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ローファーと鎌倉の小路

目指せスーパースター。蕎麦宗です。

 ファッションの話題が続いた。それついでにもう一つ。

 【オガハウス】で話したようにファッションとは《孔雀の羽》、若かりし頃の恋する季節に異性の関心を引かんがためにある。もちろんファッションそのものが趣味となる《服好き》もたくさんいるし、いくつになっても人生の主題が《恋》の方もいらっしゃると思われるので、若者の専売特許ではない。

 学生時代は実用と面倒くさいという理由でほぼ毎日、体育会バレーボール部の青いスウェット姿だった。それでもお年頃なのでファッションに全く興味がないわけではなく、遊びやバイトに出掛ける時は少しは気を使った。でも、正直行って自分で言うのもなんだがファッションセンスがない。
 そういう時に一つの方法としてあるのが《パクリ》、つまり人真似だ。

 バレー部の先輩に徳永力(リキ)さんという方がいて、同い年なのと彼が2年生からで同時期に入部したこともあって親しかった。顔も身長も脚の長さも容姿スタイルはモデル級なうえに、兵庫出身だったのでまるで芦屋のお坊っちゃまみたいな雰囲気もあって品が良い。なのに関西人だからかボケもツッコミも上手いというギャップ。泣かされた女は多いはず(笑)。『韮山の田舎猿とはわけが違うなぁ〜』なんて、憧れ半分に思っていた。  
 
 そんなリキさんと話していた時に鎌倉の話題になった。

『俺な、鎌倉好きやねんけどな、夕方の人気ひとけが少ななった時に小路をローファーで歩くねん。それがな、ちょっとだけ靴底が街に響いてメッチャええねん…』

そう言って最近買ったというローファーを見せてくれた。

『お〜、それはカッコ良い。この人カッコよすぎる』

と思って早速真似をしよう。あちらこちら物色の旅へ。まだインターネットがない時代。カタログみたいな雑誌を見て、横浜元町や渋谷へと出掛ける。とにかく歩きまわって自分の脚と鼻で探す、それが普通だった。

 結局はローファーではなく別のモノを買った。リキさんや石田純一みたいな優男には似合うかも知れないが、僕のような野太いO脚のサッカー足には、素足どころかアーガイルのソックス履いたってなおさら似合わない。
 で、いつもの貧乏性の通り社会人を見据えてお堅い靴。渋谷で見つけた《*アレン・エドモンズ》の*Uチップを購入。*ストレートチップにしなかったのと、レッドブラウンの色を選んだのがちょっとばかりの遊び心。

 …鎌倉はとても好きな街。学生の頃も社会人になってからも度々訪れていた。一人で歩く、あるいは二人で歩く夕暮れの小路に、革靴の*革製の靴底がコツコツと響くと、えもいわれぬ至福に包まれた。そして、その度にリキさんのことを思い出す。

 最近も時々鎌倉には行くけれど、大抵はロードバイクでひとっ走りの往復170km。《*オールデン》のローファーはチャリ仲間の山田君に譲った。今もまだも《*ジョン・ロブ》のUチップが一足だけある。たまには革靴を履いて乗り鉄で向かおうか。そして小路を歩き、心の中であのセリフを言おう。

『…メッチャええねん。』


*Uチップ、ストレートチップ…革靴の種類。トラッドではデザインによって格式が決められていた。ローファーは完全な遊び靴。

*アレン・エドモンズ…歴代大統領が愛用したというアメリカの名門ブランド

*革製の靴底…ホンモノはゴムでなく革。が、日本の気候には全く合わない。

*オールデン…コードバン(馬の尻の革)で知られたアメリカ名門ブランド

*ジョン・ロブ…イギリス発祥の超々名門の靴ブランド


#鎌倉の小路を歩く #靴選び #脚と嗅覚 #恋する季節


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