見出し画像

関心の非対称性

人生の醍醐味はいろいろな人と出会うこと。単に直接的に出会うという意味ではなくて、活字による出会いも素晴らしいものです。本はもちろんですが、雑誌や新聞やその中のコラムなども一方的ながら出会いを提供してくれます。いろいろな活字媒体の中で、もちろんcakes.muも含めて、身の上相談が好きです。cakes.muではいろいろな方が身の上相談をやっていますよね。フェルナンド・やまぐちさんは大好きな回答者ですし、林さんもよく相談にのっています。メンヘラ何とかさんもかなり真剣に回答していたし、幡野広志さんの、「なんで僕に聞くんだろう」もすごいなあと思いながら読ませて頂いております。ここロアンゼルス近辺では、ここはオレンジ・カウンティですが、日本人向けの無料雑誌(ほとんど広告ですが)があって、伊藤比呂美さんが長らく身の上相談に面白い回答を載せています。日本人向けの雑誌は年に何回かしか見ないのであまり読みませんが。

今回私はサンフランシスコへ行って、紀伊國屋ブックストアーをのぞいたら上野千鶴子さんの「また身の下相談にお答えします」という本があったので、つい買ってしまいました。残念ながらオレンジ・カウンティーでは紀伊國屋ブックストアーは去年の暮で閉店してしまったので、それ以来ほとんど日本語の本は買っていなかったので、わくわくしてつい買ってしまいました。「また身の下相談にお答えします」で「また」がついているのはその前に出版された「身の下相談にお答えします」が単に売っていなかったからです。カリフォルニアで日本語の本を買うというと、紀伊國屋ブックストアーのような本屋さんか、ブックオフしかありません。本の数がかなり限られているので、そこにあった本しか買わないことになります。今回も本当はもっと買いたい本があったのですが、注文するとかなり高額なこと、さらに何冊も注文すると日本で全部揃うまでに時間がかかるので、2~3週間以上もかかるという話で結局諦めました。最近はアマゾンもあるので便利ですが、やはり時間がかかります。というわけで、読みたい本がそろわず、上・中・下巻とかがあったら時々下巻だけ手に入ったりして下巻から読み始めたりすることもあります。あまり意味がわからなかったりするわけですが、もともとがあまり理解力がすぐれているわけでもないので、何でもよかったりするんです。

それで「また身の下相談にお答えします」を読ませて頂きました。身につまされる話もあり、驚きの相談もあり、面白く楽しく読みました。一番面白かったのはあとがきで、身の上相談の相談者と回答者の関係には圧倒的な「関心の非対称性」があるというところです。相談者は自分について語り、回答者は相手についてだけ語ります。すなわち相談する側は自分の悩みにしか興味がなく、回答者の人生になんか関心がありません。もちろん回答者を選ぶ指名相談というのもあるそうですが。しかしながら多くの回答者は「わたしの場合は・・・」と自分の経験を語る回答が多いとのこと。上野さんは「ワタシ」を語らないようにしている回答者だそうですが、それでもその回答には回答者の生き方、人生観、価値や好み等々、「ワタシ」の「ウツワ」が表れてしまうそうです。多分指名相談をする方はそれぞれの回答者の「ワタシ」が魅力的なんですね。そこには「関心の非対称性」に隠れた「関心の対称性」が感じられるのが魅了的なんじゃないかと思っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?