばだッ!消し炭ィ!クハハハハ!」
「ちっ、待ちなァ!」
 放れたコジオだったものは周囲を激しく損傷させた。その爆風の中、ニシは逃げ果せた。


「ご主人!!なんだにゃ!あの爆発は!」
 外から様子を見ていたコーが驚き、ソウチョウに尋ねた。
「盤面が大きく動いた。そろそろ我々も次の段階へと入る」
「ど、どうするにゃ?僕ら、締め出されたまんまだにゃ!」
 コーの問いに、ソウチョウは意味深に笑った。


 それより少し前、アッキーとライコは遊戯機構のケイらに誘われ、遊戯機構の隠れ家に来ていた。
 しかし、アッキーの状態は依然として芳しくなかった。
「アッキーさん、大丈夫ですか?まともに歩けてないんですが」
 ライコが声をかけるとアッキーは苦笑いした。
「女神の力が失われているというのは本当らしい。俺の不死の権能もこの様だ。さっきぶつけた膝もまともに治らねぇ」
(……アッキーの利用価値はもうないかもしれないな)
 そんな2人にケイは微笑みかけた。
「先程も言ったが、俺は遊戯機構のヲタクを呼び寄せることが出来る。それが会長たる俺に与えられし能力。しかし、この女神が失われつつある世界では、より強力なヲタクでなくては力を発揮できない…」
 その時、咄嗟に動いたのは、ライコだった。
 構わずケイは続ける。
「その強いヲタクを呼び寄せる為に、強い贄が必要なのだよ!!さぁ、我が遊戯機構の礎となれ!アッキー!!…..ライコは逃がしたか、まぁ良い。この男だけでも足りるだろう」
「ぐあああああああああ」
 力の奔流がアッキーに注がれた。
 最期を悟ったアッキーは、ライコに告げた。
「これで…..契約は終了だ……今まで世話になったな…..どうやら…..俺は…..ぬるま湯に浸かっていたらしい…….う、うぐあああああああ」
「さぁ!!出よ!!遊戯機構の戦士よォ!!」
 そして、アッキーの命と引き換えに呼び出されたヲタクを見て、ライコは驚いた。
「ば、バカな…..あいつは…..!!」


 一方、消し炭の魔女から逃げきったニシは、付近の瓦礫に腰を下ろしていた。
「ちっ….計画は一から練り直しだ………..貴様もしつこい奴だな」
「灰かぶりを裏切ったのはお前も同様だったな、ニシ」
「ちっ…..仕方ねぇ、決着をつけるとするか、コイケェ!!」

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