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正解だらけのクルマ選び その16【番外編:ダイハツコペン②】

アルト商用バンに乗って白岩のオヤジさんのご自宅に伺うと、ベンツS560の巨大な躯体の横にチョコンと小さなコッペパンが止めてあった。

初代 L880K型コペンは、アクティブトップと呼ばれる電動開閉式のルーフ(屋根)を備えるオープンカーで、わずか800kgの車重で64馬力の直列4気筒DOHCターボエンジンを搭載し、キビキビと走り回るコンパクトFRスポーツカーだ。

妻がニコニコと初対面の挨拶を済ませると、孫娘を見るように目尻を下げた嬉しそうな笑顔で

『コペンに乗ってな、今日一日好きな所へ行ってくるといい』

と話すオヤジさん。キーを預かって、まだルーフの閉まったままのコペンに二人で乗り込んだ。エンジンを掛け、そろりと走り出す。沼津の市街地を抜けるまでは屋根は閉めておこう。一通りの操作はオヤジさんから説明を受けていたので、ダッシュボードをいじりながら先ずは大瀬崎へと向かう。

三津の海沿いを走りながらルーフを開ける。このクルマ時速30km以下であれば走りながら屋根の開閉ができるのだ。淡島を横目に見ながら上がる僕らの歓声。初めての体験、憧れていたオープンエアーってなんて気持ちが良いのだろう。僕は初任給で買おうとしていたアルファロメオ916スパイダー を思い浮かべながらアクセルを吹かした。

目的地は南伊豆のカフェ《しいのきやま》。戸田・土肥・松崎と伊豆西海岸をひた走る、駿河湾とその海の向こうに浮かぶ富士山が見渡せる絶好のドライブルート。帰りは山岳エリアを選び西伊豆スカイラインを抜け、修善寺経由で沼津へ。行きには気恥ずかしくって閉めていた屋根も、帰り道の市街地はオープンにしたままオヤジさんの自宅へと戻った。

夕暮れが近い頃の白岩家の日本庭園に鼻先からコペンを突っ込んで、オヤジさんにお土産を渡しながらお礼を言うと、

『おお、帰ってきたか、夕飯に行くからな、一緒に歩け』

そう言われるままにアルトに乗り換えて、ベンツの後ろについていった先は沼津港湾にある高級寿司店。オヤジさんは酒を飲まない、が

『飲みたいなら飲んでいいぞ』

というお言葉に甘えて、日本酒をちびり。今日行ってきた場所やコペンの感想など、親父さんは嬉しそうに聞いてくれた。カフェ《しいのきやま》は早速翌週行ったようで、

『新しい店は若いヤツに聞くに限るな〜』

と喜んで言っていた。実はその横ヒソヒソ声で『財布足りるかな、今日いくら持ってきたっけ』
などと話すのは、僕ら夫婦は正直言ってビビっていたから。板長さんの目の前に座って、値段のない寿司屋なんてほとんど行ったことのない初体験にソワソワしていた。

結局その食事もオヤジさんが奢ってくれた。有難いとしか言いようがない。いつの日にかこの礼は果たそう。オヤジさんには直接返せなくとも、まだうら若き誰かに。

妻の運転するアルトで家路についた道すがら、今日一日を反芻しつつ、暮らしに必要なもの、そして豊かさについて二人で話した。そして、それは次のクルマ選びへと繋がってゆくこととなる。

#ダイハツコペン #しいのきやま #西伊豆ドライブ


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