9.11続き3

僕は今歴史の中にいるんだ。不謹慎だとは思ったが、そんな高揚感がすごかった。レベル0でATMも使えなかったからヒデさんミワさん夫妻と一緒にいられて安心だった。
タクシー乗り場はもちろん長蛇の列だ。
ヒデさんは料理人で、NYの寿司屋で働かないかとのオファーがあり、3日間だけ様子を見に来たとのことらしい。英語が全く喋れなく途方にくれていたが泊まるところが見つかってひとまず安心していた。
ミワさん夫妻はコンピューター会社勤務。夫婦で休暇旅行とのことだった。
ちなみに僕はその当時金髪にロン毛。豹柄ズボンのヒデさんが料理人なのも驚きだったが、ミワさん夫妻もよくうさんくさい自分についてきたと思っていた。
あとから聞いたら、僕はギターを背負っていたので、ギターを弾く人に悪い人はいない。という謎理論で信用していたらしい。
クイーンズに戻った。
「生きていたか!!」
凄まじく抱きしめられた。
ヨシも、キムおばちゃんも、ルイスもキム1も僕が乗った飛行機が突っ込んだと思っていたとのことだった。
キム2がいない。
キム1いわく仲間と学校に通学中、飛行機がワールドトレードセンターに突っ込むのを目撃し、これは尋常じゃない事態だと思い、家に帰ろうと言ったがキム2だけは学校に行くと言って別れたらしい。
僕らはできることもなかったから、キムおばちゃんの家でニュースを見た。とにかく情報も欲しかったし。
今思えば誤報の連続だった。ユニオンスクェアで大規模な爆発が起こった。飛行機は何機ハイジャックされているかわからない。NYのいたるところに爆弾が仕掛けられている。
「原発に飛行機が突っ込んだら、みんな死ぬわね。」
キムおばちゃんがさりげなく言った言葉だったが、僕らみんなの空気は凍りついた。
死がみじかにある。
空には蠅みたいに空軍機が飛び回っている。

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