「推し、燃ゆ」感想

「推し、燃ゆ」

勢いで一気に読み終えました。

推しの炎上から話が始まると聞いていたので何かを(誰かを)推す者として読んでおかなきゃいけない気持ちはありました。

芥川賞を受賞され、オタクの友達が何人も読んでお勧めしていたので、この機会に読もうと手に取りました。

以下の感想はネタバレを含みます。

・この作品に求めたもの

「推しの炎上が主人公に与える影響は何か」「推しが燃えた背景は明らかにされるのか」「結末はどこに持っていくのか」を考えながら読んでいたように思います。

・「かわいい」の種類

「推しはかわいい」この「かわいい」の説明に、フリルとかピンクとかを持ってきて否定したあと、七つの子を出したのは上手だなと思いました。推すという感情が分からない読者にも説明しなくちゃいけないところ、単に「母性」っていうワードじゃないのが良かったです。

・落ち着いての言葉がつらい

居酒屋バイトの店長に「あかりちゃん、落ち着いて、落ち着けば平気だから」と言われ、落ち着くってどういうことだろう?となるところ、私もミスしたときに上司に同じ台詞を言われたことがあるのを思い出しました。そのときは素直に受け取ったけど、自分は落ち着いてやってるつもりで今度またミスしてしまったらもう気持ちがぐちゃぐちゃになりそうだし、そのことを考えたら落ち着いてなんてできない、負のループに入ってもおかしくないなと思いました。

・この働き方"だけ"では上手くいかないか

時給が写真何枚分か、日給で公演何公演分かをモチベーションに働くなんて当たり前にやっていました。ランチや買い物などあらゆることの金銭感覚が現場単位なんだもん。「そうやってやりすごしてきたことの皺寄せがきている」と振り返られてしまうと、いつか私も、あの人もあの人も皺寄せにぶつかってしまうことがあるのかなと怖く思いました。(でもたぶんやり甲斐がこの考え方一つだと何も伸びないよってこと、でいいよね。)

・主人公が女子高生で良かった

これに尽きます。 #ここ倫 で「高校生=思春期はアイデンティティ形成の時期」みたいなことを言ってたなと思って、主人公の生き方が「思春期だから」って、オタクを知らない読者に思われる抜け道があって良かったと思ったんです。

実際には主人公と同じような生き方の大人はたくさんいると思います。オタク友達のエピソードが思い浮かびます。

主人公のオタクのタイプが、プライベートには立ち入らない、与えられたもの全てを享受し解釈を積み上げていく、真面目な分析タイプで「こういう人実際いる!」となったのも面白かったです。非オタの方から一番非難されないオタク像なのかもしれません。

話の続き(というか主人公の今後の人生)として、医療機関や行政機関も巻き込んでいくのもありかなと思いました。考えすぎかもしれないけど、祖母宅で一人暮らしさせて仕送り止め続けたら経済的なネグレクト認定されないのかなって思ってしまいました。(ひょんなことがきっかけで自力で生活基盤を立て直すことだってあるだろうとも思います。)

・最後に

私の総評は「ふつう」に落ち着きそうです。期待していた通りの作品でした。

読み終えた人同士で「あそこはどう思う?これはこうだよね!」なんて言い合うのがとても楽しそうです。





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