アンケで後半が変わる短編小説『珈琲』
あなたの精子が欲しいです、と涼子に言われたのは、池袋の喫茶店だった。
涼子は学生時代の恋人で、もう十年も会っていなかった。たまたま、当時の友人グループの中で結婚するカップルがいるとかで、LINEのグループが作られた中に涼子もいて、それで連絡先を知ったくらいだ。
涼子の首筋はとても細く、薄い桜色のセーターからは鎖骨が透けて見える。うつむきながら差し出した通帳には、八桁後半の数字が記されていた。そんなにいい大学だったわけでもない。身なりから、羽振りのよい生活をしているようにも