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実家のドアノブ

「あれっ、このドアの取手、なんか反応しなくない?」
僕は久しぶりに実家に帰り、押下式ドアノブを操作し、反応しない事に気がついたので、母に尋ねた。
「ああ、なんかね。最近、反応しなくなっちゃったのよ。まぁ、それでも、ドアの開閉はするから、修理代も勿体ないから、そのままにしてるのよ」
確かに、年季の入った押下式ドアノブは、修理するのに値段がかかりそうだ。そう思うと、実家の設備は色々と故障しているものが多い。それを騙し騙し、なんとか使い続けている印象だ。確かに、今さら新しい設備に買い換えるのも勿体無いという気持ちなのだろう。
年寄りになると、そういう気持ちになっていってしまうのだろうか。僕は、少し寂しくなった。父も母も健在でいてくれる。親孝行したくても、余分なお金も無い。大した稼ぎも出来ない、サラリーマンと成り下がってしまった僕に、どのようにしたら親孝行が出来るだろうか。
僕は、一人で考え、結論づけた。そうだ、なるべく顔を出すようにしよう、と。

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