太っ腹礼賛 その1【桜家さんから届いた鰻】
目指せスーパースター。蕎麦宗です。
『ごめんください』
営業時間が終わる頃、ガラリと開いた入り口扉に作務衣姿の女性が立っていた。手には紙袋を下げ何やら贈答品らしきもの。
『桜家です。社長のお使いで鰻を届けに来ましたが、先日のお礼とのことです。どうぞお召し上がりください。』
アルバイトスタッフのyuto君と、ぽかーんとしながらその品を受け取ると、中には紙の包みが見える。早速だ、開けよう。紐をほどき包みを開くと真空パックに包まれた三嶋鰻が現れた!。
『スゴイな、桜家の鰻だよ、ほんとに届いたよ!!』
…ひと月ほどになるだろうか。鰻の桜家の5代目主人・つまり現社長が蕎麦を食べに来て下さり、その際に暇にかまけて色々楽しくお話をさせて頂いた。お互い職人として合い通じるものが沢山あり、また大の車好きでもある方なので話に花が咲き、僕自身も楽しい時間を過ごさせて頂いた。その際、
『鰻を食べたのは6年前に桜家さんで食べたっきりなんですよ』
という話をした。ユミと義理の両親と食べたそれは、彼女がトライアスロンの大会で優勝したお祝いで、その1月半後に妻は亡くなったので最後の晩餐でもあった。それ以来、なんとなく思い出すがゆえにウナギを食べられなくなった。…という僕の話に
『だったら今度届けるよ』
と5代目主人の社長。
とはいえホントに届くとは思っていなかったので驚きは隠せない。
なぜなら高級鰻。そして桜家と言えば全国的にも有名な三島の名店中の名店。安政3年創業の歴史ある老舗鰻店だからである。
以前【楽寿園満水】という記事で書いたように三島は富士山の湧水の街だ。その水の流れる源兵衛川の真横に構える桜家は、その三島湧水で鰻を洗い〆るから臭みが抜けて旨いとされてきた。そうやって江戸時代の後期から160年以上続いてきた名店なのだ。
お話の中に言葉にこそされないが、5代目として歴史の重圧を背負う、その苦労が偲ばれた。多くの従業員の生活のみならず、三島の街の集客にも影響を与えるだけに、一際気を使うだろう。
蕎麦宗はなんの重圧もない、呑気な一人親方のおそらく一人年寄りで終わる店。桜屋さんとは訳が違い、自分のやりたいようにやれる自由を持ち合わせている。老舗はそうはいかないだろうし、まさか自分の代で潰すわけには行かないと、日々重責と向き合っているに違いない。
さて、そんな方だ。幾ら手前の物とはいえ、数万円はすると思われる贈答用の鰻の蒲焼きをポンと届けてくれるあたり粋である。そしてそれは家族の人数分以上あった。太っ腹である。
yuto君にも一人前お裾分けして、帰宅して家族で美味い!旨い!桜家の味だ!!と唸りながら食した。ありがたや。実にありがたや。
世の中には、そして今の僕の身の周りには、太っ腹な方々が溢れている。次回もそんな一人を紹介しよう。
では、ガンバラナシませう。
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