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「広瀬通り、広瀬通り。お出口は、右側です。」 座席から腰をあげた陽菜はポケットの中の切符を確認し、列車を後にした。 地下鉄の駅構内は、外から持ち込まれた雪のせいでぐったりとした湿り気を帯びていた。 往来する人々の靴底から溶けた雪がそこら中でワックスを撒いたように通路一面で光沢を放っている。 小走りに陽菜の横をすり抜けて行った男性は足元をすくわれ転びそうになっている。 スケートリンクを歩く様な慎重な歩みで足元を気遣いながら進む陽菜は、地上への階段を一段ずつ踏みしめて上り、夜の