プロDD・M ~その527

※この物語はフィクションです。実在の人物・団体とは一切関係ありません。

 コイケが気づいた時には既に遅かった。
 アッキーは、コイケの頭上から強烈な一撃を繰り出した。
わたしトレイン!!」
 アッキーの身体から出たオーラのレールがコイケへ向かって伸びる。
 そして、そのまま女神の力を漲らせたアッキーの身体がコイケへと突進していく。
「……..!!」

「耐えた!?」
 覗き見していたケイは思わず声をあげた。
 アッキーの身体が空中で止まっているのだ。
 そして、コイケはその下で拳を握りしめていた。
(コイケがオーラのレールに自身の白の力をねじ込み歪めたのか!だが、それも一瞬…そんな偽りの方向はすぐに修正されるッ…!!)
 次にケイの目に入ったのは、アッキーが方向を修正するまでの隙に、自身の身体をのめり込ませるコイケの姿だった。
(ここに来て、さらにリスキーな攻め!?)

(俺がコイケの力を目覚めさせた…?違うな、俺の為に目覚めてくれたんだ..!!)
プロテア…….ッ!!」
 コイケが纏うは王者の風格。それに相応しき圧倒的な女神の力…..!!
(このパンチは……!囮!?…..本命は)
 アッキーの攻撃に対し、深く懐へと刻んだコイケの拳。だが、それすらも布石。咄嗟に反応してしまったアッキーの手足は絡めとられた。
「ッ……!!」
 完全にアッキーの動きは止まった。
打撃系など花拳繍腿!関節技サブミッションこそ王者の技よ!!

「完全に極っているッ…!あれではアッキーは何も出来ないッ…!!」
 ケイは自身の想定をコイケが超えた事を確信した。
「やはり新たなる白の王は…コイケか」

「そろそろ戦いも終わりそうですね」
 ライコが急速に衰えていくアッキーの力を感じながら言った。
 側にいたナオユとムネッチも同意見であった。
「それにしても、お前達2人、相手はアッキーだぞ、コイケが心配にならないのか?」
 ライコの質問に対し、ナオユとムネッチは顔を見合わせると、吹き出した。
「ははは、そこで死ねば、コイケはそれまでの男!」
「不甲斐ないボスには誰もついてはいかないんだよぉ。その時は…」
「「俺の天下だ」よぉ」

「くっ……コイケ……まだこんな技を……」
「しぶといな、まだ喋れるか」
「だが安心せぬようにな、ムネッチもナオユもお前の座を狙っているぞ…..」
「ふっ…..ははははは!そんなのとうに知っている」
「なんだと…」
「命を狙う家臣の1人や2人御せずして、王と言えるかよ」
 アッキーは、己の敗北を悟った。
 そして、その意識は暗く沈んで消えていった。
「ユ……イ…….」

 消えいく意識の中でアッキーはかつてのメロドラマを見た。
「ここは…誰だ?ユイ?ユイなのか?」
 誰かがユイらしきものと話している。
 アッキーはそれを遠くから、いや、近くからなのだろか、見ている。だが、介入できない。
「お願いです…止めてください…アッキーを…」
「……..」
「私が…私のせいでアッキーが……」
 最後まで言葉は聞き取れない。
(ここはどこなんだ?あれは何なんだ?…俺は死んだのか…?あれは…..ユイの魂……..?)
 何かを誰かに懇願した後、ユイの魂は幾つかに分かれ、弾けとんだ。
 アッキーの声は届かなかった。

「これまでだったな、アッキーも」
 空間が破れ、ムネッチ達がコイケに近寄る。
 コイケの腕の中にはぐったりとしたアッキーがいた。
「来るのが早いぞ。この不死王、いつ息を吹き返すかわかったものではない」
「だからさ。俺達も協力してやろうってんだ」
 力を失い、横たわったアッキーを3人が囲んだ。
「俺はよしとくぜ、これ以上は契約の範囲を超えてる」
 ライコはそう言うと場から離れた。
(アッキーさん、短い間でしたが、あんた上客だったよ、せめて安らかに眠ってくれ)
 そして、残った3人がアッキーの全てを消滅させるべく、力を込めた。
「いくぞ、SHOUTだ。私に合わせろ」
 放たれる合体技。アッキー万事休す……..。
 

「人の戦いを覗き見とは良い趣味だな」
 ヨシケーの刀が切り裂いた先、そこにライチも上から踵を落としていく。
「…..!躱した!?読まれたのか?」
「その顔、見せてもらうぞ」
 すぐさまヨシケーの刀も追う。
 だが、それも侵入者は、ひらりと宙返りをして躱した。
「やれやれ…..うちの大将も酔狂な事よな」


「大きな星が点いたり消えたりしている。アハハ…大きい……彗星かな?いや、違う、違うな。彗星はもっとパーって動くもんな」
 アッキーの意識は暗闇の中にいた。それはアッキーの魂を深い闇に沈めるようだった。
 その中で光るものが見えた。そして、それは飛び散った。
 アッキーの本能は悟っていた。散らばっていったのは、ユイの命……魂…….!
「ユイ……..ユイ……..!!」

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