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正解だらけのクルマ選び その6【ホンダ トゥデイ】

ホンダトゥデイJA4型。この車に興味があって乗っていたわけではない。母親に借りておいてなんだが、仕方なしにしばらくの間乗っていた。

全く想定外にもストレートで教員採用試験に受かってしまい、大学を卒業して静岡県教職公務員として天竜市(現浜松市)にある高校に配属された。実家のある韮山から170km以上離れた地で、母親の在所の磐田や浪人生時代に通っていた浜松にもほど近い。なので全く見知らぬ土地ではないものの、なにせ静岡県というのは東西に長く言葉や文化も全く異なるのでそれはそれで面白い。しかし、天竜杉で有名なこの地区は山奥ゆえに公共交通機関に乏しく、また部活動の顧問をやらなければならない都合上どうしても車は必要な(と思い込んでいた)ためだ。

JA4型は2代目だが、どちらかというと初代トゥデイの方が知られているのではないか。名車《ホンダシティ》を彷彿させる丸目2燈がバンパーまで食い込んだカワイイ車で、岡村孝子さんの歌うカバー曲「はぐれそうな天使」をテーマソングに時を煌めく今井美樹さんが印象的なCM。そのクルマ自体には興味がなかったが、彼女には憧れた。歌も演技もルックスも好きだった。あとを継いだのは牧瀬里穂さんでこちらもチャーミングだったが、…おっと全くクルマの話になっていない。

もとい、一浪して入学したので、大学を卒業したのが次男坊と同期になってしまい、件のS12シルビアが弟のものになり、自分は新車を購入することになった。しかし大学出たてにそれだけ用立てる現金はなく、また新入社員にそんなに簡単に購入資金を貸してくれるわけもない。さらに借入の手続きに時間がかかった上に、例の凝り性が顔を出して、乗りたい車の候補がその辺で簡単に売っていない。「とりあえず」という買い物ができないため、それでそれまではトゥデイを母親から奪う格好になってしまった。「なんだかどこかで聞いた話だな」と思いながら読んでいる親御さん達世代も自分と同世代だろう。時代は繰り返しますなぁ。

もとい。いやぁ、脱線ばかりで一向にクルマの話にならないが、それもそのはず。このトゥデイ、中身については特筆すべきところはない(相当メカニカルにマニアックにならない限り)。なぜなら、世は女性の社会進出が進みクルマは一家に一台の時代から一人一台の時代へと移りゆく最中で、このクルマは主婦層向けに開発されたもの。ただ壊れず走れば良いのである。それでもスタイルについてはなかなか斬新で、大きめのヘッドライトは今にも通じるものがあるし、タイヤを4隅に追いやったロングホイールベースも新しかったし、Jラインと言われたリアクオーターピラーなどは古き良き日のアメ車などを未来的に取り入れたようでカッコ良かった。が、残念ながらそう思っていたのは自分だけのようで、マイナーチェンジにて2ドアモデルも4ドアと同様のフツ〜なカタチに変更されている。

そんなわけでトゥデイによって利便性を手に入れありがたかった限り。なのでクルマというものは実に便利な物だと思っていたが、のちに一つ考えたことがある。実はクルマがないと不便なわけではなく、クルマがないと不便な街にしたのではないかということだ。近所の商店は無くなり遠くショッピングセンターまで行かねばならず、公共交通機関は減りあるいは廃線となり、歩かないから運動不足によって田舎の人ほど肥満が多いという事実。
そうやってクルマを主婦層そして全世代、全国民に広げたことで本当に豊かさを手に入れたのか、正直言って疑問だ。もちろんその自動車産業によって手に入れた豊かさもあるので否定ばかりは出来ない。…と辛辣ではあるが、クルマが好きなゆえの言葉だと思って頂きたい。

クルマ離れが言われて久しいが、インターネットや宅配便などのサービスの変化はますます生活を変えて行くだろう。あの今井美樹さんの笑顔が古き良きクルマ時代の象徴となる日は、そんなに遠くない気がしている。

#クルマ時代の終焉 #クルマ無し生活を考える #新しい都市のあり方


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